1-2.白い空間でdeathデス
5月6日 改行位置修正してました。
まだ終わり・・ではなかったようだ。
水面に浮きあがるような感覚とともに意識も押し上げられる。鉛のように重く閉じた瞼だったが、先ほどまでの激痛は消えていた。
無理に目を開けるとやがて視力がゆっくりと戻ってくる。
そこは真っ白な部屋だった。
天井にはやけにまぶしくオレを照らすライトが丸く並んでいる。
ここは、、、病院? やはり事故にあったのか?
周りを見回そうとするが体が反応しない。が、右の方に人の気配を感じる。
「〇。X▽〇△!XX〇△XX。〇△XX。△XX△XX〇X▽〇△XX〇△XX?(あ。戻ってきた!お帰りなさい。ザッパ。遅かったね。えらく時間がかかったみたいだけど、うまく行ったのかな?)」
声のする方に顔を向ける。そこには真っ白な体躯に真紅の瞳。猫?、、というよりはもう少し大きくて太い、何か別のものだ。
二重の金属リングをピアスのように両側に垂らし、背中には怪しげな紋様を浮かべるその体。毛並みは異常なまでにもふもふとしている。
しかもこれが謎の言語で語りかけてくるとはな。ハハッ。さすがオレの夢!常軌を逸してるぞ。
いわゆる通常パターンであれば、この場でサクサクと契約を強要してくるのがお約束であろうと思われる怪しいもふもふだが、そっとこちらに顔を寄せると、まだベッドから動く事が出来ないオレを優しく注意深く見守っていた。
・・なるほど。理解した。したぞ。いやー、多分これはあれだな。
病院ではなくて、意識を失ったまま夢を見ているというヤツだ。
あの暗闇の中でオレの本体は今まさに死に直面している。だと言うのにそれをすっかり忘れて夢の世界のベッドの上で謎生物とご対面とは。
あまりもの自分の幸せ上手に舌を巻くデース。
「〇X▽?〇△XX? 〇△XXX?(あれれ?もしかしたら記憶喪失とか? 変になってる?)」もふもふが話しかけてくる。
何を言ってるのかさっぱりわからないけどすごく耳障りが良い響きだ。
「日本語ならドウ? 記憶ソーシツ? 」
少しおかしな日本語だったが今度は意味がわかった。
だけどオレは記憶喪失じゃない。
オレは高校受験を目前に控えた中学三年生で名前は斬波聡。ザッパと読めないこともないけどザ・ン・バだ。そして御先祖様は波を斬るような刀の達人だったに違いないと信じてやまない中二病も心の中で威風堂々と健在だ。
少し痺れが取れてきた上半身を起こしてみると、相変わらずもふもふは心配そうに真っ赤な瞳でじっとオレを見つめている。
夢の産物とは言え、なかなかシュールな生き物だ。
「んー。ここはたぶん、、夢の中、、だよな?オレはどこかで大けがをして意識を失った。それで今この夢を見てる。・・だろ?」
夢の中の住人に同意を求めるとはかなり馬鹿げている行為だ、、、と自分でも思う。
しかし、これも寝てる間にこそ脳は自問自答し、思考の整理を行っているのであると言う説を信じるのであれば、何もわからずに死に直面した自分、その状況を整理し理解するために作りだした空想、、夢なのだと考えて無理はあるまい。
「大けが?」怪しげなイントネーション。
もふもふは何のことかわからないよという風で不思議な眼球の動かし方をしながら少し考え、ゆっくりと独り言のようにつぶやく。
「・・・夢、、ね。ある意味正解だけど正解じゃないよね。確かにここは意識の限界点である夢の世界を超えたところにある現実の世界。現実という映画の未使用フレームの一コマみたいな所にできた圧縮データの退避領域みたいものだしね。」
・・・すまん。わからん。
現実と夢の境目が無くなった世界とか、SF的な展開か?はたまた魔法少女的ファンタジーなのか?
どうせ死ぬなら魔法少女でお願いしたいところだが、まずはこのもふもふのオレ的設定ぐらいは知っておきたい気がする。
「・・それで、、そのフレームとやらにお住いの貴方様は私とどんな関係でしょうか?」
少し自棄気味にへりくだって尋ねると、今度は訝し気に眉間にしわを寄せながらもふもふが答える。
「何それ?? ボクと君は同僚で友達だけど???・・と言うか、本当に今日の君は変だよ? 記憶が混濁とか障害とか言うレベルじゃない。君、本当にザッパだよね?」
「いや、オレの名前は斬波聡て言いますけど?」若干響きが似ているような気もしますが違いますねんと開いた右手を胸のところで左右させた。
カッともふもふが赤い目を見開く。
感情の読み辛いその目からはレーザービームでも発射しそうな勢いだ。
何の逆鱗に触れたのか。射すくめるような視線のビームにオレは硬直する。
時間が止まった。・・・かと思える程の沈黙がオレ達を包んだ。
◇
「ぷっぎゃっ----」
どこか壊れた雄叫びにも似た声を出すと、突然スイッチがオンになったもふもふが慌てて自分の手の高さに半透明のキーボードを展開する。
同時に空中にモニター画面のようなものが次々と現れる。おーすげぇ。超未来科学なの?
肉きゅうと爪でデータが入力されると画面が凄い速さで映り変わる。スピードが足らなくなったのか尻尾まで参加させてる。器用だな、などと思いながらその動きを見ていると、いきなり白い金属でできた手かせと足かせがチカチカと空中に現れ、目にも止まらぬ速さでオレを拘束してしまう。
ちょっとまて!オレはまだ何もしてないぞ!
・・いや、待て。・・・はっ??まさか?
もしやオレにはこのような拘束願望があったのだろうか??
しかし、いや、そもそも、いくら夢の中だとしても中学生で目覚めるには少し早すぎるのではないだろうか?というかこのリアルさはなんなのだ?夢とは思えぬ臨場感だ。
「何をする。放せ!こらっーー」
大声で叫ぶと今度は未来版猿轡的なものが現れてオレの口を覆ってしまった。
超未来科学勘弁してくれ。「もごもごーっ」
「フン。君の事は後回しだ。そこでおとなしくしてて。煩いと殺すよ?」
もふもふは赤い瞳をこちらに向ける事もなく冷たく言い放つ。
おいまてこら。
いきなりのこの待遇は酷過ぎるんじゃないか?
だいたいオレは昔から鼻だけで息してると死にそうになるんだよ。
もふもふのさっきまでとは打って変わった態度にちょっぴりビビリながらも、これは本当に夢なのだろうかと嵐の前の雨雲のように疑問と不安が一気に広がって来る。
「もごーもごもごー」
しかし、もふもふが一瞬だけこちらを見て(殺すって言ったよね?)と無言の圧力をかけてきたので悔しいがここは大人しくせざるを得ない。
雨雲はとりあえずセルフサービスで雲散させる。
何秒ぐらいだろうか、長いような一瞬のような時間が流れ、もふもふが唐突に叫んだ。
「見つけた。ここはどこなんだ??とにかく地底深くで大けがをしてるね。生体データフィードバック。うわぁ、あと少しで死んじゃうとこだった。ザッパ、ザッパ、ごめんよ。とりあえず遠隔でできる治療を全部行っとこう」
もふもふが何か大声で慌てている。
「わ。これはどこのフィールドなんだろ? 規定によりザッパと直接の会話は無理か。既に現地の管理者による感知は受けてるみたいだけど治療は緊急措置だから問題ないね。よしっと」
もふもふの右上に出たモニターをチラ見すると、そこでは真っ赤に染まっていたステータスらしきグラフが次々と赤から黄色、そして緑に変わっていく。なんだろ?
「とりあえずこれで大丈夫だけど、なぜこんな所でザッパが死にかけてるんだろ? 今回は太陽系第三惑星地球のデータ収集と選ばれた者への祝福が目的だったはずなのに? 」
投稿したら第二話消えたデース。マニュアル読んでもさっぱりわからないデス。
気を取り直して再度投稿。今度はうまく行きますように。