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祝福回路はdeathデスデース。  作者: 七並弱志
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1-7.記憶にない記憶デス。

目が覚めるとやはりそこは暗い地の底だった。


何時間ぐらい寝てたのだろう。

時間がわからない暗闇と言うのはまるで常時発動型のセルフ目眩スキルだな。

とりあえず使えるものがないか、何があるのか、詳しく周りを調べてみる。


 いい加減自分の反吐がついたシャツは匂いがキツいので洗いたいが洗おうにも水がない。

こういう時はどこかにポタポタと落ちる水滴ぐらいある筈だと高をくくっていたのだが、それが全く見つからない。

二時間ほどして落胆と失望で座り込んでしまったオレは、マージされたというこの一か月の記憶に思いをはせてみた。


つい先ほどまでは記憶になかった事が思い出として脳裏に再生される。

体験していない事を記憶に持つというのは案外不思議な気分だった。

心配していた入試も無事に受験してくれたようだ。


試験当日の朝、妹が合格祈願のお守りをくれたのを思い出す。

オレがお参りしなかったので代理で合格祈願の絵馬も書いてきてくれたらしい。やさしい妹だ。


「お兄ちゃん、最近すごく頑張ってたし、きっと大丈夫だよ!」


おなかのあたりに細い手で抱きついて顔をうずめたあとお守りを手渡してくれる。

小さいころから食の細かった妹も小学校の高学年になるにつれ、だんだんと女の子らしくなってきた。

どうすれば3枚目の王道を地で行くあの父が射止める事が出来たのか、斬波家の三大不思議の一つとも言われる顔立ちの整った母だが、彼女によく似た妹は数年もすればかなりの美少女になることは想像に難くない。


オレの代行者ザッパが妹の美久に「ありがとう」と言った後に頭を撫でると彼女は少し照れて頬を染めた。・・ザッパ死んどけ。


さてと、、。試験はどういう問題だったのだろう、、と思い出して見ると、まるで映画を見てるかのように一字一句鮮明に思い出す事ができる。

問題の内容もさることながら回答の内容と意味が完璧に理解できる。頭の中で解いていくスピードもザッパと同じだ。

これはザッパが一度オレの脳を使って思考を行う事により、オレの頭の中に様々な回路の様なものが構築された、という事らしい。


 なるほどなー。頭のいい連中はこういう感じで問題を解いてたのか。

記憶の中でザッパが問題を解くたびにオレの中で新たな回路が出現し、その処理の速度が引き上げられ、思考を容易にする。何かが変わる。うん。勉強は大事だね。


そしてマージされた記憶情報からザッパ達がなぜオレの体を使ったかの意味をようやく理解する事ができた。


 人の文明というものはある程度同じレベルが続いた後に突然階段を一段上るように文明のブレイクスルーが起こるものだ、と言う事だ。

そしてその為には鍵となる人材が必要になる。


 通常は一部の天才と呼ばれる人々の偶然による出現を待つわけだが、あまりにも停滞が長く続いた場合、外部からの刺激無しではそれが発生しないケースがあるらしい。

そしてその停滞は一定以上の天災に対応できず滅びを辿るケースや、同族で利益を奪い合う戦争の引き金となりかねないという事だ。

そこでその刺激となる為に、ザッパなどのような先進文明をもち且つ平和的な種族による介入が行われるらしい。

らしい、、と言うのはザッパ達が何者であるかがさっぱり思い出せないからだ。


 そして、これはある一定の正義感や倫理観を持った子供の中からランダムで選ばれた個体に対して上位者である彼らが精神体でのログインを行い、その人間の脳を使って様々な思考を行う事により思考の回路を出現、形成させる事にあるのだ。これを彼らは祝福と呼んでおり、過去、時代の兆児と言われる者や突出した科学者の中には彼らの祝福を受けたものが少なくないという事らしい。

 それからすると全く実感は無いのだが、自他共に中の中を認識するオレも将来的に大化けする超優良物件に成り上がったという事なのだろうか?


「んーまてよ。」そこまで記憶を辿っていてふと思いついた。


そういえばザッパは何のためにあの機械を作ったんだ?? 


ここにいた時のザッパの記憶を探ると一瞬何かが頭の中でパリンと砕ける軽いショックとともに、一つに見えたが実は3つの道具だった事を思い出した。

ザッパは緊急時用の空間ポケットを携帯していて材料はそこから出したらしい。


一つ目は、、空気中から水を作る機械。わー。きたーこれ。


使い方を思い出してスイッチらしき部分に手をかざすとブンと低い唸りを発し、横についた変な形の管から水があふれだした。

とりあえずがぶがぶと飲む。ひゃーうめー。生き返るわー。さっき死ねって言ったけど本気じゃないからねっ。

ついでに着ているものを全部脱ぐとじゃぶじゃぶと洗ってやった。

石鹸ないからきれいにならないと思うけどどうせ誰も来ないし暗いから気にもならないデス。


 よく見るとどこで着替えたのか全く見たことのないシャツとズボンだ。ズボンは腰以外はぶかぶかでまるでどこかの国の民族衣装のようだった。

パンパンっと洗濯物を洗い伸ばしすると少し離れたところある丸い岩の上に並べて干した。パンツは紐で止めるトランクスぽいものだった。それも脱いだので少しすーすーする。


歩くと大事な部分が左右に揺れて微妙に開放的だ。おー。ふりちんとはフリーなちんこの意味であったのか。

ザッパの洗礼を受けて灰色化したオレの脳細胞が無駄に的確な(ぽい?)答えをはじき出す。さすがに天才は一味違うぜ!


 2つ目は食べ物を合成する機械だった。これは壁に自生するコケを取ってきて上の穴に入れて水を入れて3分間。ハイ!出来上がり。

暗くて色はわからないけどシリアルバーみたいな雰囲気だ。

とりあえず少し齧ってみる。

 む。噛めば噛むほど味は微妙、というか少し癖のあるうまさと言うのが正しいか。まぁ、なんだ。材料が壁に生えてるアレだからな。味はともかく腹いっぱい食えれば良しとするしかないだろう。


そして肝心の3つ目だがこれはまだ制作が途中だという事を思い出した。当然ながらこれは脱出のために使う道具だ。

燃料になりそうなものが水しか見つからなかったのか水でエンジンを回して推力を得る仕組みだが、ザッパの緊急時用空間ポケットの材料では十分な推力を得るエンジンを作るには至らなかったようだ。


 ん?・・まてよ? という事はザッパもここからの脱出方法が見つからなかったのか?


記憶によると少し出て周りを探索したい気持ちもあったが、これ以上のトラブルも不要、、と思考したようで、それほど脱出には拘って無かったような気がするが、、。

 感情部分の記憶はやけに曖昧で脆く、一瞬でオレの感情が上書きしてしまいザッパの感情は雲散する。

まぁ、これはリアル遭難でガチって事だな。

食いものと水さえあれば当面はしのげるしなんとかなるだろう。

とりあえずはこの3つのお宝を最大限に利用してサバイバル&脱出をする。

なんとしてもここから出るんだ。


そしてお家に帰るんだ。

2日後のつもりでしたが連日デス。


斬波聡が無駄にポジティブで書きづらいデス。

まぁ文章短くてすみますケド。


4/14タイプミス修正しました。ふおっ

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