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鬼と少女の話  作者: ちる
2/10


いとはそれを気にせず答えた


「わたし?わたしはねえ、いとっていうの!」

「・・・人間のガキか

 ガキがこんなところで何してる?」

「んっとね・・・おにごっこしてたららまいごになって・・・

 そしたらここからすずのおとがきこえてきたんだよ!

 ここにきたらおにいさんがいたの!」


鬼はいとが言っている意味がわからないという風だ


「なんだそれは」

顔をしかめられた

「わたしもよくわからないんだよ」

いとは首を傾げた

「・・・お前のほかに誰かいるか?」

「だれもいないよ?」

「そうか」


いとは最初から気になっていることを聞いてみた

「ねえ、おにいさんきいてもいい?」

「なんだ?」

「その角なあに?」


最初に見た白い角が二本頭にある


「・・・さあな」

「おにいさんひとじゃないの?」

「どうだと思う?」

「うーん・・・なんかおにみたい!」

いとは思ったことをそのまま言った

角が生えているものといえば鬼しか浮かばない

「・・・あたりだ」

「やっぱりそうなんだ!」

正解したことに嬉しくなって思わず笑った

それを見た鬼は不思議な顔になった


「俺が怖くねえのかよ」

「え?こわくないよ?」

いとからしたら鬼を怖がる理由はなかった

物語みたいに襲ってこないし普通に話している

「・・・変な奴だな」

その言葉にいとは微妙な顔をする

「わたし、へん?」

「ああ・・・

 お前迷子でここにきたっつったな?」

「うん」

鬼はしばらく考えてから言った

「・・・めんどくせえがお前が知ってる場所まで送ってやるよ

 このままここにいられても迷惑だ」

「いいの?ありがとう!!」


いとは喜びのあまり鬼に抱き着いた


「お、おい、やめろ」

「おにさんいいひとだね!!」


ぎゅうぎゅうだきついてくるいとを鬼はべりべりと引き離し「いくぞ」といって歩き出した


「まっておにさん!」


慌てていとはついていく


「ねえ、おにさんはおなまえなんていうの?」

「・・・さあな

 おにさんなんじゃねえのか?」

鬼はごまかした

「ちがうよ!ちゃんとしたなまえ!」

「しらねえな」


そういうとどんどん先に進んでいく

鬼ごっこでずっと走っていたいとは疲れていた


「おにさん、わたしつかれちゃった・・・」


いとはその場に座り込んだ

鬼はそれに気づいたがそのまま歩いていく


「まってよおにさん!」


よたよたと走る

しばらく走るとまた座り込んでしまった


「・・・チっ」


見かねた鬼がいとの前で背をみけて腰を下ろした

「・・・おにさん?」

「おぶってやるっていってんだ早くしろ」

「ほんと!?ありがとうおにさん!」


おそるおそる背中に乗る

鬼はいとを背中におぶって歩き出した

背中で揺られるのが心地いい


「おにさんのせなかきもちいいね!」

「そうかよ」

「ねえ、おにさんこっちむいて」

「あ?」


反射的に鬼が振り返る

いとは鬼の目を見ていった


「やっぱりおにさんのめはきれいだね!

 きれいなあかいろ!」

にこにこして言う

「・・・そうかよ」

そういう鬼の顔は動揺しているように見えた

「つのさわってもいい?」

「勝手にしろ」


触ってみると思った通りすべすべだった


「うわあ!つるつる!

 すごいねえ!」

「なんもすごかねえよ・・・」


しばらく触るといとは満足した

そういえば鬼の名前を聞いていないことを思い出す

「そういえばおにさんのおなまえきいてないよ」

「・・・雨だ」

「あめ・・・あめさんっていうんだね!」

名前を教えてもらえたのでいとは上機嫌になった


「なあ」

珍しくあめが訊ねた

「なあに?」

「お前何歳だ?」

「7さいだよ!」

「そうか」

「あめさんはなんさいなの?」

「しらねえ」

「数えてないの?」

「数えたりはしねえ」


そうしている内に前に大きい木が見えた


「ここ知ってる!」

「そうか、下すぞ」


鬼はいとを背からおろした


「いっておくが、俺のこと誰にも言うんじゃねえぞ」

「うん!」

「じゃあな」


そのまま歩いていこうとする


「あめさんまって!」

いとは慌てて引き留めた

「・・・なんだ?」

「あしたまたおはなししよっ!」

いとはにこにこ笑っていった


「それは無理だな」

「えー!なんで?」

「俺は村人に合うわけにはいかない

 そもそもお前とはもう会うつもりはねえよ」

「じゃあ、わたしがまたじんじゃいくよ!」

「は・・・?場所わからねえだろ?」

いとは意地になっていった

「わからなくてもいくの!またあめさんとおはなししたいもん!」

「・・・来なくていい

 俺はもう行くぞ」


そういうとあめは山に向かって歩き出した


「あしたぜったいいくからね!」

「来なくていい」


あめは一度も振り向かずに行ってしまった

いとは村に向かって歩き出そうとしたときかよちゃんの声が聞こえた


「いとちゃーん!やっとみつけた!」

「あ、かよちゃん!」

「さがしたけどぜんぜんみつからなかったからどうしようかとおもっちゃった!

 みつかってよかったー!」

「うん!ごめんね!

 かえろっかー?」

「うん!かえろ!」


だいぶん日が落ちてきていた

それからみんなと合流して一緒に家に帰った

家族には今日の出来事はあめに言われた通り秘密にした






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