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5話:戦闘・生産のチュートリアル

Oβ初日後編です

-木曜日 続き-


草原兎を無事倒し、西へ歩みを進める雑巾。



草原兎がちらほら見えるが、向こうからは襲ってこないので、そのまま道なりに

進むこと3分ほど。目の前の遠くの方に街らしき外壁が見えてきた。


更に5分ほど道なりに歩くと、街の入り口に到着した。

入口は幅8m程の門になっており、丸太で組まれた門を吊り上げることで閉まる

形式のようであった。よって丸太の門の上を通る形になるが、歩きやすいように

平になっていた。門番が立っていたが、声を掛けられることもなく街へと入る。


『デミアの街へようこそ。ここでは、戦闘と採集/生産のチュートリアルを

受けることができます。チュートリアルを受ける際は、戦闘は訓練場、

採集/生産は木工ギルドへ向かってください。』


機械的な女性の声が聞こえ、戦闘と生産のチュートリアルを受けられるようだ。

まずは主武器を決めたいので訓練場へ向かうことにする。

ミニマップに訓練場と思われる剣2本を交差させたようなマークが大き目に

表示されていたので、迷うことなく訓練場へと到着した。


訓練場入り口には教官っぽい雰囲気のNPCがいて、その周りに数人のプレイヤーがいた。

たぶん、この教官からチュートリアルを受けるのだろうと思い、声をかけてみる。


「こんにちは。」


「よく来たな。ここは訓練場だ。ここでは奥にある訓練人形を好きなだけ叩いて良い。

武器はここ専用のやつを俺が貸し出す。普通の武器を使っても構わないが、

耐久は減るし、矢等は消耗するから気をつけろよ。貸し出す武器は1種類ずつだ。

別の武器を使いたい時は、俺から借りなおしてくれ。」


「では、片手剣をお願いします。」


木剣を持ってはいるが、一応片手剣から借りる。借りた瞬間、腰に金属製の鞘に

入った剣が装備された。


訓練人形は半分以上埋まっていたが、空いている一つを見つけ、腰から剣を引き抜き

思うがままに斬ってみる。


訓練人形は木で出来た案山子のようなものに、革製の鎧がついているものであったが、

切り傷は30秒程で綺麗に修復されていた。


十数回程試しては武器を替え、片手剣、片手斧、両手槍、小弓、短剣、片手槌、

片手杖と順番に試した。一番扱えたと感じたのは短剣、次選で片手斧と片手槌である。


密かに期待していた小弓は散々な結果で、弦に矢をつがえるだけでも一苦労という有様。

スキルによる自動補正でうまく扱えるようになるのだろうかと思った頃、

周りのプレイヤーがスキルが上がらないという話で盛り上がっていることに気付いた。


確かcβの情報では訓練場でスキルLv10まで上げられるとあったが、周りの状況では

誰も上がっていないようだ。俺もメニューウィンドウからスキルを表示してみたが、

Lvが上がるどころかスキルさえ習得していなかった。


俺は武器を試している間に周りのプレイヤーの話をそれとなく聞いていたが、

この街の北門近辺にいる敵を狩ったら武器スキルを習得し、スキルLvも上がった

との情報があった。


練習用の武器が原因と考えたプレイヤーが、NPCから通常武器を買って訓練人形で

試したがスキルLvは上がらないという話も聞こえた。


全ての武器を試すのに1時間ちょっとかかったと思うが、その頃には訓練人形を

叩いている人は3分の1程まで減っていた。スキルLvが上がらないという情報が

広まっているのかもしれない。


教官のおっさんに片手杖を返し、自然にお礼と独り言を口にしてしまう。


「ありがとうございました。・・・他に試していないスキルはないかな。」


「ん?おまえさんが試していないスキルか。拳技、蹴技、投擲だな。」


教官のおっさんが答えたことに俺は吃驚する。


「拳技、蹴技にここで貸せる武器はない、そのまま殴る蹴るしてくれ。

投擲はあるが試してみるか?」


「は、はい。お願いします。」


驚きのあまり思考停止しているところに聞かれたので、無意識に肯定の返事を

していた。右側の腰に革袋が装備され、中へ手を入れると石ころが入っていた。


近場の空いている訓練人形で試してみる。手に石ころを持っていたので、

最初は上投げで投げてみる。2mくらいから投げたので狙い違わずコツンと当たる。

そのまま近付き、右ストレート、左ボディブロウ、右ローキックとやってみたが、

格闘経験がある訳でもなく、武器を使った方が良いと直感した。


3mほど離れ、投擲を試してみる。現実世界で野球等の経験はお遊び程度であったが、

狙った場所にコツンコツンと当てることはできた。

上投げからサイドスロー、下投げと、一応実戦を妄想したシャドウ的な感じで

身体を動かしながら投げる。命中率は100%ながら全く脅威には感じない。


MOB(モンスターや動物等の敵全てをさした言葉)の釣り(PULLともいう対象の

個体だけを引っ張る意味)に使うような武器だから威力は無いよなと考えに

耽っていると、突然、ゴンッという音がした。

他のプレイヤーはそれなりに離れているので、俺が出した音で間違いないと思う。


当たった場所による違いかなと思いつつ、ゴンという音がした時と同じ河原で

水切りするような投げ方で繰り返してみた。


30回程投げた結果、当たる場所には関係なく、10回に1回くらいの確率で

ゴンという音が出て、威力も大きい印象を受けた。

クリティカルヒットのような扱いだろうと勝手に納得する。


借りた投擲の革袋を返す時に、一部NPCはAI(人工知能)になっているという情報が

どこかにあったなという事を思い出し、試しに名乗ってみる事にする。


「こちら返却します。遅くなりましたが、私は雑巾といいます。

本日はありがとうございました。」


「丁寧にありがとな。俺はアイバンという。元騎士で、今はここの教官だ。

よろしくな。」


教官の頭の上に表示されいた名前が、“訓練場教官”から“教官アイバン”に変わった。

AIで正解とわかっただけでなく、細かい所も凝っているなと感心した。


訓練場を後にし、ログアウト予定の時間まで1時間ほどあるので、もう一つの

チュートリアルである採集/生産を受けることにする。


ミニマップを見ると、木に斧が横から刺さっているマークが大きくあったので、

木工ギルドへも迷うことなく到着する。


木工ギルドマスターへ話をすると、こちらは長々と説明が入った。


要約すると、収集出来るものは収集マークが収集物付近にあり、

対応した収集道具を使うことで収集物を手に入れることができる。

生産は各ギルド等にある専用設備と、対応した生産道具を使い、

必要数の材料を用いて加工品や製品を作成する。

収集道具や生産道具には耐久があり、0になると壊れ消滅する。

収集、生産ともにスキルLvによって難易度の高い物を扱えるようになったり、

道具の耐久の減りを軽減したりする。

この耐久軽減は武器や防具スキルも同じらしい。


もう一つ漠然とした内容であったが、生産スキルを熟練すると、

やり方の違う生産が出来るようになるらしい。

これはその時に説明されるとのことであった。


ギルドマスターより、[練習用の伐採斧]と[練習用の木工道具]を渡された。

ここで手に入れた練習用のアイテムは、木工ギルドの敷地外へ出ると消滅するらしい。


木工ギルドの建物の外から裏手へ向かうと、歩いて1分程で“練習用の木”と

思われる木が数十本あった。

そのうちの一本へ近付くと、収集マークがはっきりと表示されていた。


収集マークに手で触れると、収集ウィンドウが現れ、[練習用の伐採斧]だけが

表示されていたが、アイテムバッグにある道具を選択するのだと理解した。


[練習用の伐採斧]を選択しOKボタンに触れると、手に伐採斧を持ち、横に思いっきり

振りかぶってトントントンと、録画の早送り再生のような速さで身体が勝手に動き、

木を伐採する。


木が切り倒されると共にポリゴンが離散するエフェクトが出た後、ウィンドウが現れ

[練習用の木材]x3を入手と、[練習用の伐採斧]が壊れたことが表示されていた。


道具が壊れてしまってはこれ以上伐採出来ないので、木工ギルド入口へ戻り、

建物の中へ入ってみる。

中は椅子やテーブルを作る作業場といった雰囲気であり、区画割りされているのか

同じような設備が数か所見える。


その一つの区画へ近付くと、収集マークに似た木工設備のマークがあった。

マークに触れ、収集と同様に[練習用の木工道具]を選択しOKボタンに触れる。


ウィンドウが切り替わり、作成物の一覧と必要材料の一覧が表示された。

よく見ると[丸椅子]が[練習用の木材]x3であり、他の作成物の名前は若干暗く

表示されているので、これしか選択肢がない。


[丸椅子]を選択しOKボタンに触れると、収集よりも超高速で身体が勝手に動き、

トンテントンと丸椅子を作り上げた。

目が回るような事はないのだが、身体が勝手に動くのは違和感がある。


収集/生産のチュートリアルも終えたので、木工ギルドを後にし広場へと向かう。


ここで現実時間23時を過ぎたので、今日はこの辺でログアウトする時間となった。

街中等の安全な場所では即ログアウト出来る仕様となっている。

安全ではない場所では10分位だったか放置されるとのこと。


メニューウィンドウを手を使って表示し、ログアウトボタンに触れる。

確認メッセージのウィンドウが現れたので、はいボタンに触れると、景色が徐々に

ブラックアウトしていく。


VR画面上に、“お疲れ様でした”の文字と、“プレイ時間2時間37分”、“総プレイ時間

2時間37分”の情報が表示された。


***********************************************************

 雑巾:Lv1 プレイ時間:2時間37分 総プレイ時間:0日2時間37分

 筋力10、体力10、知力10、精神力10、

 持久力10→11、素早さ10、器用さ10、運10、道徳10

 所持金:300gem

***********************************************************


ヘルメットを外し、足首のバンドを外し、リクライニングチェアからゆっくりと立つ。

少し伸びをしてみる。身体が凝ったり、VRと現実世界の差で違和感があったりするかと

若干心配していたが、杞憂であったようだ。


ただ、喉が渇いている。そういえば注意事項に水分補給と適度の休憩を取るようにと

書いてあったことを思い出した。

冷蔵庫に入れてあった冷たい緑茶で喉を潤し、今日のところは就寝する。

SSSOプレイの興奮で眠れないかもしれないが。


明日の仕事が終われば、土日休みでSSSO三昧が待っている。

益々、興奮で眠れそうもないなと布団の中で考えているうちに爆睡していたようだ。

VRによる精神的か何かの疲労はあるのだろうと思う。


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