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27話:公式イベント-前編-

-土曜日 続き-


公式イベント開始直前、北門外で待機する俺とタツヤ。



フォン♪という効果音に続き、機械的な女性の声が聞こえる。


『第一回、モンスター襲来イベントを開始いたします。』


「た、大変だー!モンスターが街に向かってくるぞー!

みんなで協力して、街を守るんだー!!」


かなりベタな台詞せりふと共に、北門前にバリケードが設置され、門番NPCや衛兵NPCが現れた。


周りのプレイヤーは、モンスターはどこかと皆で探している。


俺も、遠見スキルと察知スキルで状況を伺っているが、まだ何も起きていない。


すると、街道の奥の方に、何かの集団がこちらへ向かってくるのがわかった。


一早く見つけたパーティが2つその集団へ向けて走っていった。


遠見スキルで確認出来たが、ゴブリンのように見えた。


まだ、ハッキリとは見えないが、小柄で深緑色の肌をしている。

武器や防具も身に着けているようだ。


暫くすると20体程に見えたゴブリン集団は、先行した2つのパーティによって殲滅されたようだ。


その光景を見た3つのパーティが、出遅れたと判断したのか、慌てて前方へ走っていった。


そのすぐ後、先程のゴブリン集団が5~6個横に並んだ形で進んでくるのが見えた。


あの数は洒落にならない。案の定、最初に突撃した2つのパーティは、ゴブリン集団に飲み込まれた。


後から追いかけたパーティのうち1つは、門前に戻って来たが、人数が減っている気がする。


残りのパーティは、善戦むなしく飲み込まれてしまったのだろう。


わらわらと迫ってきたゴブリン集団が、プレイヤーの遠距離攻撃範囲に入ったところで、待機していたプレイヤーと一部のNPCが一斉に攻撃を開始する。


俺とタツヤも、端の小隊を目標に、攻撃を開始した。


ハッキリ言ってゴブリンは弱かった。俺の[石ころ]一投で、離散エフェクトで消えていく。


俺が3体、タツヤが2体倒したところで、殲滅が完了した。


若干、拍子抜けした雰囲気が漂う中、次のゴブリン集団が見えた。


数は先程より少し多いくらいか、だが、明らかに雰囲気が違った。


遠見スキルで良く見ると、前衛に盾持ちゴブリン、その後ろに弓持ちゴブリン、その後ろに片手剣を持った金属製の防具を着たゴブリンが各小隊に1体ずつ見えた。


どこかで、次は統率が取れているぞという声が聞こえた。俺も同じ意見だ。


ゴブリン集団が遠距離範囲内に入った瞬間、プレイヤー側からの遠距離攻撃が始まったが、盾持ちゴブリンのせいで先程のようには減らせなかった。


弓持ちゴブリンの射程範囲に入ると、弓持ちゴブリンから一斉に矢が放たれる。指揮をしているのは、片手剣持ちゴブリンのようだ。


プレイヤー側が一斉に突撃すると同時に、俺たちも端の小隊を目標とし、ゴブリン集団との距離を一気に詰めると、所詮はゴブリン、あっという間に殲滅となった。


次に攻めて来たのはオーク集団だった。数はゴブリン集団と変わらないようだが、大きさが違うので倍くらいに増えたように見える。


身長160~170cmで、丸ッとした身体に豚のような顔がついている。肌は肌色から灰色に近い感じで、武器防具もある程度装備していた。


苦戦が予想されるからか、プレイヤー側に焦りのような空気感が流れていた。


オーク集団が迫り、一斉に攻撃を開始した直後、街中からの支援攻撃がオーク集団を襲った。


迎撃用アイテムによる支援攻撃と思われるが、これが予想以上に効果的であり、門前のオーク集団を殲滅するのは容易くなった。


俺とタツヤは、支援攻撃の届かなかった端のオーク小隊を目標に突撃したが、流石に[石ころ]一投で倒せる相手ではなかった。


それでも、フォレストベア程の強さも無く、俺もタツヤも2~3発当てると離散エフェクトで消えていった。


オークは力任せに武器を振るってくるので、回避も楽であり、まだまだ余裕である。結果、オークは5体ずつ倒した。


プレイヤー側が中央の殲滅後、そのままの流れで左右へと攻撃を広げることで、それほどの被害を出さずに殲滅となった。


ここで、地域エリアチャットでの発言が若干気になった。


「おいおい、東の街道は襲って来ないんじゃなかったのかよ!ゴブリン集団にフルボッコされたぞ!」


もし、東の街道で襲われたなら、憤慨する気持ちはわかる。


デミアの東門はバリケードが設置されないとなっていたのは事実だ、が襲来が無いとは書かれていなかったか?


次のオーク集団が遠くに見えて来た時に、地域エリアチャットで緊急招集が掛かった。


「デミタスより職人の皆へ緊急招集だ。東門にもゴブリン集団が襲ってきておる!

イベントへ参加していない者も含め、迎撃用アイテムを持って、東門へ駆けつけて欲しい!

東門はバリケードが無い!余裕のある冒険者もこのチャットが聞こえていたら駆けつけて欲しい。以上。」


バリケードが無いだけで、襲来はあるって言う事か。これは益々、失敗させたい思惑が感じられる。


そうなると俄然反発したいと思ってしまう俺は、タツヤへ確認してみる。


「今の地域エリアチャット聞こえたよね?このまま東門に加勢したいけど、どうかな?」


「俺も、東門死守に回りたい。」


「よし、このまま外から東門目指そう。走るね!」


俺とタツヤは、北門の東から街の壁沿いを南下し、東門へ走った。


フォン♪という音声の後に、機械的な女性の声が聞こえる。


『ルーエの街の北門がモンスターに突破されました。』


残念なお知らせだった。人が少なかったのかもしれない。デミア北門と同じならばオーク集団だろう。


逆に、デミア東門はまだ大丈夫ということだ。そして、遠見スキルで見えて来た光景に絶句した。


ゴブリンの集団が東門を囲っているが、1000を超えているのではというくらいの数に見えた。


「たーちゃん、非常にヤバイ状況になってる!もう少し近付いて、門前と中の状況を確認したい。」


タツヤへ報告して、壁沿いから離れ、門の中が見える角度へ斜めに向かって走る。


大分近付き、遠見スキルで門前と中の様子が見える距離まで来たところで、善戦しているのがわかった。


門前では、重鎧に片手剣と中型盾を装備した人を中心に、何名かの前衛で支えている。


良く見ると、中心の人物はアイバン教官という名前が見えた。NPCが率先しているのか。


門の中は、職人と思われるプレイヤー達が迎撃用アイテムを使ってタイミング良く攻撃をしている。


号令をかけているのはデミタスのようだ。教官の後ろで指示を出している雰囲気がある。


職人プレイヤー達は、代わるがわる入れ替わり、支援攻撃を継続している。


「まだ、なんとか持ちそうな雰囲気だよ。数が多すぎるけど、俺たちも少しは役に立ってみようか!」


「うぃ。ゴブリンは雑魚。なんとかする。」


目の前のゴブリンは、門の方を見ており、こちらに気付いていないので、タツヤより一歩先を走りつつ、[飛苦無]を持ち必殺技ウェポンスキルを発動する。


「《武技ぶぎ》ワイドスロー」


手を横へ振り、水平一直線に飛苦無が分裂し、ゴブリン達へ次々と刺さると、10数匹纏めて離散エフェクトで消えていった。


俺はここで立ち止まり、タツヤが前に出て蹴りの必殺技ウェポンスキルを発動する。


「《武技ぶぎ》シャープ・ウィンド」


水平蹴りによって生じた何かが、ゴブリン集団を斬りつけ、数体消えていった。


「《武技ぶぎ》アース・クラッシャー」


更に、ゴブリン集団に迫ったタツヤが、右手で地面を殴ると、地面が爆発したように砕け散り、弾け飛んだ石が周囲のゴブリンを襲った。


タツヤが攻撃しているうちに、ゴブリン相手では過剰オーバーダメージとなる[分銅]を[炸裂丸さくれつがん]へ替え、左手に[ダクタイル=ダガー]を持つ。


ゴブリン集団の北側後方にいるゴブリンは、俺たちに気付き、こちらへ襲って来始めた。


タツヤが俺の前でドンと構え、タツヤへ襲ってくる180度前方のゴブリンはタツヤが殴る蹴るで倒す。


俺はタツヤの少し後ろから、回り込もうとしてきたゴブリンを優先的に[石ころ]と、間に合わない時は[飛苦無]で倒していく。


俺のWPウェポンポイントが溜まったので、[炸裂丸さくれつがん]を手に持ち、ゴブリン集団の頭上目掛けてワイドスローを放った。


5つに分裂した炸裂丸は、イメージ通りに2m程の間隔を空けたところで、地面へ向けて思いっ切り弾けた。


数m前方の広い範囲にダメージエフェクトが広がり、石つぶてを受けたゴブリン達は、一斉に離散エフェクトで消えていった。


「吃驚した。雑巾のその技いいね!」


必殺技ウェポンスキルじゃないと、上手く投げられないけどね。」


タツヤと会話しているうちに、ゴブリンが消えて空いた場所へ後ろのゴブリンが詰めてくる。

焼石に水かもしれないが、上限はきっとあるはずだ。


タツヤも、範囲攻撃の必殺技ウェポンスキルを密集地帯へ発動し、多くのゴブリンを倒していく。


しかし、徐々に俺たちへ向かってくるゴブリンの数が増えているようだ。


タツヤも捌ききれず、ダメージを受ける頻度が上がっている。

1発のダメージ量は少ないとは言っても、数を受ければいずれは死ぬ。


俺は、通常投擲の回転率を上げるため、右肩の後ろに[飛苦無とびくない](打)を装備し、HPの残りが半分を切ったタツヤへ声を掛ける。


「たーちゃん、俺の後ろで回復して!その間、持ちこたえる。」


タツヤが応答し、俺の後ろに回って[傷薬]で回復している間に、押し寄せて来たゴブリンを相手する。


「《武技ぶぎ》ワイドスロー」


横の範囲は変えず、迫ってくるゴブリンを対象に、[炸裂丸]で一掃する。


一掃した場所へ後詰めのゴブリンが押し寄せる中、左腰の[飛苦無]を3本掴み、右へ振りながら迫ってくるゴブリンを連続して倒す。


振った勢いのままの右手で右肩後ろの[飛苦無]を3本掴み、振り下ろし気味に左へ振りながらゴブリンを連続して倒し、左腰の[飛苦無]を3本掴む。


腕の振りの無駄を無くした投擲で、なるべく近付けないようにゴブリンを倒していくが、こちらを目標とするゴブリンがまだ増えているようだ。


[炸裂丸]のワイドスローで迫ってくるゴブリンを一掃し、押し戻すも、十数秒で押し返される。


ここでタツヤが完全回復し、俺の前へ出た。


「雑巾、おまたせ。」


「ちょっと、こっちに向かってくるゴブリンの範囲が広がって来ているから、このままだと囲まれると思う。

後ろに下がって引っ張るか、突っ込んで門前に合流するか・・・東の林へ逃げて最後尾を強襲とか?」


遠見スキルを使って最後尾を見てみると、かなりでかい個体が見えた。


「・・・オーガロード。」


「雑巾、何?」


「いや、最後尾見たら、オーガロードって名前のかなりでかいモンスターがいた。

あれはゴブリンいる状態だと厳しいと思う。」


「ふむ。・・・門前突っ込んでみる?」


「そうだね。どうせなら突っ込んでみようか。」


先ずは、[炸裂丸]でワイドスローを発動し、門前の北寄りを目掛けて斜めに突破口を開く。


タツヤが先陣を切り、俺たちに気付いたゴブリンを殴る蹴るしながら開いた道を進む。


俺はタツヤの後に続き、後ろから押し寄せてくるゴブリンを投擲で牽制する。


離散エフェクトまでの若干の時間があるので、よろめいたり、倒れたりしている間、後続の邪魔になるのは嬉しい誤算だった。


開いた道の左右から挟む形でゴブリンが迫って来るが、俺たちを認識したゴブリンを優先的に、タツヤが必殺技ウェポンスキルによってまとめて倒す。


俺たちに気付いていないゴブリンは門前を向いているため、俺たちへ背を向ける形だ。


開いた道が終わると、タツヤが背を向けているゴブリンへ、殴る蹴るで吹っ飛ばしながら道をこじ開け、俺たちを認識しやすい左側後方のゴブリンへ必殺技ウェポンスキルを発動する。


俺はWPウェポンポイントが溜まると、門前へ向けてワイドスローを発動し、後続への牽制をしつつタツヤの後へ続く。


門前へ大分近付いてきた。後1回必殺技ウェポンスキルを発動すれば、門前の人が普通に視認出来る距離だろう。


大分近付いたので、俺たちの攻撃を街からの攻撃と誤認してくれないかという淡い願いは叶うことなく、乱戦に近い状態となってしまった。


俺がタツヤへついていくのが遅れ、タツヤとの間にもゴブリンが入り込み、各々囲まれた状態になっている。


俺の投擲と短剣のWPウェポンポイントが溜まったが、どうするか考える。タツヤと俺の距離は5~6mはある。


俺の前方も含めた範囲を開けば、俺がタツヤへ追い着く可能性は高くなるが、タツヤ含めゴブリンに飲み込まれる可能性が上がってしまう。


タツヤの前に道を開けば、タツヤは確実に門前に辿り着くが、俺はゴブリンに飲み込まれるだろう。


そこに短剣の必殺技ウェポンスキルを併せての打開策は・・・と、ひとつ閃いた。


「俺のタイミングで、たーちゃんの前に必殺技ウェポンスキル使うから突っ込んで!俺も追い着くつもり!」


周りのゴブリンを短剣も使って倒しながら、タツヤへ声を掛けた。


「追い着くって、離れてる。・・・わかった。

雑巾なら、死ぬ気なら死ぬっていう。」


「そういうこと。まぁ、ダメだったら死に戻って街着くし。」


「うぃ。まかせた。」


俺は、タツヤとの間に居るゴブリンを見極める。邪魔なのは3体、左右を投擲で倒し、4m程先にいる1体を残した。


背後から襲ってきたゴブリンを短剣で倒し、更に迫っているゴブリンを投擲で牽制したところで、必殺技ウェポンスキルを発動する。


「《武技ぶぎ》ワイドスロー」


タツヤの前方から門前北寄りを意識イメージして、直線状に発動させる。

広範囲にダメージエフェクトが出ている最中に、短剣の必殺技ウェポンスキルを発動する。


「《武技ぶぎ》ファストカット」


先程残した邪魔なゴブリン1体を対象とし発動すると、俊敏な動きで周りのゴブリンを掻い潜りながら一気に接近し、短剣を斬り下げる。


その勢いが残っているうちにゴブリンの頭上を越えるようにジャンプすると、前方宙返りをして地面へ綺麗に着地した。


ジャンプ後の補正までは出来たら良いなという考えだったが、全て予想通りの方向へ進み、タツヤとの距離を2mへ詰めた。


タツヤは既に前方へ突撃している。俺も離されないように、直ぐ後へ続く。


開いた道の終わりまで来ると、門前まで10m程といったところであった。


門前の人達もこちらに気付いているようで、援護してくれるような空気感があった。


門前の盾持ちの人たちが、俺たちのいる方向以外を固めると、街中からの支援攻撃が俺たちの前へ展開された。


ゴブリンの層が薄くなったところをタツヤが一気に攻め、俺も後続へ牽制しつつタツヤへ続いて、門前へ到達する事が出来た。


「後方からの急襲助かったぞ!・・・ってタツヤと雑巾か!?いやぁ、ほんと助かったぞ。

ほかの急襲者は・・・・生き残りはお前たちだけか・・・。」


アイバン教官がゴブリンを抑えつつ、俺たちに向かって声を掛けて来たが、若干悲しそうな雰囲気を出している。


「ほほぅ、お前さんだったか。一旦街へ入るのじゃ!」


デミタスに声を掛けられ、俺とタツヤはそのまま街中へ入り、各々[傷薬]で回復を始める。



長くなったので、中途半端なところで区切ることに。

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