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神惑師(しんわくし)  作者: 山茶花
第1章 ナナセランブリラ(A.D.796〜2000)
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1話 前夜祭の前日

冷たく生き心地が湧かない氷の柱に妾は居た。懐かしい子達の気配を感じた。

子達は既に死を迎え、どこかの誰かの子達になって跡が追えなかった。


「……」


嗚呼、昔のことを酷く思い出した。

旦那となった陰陽師の妾に対する殺意を感じ取り、妾は委ねるように何もせずに殺意を受け入れた。

酷く動揺した彼を見ていた。

小さき子達は目の前で母の妾が殺された後、彼を殺そうと能力を暴走させる。


『お前は!!!!! バケモノだ!!!!!』


ふと、目を覚ませば、いつもの住処だ。

後の世界では、平安時代と呼ばれる時代で十二単もない妾は細々と山奥に住まう。


「奥様……魘されておりました。雪女から新鮮なお水をいただきました。どうぞ」

「……ありがとう。まだ、妾は十四だぞ? あぁ、そうか。人間達はもう嫁いだりするのか……」


人間の若い女を従女にしている。

この世界を知らないまま、目覚めたのだ。

姿も異様の妾に誰もが恐ろしく触れてこない。石を投げられた。

そんな中、この若い女……静愛しずえは好奇心で妾を養う。


「はい。私は、かか様達から嫁がなくていいから、貴女のお世話をこの離れを使って一緒に居てあげなさいと言われました」

「貴女には、いつも申し訳ないわ。素敵な旦那様が出来たら教えてね?」


静愛は顔を真っ赤にして、手をバタバタと上下に動かす。

妾がからかっているのを分かったのか、手に強化魔法をかけて、背中を叩く。

かなりの痛みが全身を駆けていく。


「ハッ……。す、すみません! ナナセ様から教わった魔法を……」

「た、確かに。痛かったのは変わりないけど、調整は出来ていたよ。さすが、我が一番弟子だ」


静愛の頭を撫でれば、彼女は顔を赤くして嬉しそうに笑った。

ふと思い出したのか、静愛は身を乗り出して妾に先ほどの魘されていた内容を聞いてきた。


「……妾の最期で復活の時だ。その間にいろんなことが起きるそうだ」

「未来予知でしたっけ? ナナセ様はホントに魔法がお得意なのですね! 私ももっと勉強しなくては!」


やる気を与えれたと思っていると、ノックの音がした。

静愛をその場に残して、開けると二番弟子の榊原が現れた。

ドアに肘を曲げて押さえて、カッコよくキメていた。


「いや、静愛は勉強しなくていいと思うよ? なんたって、この僕がナナセ様の一番弟子だからね!」

「もー! そういう貴方こそ、何処にほっつき歩いてたの⁉︎ ナナセ様も何か言ってください!」


賑やかな二人を見て微笑んで無視する。

二人とも、聞いてもらえなかったとしょんぼりしながらも、部屋に戻っていった。

扉を閉めて、妾も後をついていった。


***


榊原が持って来たのは、京の土産屋にあるお饅頭。

並べば個数がだんだん狭まり、最悪買えない個数まで半刻で到達するソレを誇らしげに持って来た榊原。

静愛は榊原を散々、褒め倒した。

彼女はひっきりなしに買えないお饅頭をいつ並んだのか、空いている時間をメモしていく。


「美味いな、そう思わないか?」

「あぁん……! 餡が白あんのような感じがしますが、もっと甘いような? なんなんでしょうね、この味! でも、幸せになれるような味が広がっています!」

「静愛はホントに美味しそうに食べるから見ていて飽きない」


静愛が何かを必死に伝える姿は、現代で言うグルメリポーターそのものだ。

二人ははっきり言って、ナナセの歳と差が激しい。

ナナセに関しては目覚めた時にはもうこの近辺を歩いていたのだ。


「そういえば、ナナセ様。お腹少し膨れていません?」

「実はね……」


そう言って、二人を手招きして耳元で囁く。

それにはまた、静愛は赤面になり、榊原は戸惑いが隠せないまま、しどろもどろする。

そんな二人を見て笑っていると、荒々しく扉を開ける者がいた。

息を切らした農民は土間に入り、静愛を見ながらこう言った。


「た、大変だ! 静愛! アンタの家が、家が!」

「家? 家がどうしたのです?」

「賊によって、金目になるものを奪って家に火を放ったんだ!」

「なんだと! おい、案内しろ! 師匠と静愛は此処にいろ。終わったら、戻ってくるからさ。師匠、静愛をお願いします」

「分かった。任された。ちゃんと帰って来なさい」


榊原は静愛の頭を撫でて、師匠であるナナセに頭を下げて、農民の後を追った。

ナナセは必死に静愛の頭を撫でて、落ち着かせていく。


翌朝、榊原に連れられて、久々に静愛の実家に行った。

火事による火はナナセが教えたおかげで、水の魔法により被害は抑えられていた。


「とと様……かか様……」

「今は俺の実家で寝かせてるさ」

「ほんと? 嘘はダメだって言ってたから疑っちゃう」

「それは分かる。あ、師匠。こんなのが落ちていました」

黒水晶クロノルか。ありがとう」


榊原の手から渡されたのは黒く鈍い光を放つクロノルと呼ばれている黒水晶だ。

能力を発動する際にこれを介入に使って威力をあげたりする。

その代わりに、死が待っている対価の必要な代物。

ナナセはこれを貯蓄しており、何かの為に残している。


「さて、まずは戻ろう。いろんな話をする必要があることに変わりはない。静愛、戻ろう? 温かいお吸物作るね」

「ありがとう……ございます…。ナナセ様」


榊原はまだ、調査があると言うことで、また、別行動だった。

静愛はホントに悲しみと辛さが一気に寄せているのか、苦しそうな顔と両方の二の腕を強く握っていた。

そんな姿を見て、ナナセは眠り魔法を使う。


「落ち着いて、お眠り……」

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