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魔王様と無敵のちゃぶ台   作者: 夛鍵ヨウ
13/14

ちゃぶ台が一番って事で。

「……」

 かちゃかちゃ、と陶器の鳴る音がする。

 魔王がしゃがみ込んで床に散らばった物を片付けていた。

 フレデリクは何も言わずに、ただそれを見ているだけだった。

 


 バラサークがちゃぶ台を返したその時、上に載っていたトランプも湯のみも当然一緒にひっくり返った。

 フレデリクはそこそこいい温度の焙じ茶をしたたかに浴び、「熱いっ」と率直な悲鳴をあげて畳の上を転げ回った。

 

 その悲鳴でバラサークは我に返り、大慌てでフレデリクに駆け寄る。

「おおおっ? 大丈夫か剣士よっ!?」

 フロストゴーストが現れてフレデリクに抱きつく。熱いのから急に冷たくなってフレデリクは再び「冷たいぃぃ」と見た通りの悲鳴をあげた。

 

 どうにか火傷を免れた様子に安堵して、魔王は床の上を片付け出した。

「……うぬぅ……つい我を忘れ愚行を働いてしまった」

 割れた湯のみを脇に避け、ひっくり返ったちゃぶ台に手を伸ばしてそっと持ち上げる。

「ちゃぶ台よ、すまなかった」

 

 申し訳なさそうにちゃぶ台に語りかけるバラサークを見て、フレデリクは溜め息をついて立ち上がり、近くにあった雑巾で濡れた畳を拭き始めた。


「おぬし……」

「魔王よ、何か捨てる紙はあるか? 割れ物を包んでしまいたい」

「おお、あるとも。確かお試し読みで取り寄せた新聞紙が一部だけ」

「悪かったな」

 床に視線を落としたまま、唐突にフレデリクは謝った。


「何かその……ほんとに、済まなかった。許してくれ」

 バラサークは目を丸くして、黙ったままフレデリクを見つめた。

「お前には到底勝てないと、俺はあの時気付いていた。今まで最強と思っていた俺の剣がまるで通らない……格が違いすぎると悟った……」

 フレデリクは雑巾を握りしめ、肩を落とした。

「だが俺は勇者だ。人々に勇気と希望をもたらす勇者という存在である限り、俺は生きて行けると思ったんだ……」

 

 バラサークは新聞紙を取りに行くのをやめ、静かに正座して続く言葉に耳を澄ました。

「ところがどうだ。お前はいつの間にか改心し、訳の分からないうちに平和が訪れた。見ろ、お前じゃないが、俺はただの元気なお兄さんになっちまった」

 両手を上に持ち上げ、フレデリクは自らを嗤った。

「何が最強の剣士だ。最強はお前だよ魔王。間違いなく、最強とはお前の事だバラサーク」  


「いや、違う」


 魔王は何故かきっぱりと否定した。


「何だよ、嫌みかそれ!?」

「最も強き物はこれである」


 魔王はちゃぶ台をぽん、と叩いた。

「儂を変えたのはこのちゃぶ台。こやつに会って、儂は悪い魔王を辞めた」

 ぽかんとするフレデリクに、魔王は自信満々にこう言い放つ。


「残虐非道な魔王バラサークを、一人のおっさんに変えてしまったこのちゃぶ台。間違いなく、こやつが最強。最強とあれば他に敵無し。正しくこれが、無敵のちゃぶ台である!」      


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