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4話:Oβサービス開始

Oβ初日前編です

-木曜日-


待ちに待ったオープンベータテスト開始当日。開始時刻は15時となっていた。

俺はもちろん仕事であるが、なるべく早く帰りたいと考えている。


仕事は順調に進み、急なトラブル等にも見舞われず、定時過ぎに帰宅出来た。

夕食、風呂と急ぎ済ませ、20時30分にはログイン準備が完了した。


ドキドキ、ワクワクという気持ちのままリクライニングチェアーに座り、

ヘルメットをかぶる。


VR画面に“生体認証完了”の文字が表示され、キャラクター選択画面へと移る。

事前に作成していたキャラクター「雑巾」を選択し、いざログイン。


画面が暗転し、直後目の前に風景が映し出される。

体験時に見た村のようであるが、周り中人だらけであった。


目の前に人型のノイズのようなエフェクトが現れたと思うと、すぐに人が現れた。

ログインするとこうやって表示されるようである。

人混みに思考停止していると、唐突に、機械的なの女性の声が聞こえた。


『SOMETHING SUB STORY ONLINEへようこそ。現在地は始まりの村です。

村長のお話を聞きましょう。』


そして、ピコンピコンという音と共に、前方の老人の頭の上に青色の逆三角形の

マークがでっかく表示され、明滅しながら回っていた。

チュートリアル的な何かであると考え、この混雑では早めに先へ移動した方が

良さそうだと判断し、人をかわしながら老人の元へ歩いていく。


老人の前は人だかりであったが、ちょうど前の人が離れたので、そこから老人へ

何かアクションを取るのだろうと、取り敢えず挨拶をしてみる。


「村長、こんにちは。」


「おう、やっと来たか。おまえがこの村を出ることは聞いておる。これは餞別じゃ。

これを持って西門のリックのところへ行くのじゃ。達者でな。」


良くわからないが、この村を出ることになっているらしい。


村長から革の袋を手渡され、それを受け取ると、ウィンドウが現れた。

[木剣]、[傷薬]x3、300gemを取得したとの確認メッセージらしい。

とりあえずOKボタンに触れる。ウィンドウが消え、革の袋も消えた。

アイテムバッグの中に自動で入ったと思われる。念のために確認したいが

ここでメニューウィンドウを操作していたら邪魔になりそうなので、

VR画面右上にあるミニMAPを見ながら西へ移動する。


ここでVR画面と言ったが、正しい言い方かはわからない。視線を動かしても、

半透明の情報のようなものがいくつか目の前にある。

ミニMAPもその一つで、右上に固定されている。左上には自分の名前「雑巾」と

HPやMPといったステータスがバーと数値で表示されている。


人混みから解放されたところまで移動した後、メニューウィンドウを開き、

アイテムバッグボタンへ触れる。

別ウィンドウが現れ、[木剣]と[傷薬]x3が表示されていることを確認した。

安心したところで、村長の指示通り、西門のリックという人の場所へ歩きを進める。


リックの周りも混雑していたが、暫く待つと前の人が離れたのでリックへ声をかけた。


「こんにちは。」


「お、来たな。ここから西へ進むとデミアの街に着けるが、その前に村長から

貰った木剣を使って、草原兎を1匹狩ってこい。」


強制的に狩りが必要らしいと思ったところで、目の前にウィンドウが現れ、

機械的な女性の声が聞こえてきた。


『アイテムバッグに入っている木剣を装備し、西門付近にいる草原兎を倒して

みましょう。装備の仕方、攻撃の仕方は、ウィンドウの説明をご覧ください。』


ウィンドウの説明は図解で分かりやすく、メニューウィンドウからアイテムバッグ

ウィンドウを表示し、[木剣]に触れて表示された選択肢中の“装備”へ触れると、

腰にベルトのような紐状の物が巻かれ、そこに木剣が括り付けられた状態で表示された。

この木剣を右手で持ち引き抜いた後、西門の外に見える兎のようなものへと進む。


現実世界の兎より遥かに大きい、中型犬くらいの兎・・・と呼ぶにはちょっと

可愛くない草原兎の目の前まで来たが、逃げるそぶりも見せないので、

取り敢えず木剣を斜め上段から振り下ろしてみる。


「ギュッ」


木剣が当たった手ごたえがあり、草原兎が鳴いた。


俺のことを敵と認識したようで、こちらへ突っ込んできた。

慌てて回避しようと思ったところで草原兎の頭突きを正面から受けてしまうが、

腹に当たった感覚はあるものの痛みはなかった。


呆けている間に、また頭突きを受けてしまったが、HP(生命力)は減らないようだと理解し、

頭突き後の隙のあるうちに木剣で叩く。更にもう1回叩いたところで、草原兎が

横に倒れ、ポリゴンが離散するようなエフェクト後、草原兎の姿が消えた。


『おめでとうございます。草原兎の狩りに成功しました。

マップを見て西へ進み、デミアの街へ向かいましょう。』


唐突に機械的な女性の声が聞こえ、これが戦闘なんだという実感が湧いてきた。


俺は相当な数のオンラインゲームをプレイしてきているが、対人戦は大の苦手である。

特に少人数の場合、心臓の鼓動が早くなり、場合によっては手も震えてくる。

それでも対人しなければならないゲームもあり、集団戦や乱戦などの気軽な

雰囲気のものには慣れたが、1対1等の相手の動きを見て判断するような戦闘では

未だに克服できていない。


今も、それに近い状況になっている。心臓の鼓動が早くなっている気がする。

慣れるのに少し時間がかかるかもしれないなと考えたころ、落ち着いてきたのか

周りの状況が見えてきた。


何人もの人が、草原兎と戦闘している光景があった。

俺のように何度か頭突きを受けている人、問答無用で連続で叩いている人、

頭突きを避けながら器用に叩いている人。

なんとなく、若者にみえる人の方が柔軟に対処できている気がする。

頭突きを避けている人は格闘技の経験者かもしれない。


俺は木剣を手に持ったままだったことに気付き、左の腰あたりに戻そうとすると、

自然に腰ひもに括り付けられた。

この場所にいたままでは他人の邪魔になるので、VR画面右上に見えるミニマップを

確認しながら西の道へと歩くことにする。


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