21話:ステラの売り上げ結果
土曜日の中編です
※2017/10/07 会話文中の“(笑)”等の感情表現文字を削除いたしました。
-土曜日 続き-
両親と一緒に、ファミレスでモーニングを済ませる。
家に帰宅し、洗濯物を干した後、両親はいつも通りショッピングに出かけ、俺は10時半にSSSOへログインする。
「雑巾、おは。」
タツヤは既にログインしていたようであり、PTチャットで挨拶される。
「おはよう、たーちゃん。
・・・えっと、ステラもインしているみたいだね。PT誘うね。」
「うぃ。」
ステラへPT申請を飛ばすと、直ぐに承諾されたようだ。
「ステラさん、おはよう。」「ステラ、おは。」
「おはようございます!
あの、お二人に、素材の売り上げの件でお話がありますが、お時間は大丈夫ですか?」
「うぃ。」「大丈夫です。」
「それでは、頂いた素材ですが、全て防具にしました。
その防具のうち、半分が競売で売れました。
あ、売ったのは、競売方式ではなくて、今主流の即決方式です。
作成に必要な素材の相場合計と、売った防具の金額で割合を計算してみましたが、プラス30%でした。」
「おお。儲けが出たのですね。良かった。」
「はい!半分売れましたので、素材の半分のお金を渡したいと思います。
えっと、詳細はこちらにまとめておきましたので、確認してもらえますか?」
広場で合流したステラがこちらにウィンドウを向けると、売り上げの詳細情報が記されていた。
[フォレストベアの革]37枚×@600×1.3=28,860gem
[フォレストベアの爪]34個×@550×1.3=24,310gem
[森林鹿の革]30枚×@140×1.3=5,460gem
[森林鹿の角]12本×@200×1.3=3,120gem
合計=61,750gem
「結構な金額になるね。ステラさんの方は赤字になったりはしていない?」
「あ、はい、大丈夫です。消耗品を含めても、結構な黒字になっています。
あの・・・スキル上げも順調で、申し訳ないくらいです。」
一般的に、生産のスキル上げは、散財しつつ如何に赤字を減らすかというケースが多い。
運良く、需要と重なり、供給過多ではないタイミングというのは理想とも言える。
「それでは、たーちゃんと半分ずつ貰えますか?」
「はい!お渡ししますね。」
ステラから、俺、タツヤの順に、30,875gemがトレードされた。
「ありがとう。いきなりお金持ちだ!」
「あり。」
「いえいえ。こちらこそ、ありがとうございます。
あのぉ、まだ売れていない防具について、相談があるのですけど・・・。」
「ん?なんでしょう?」
「実は、裁縫スキルが上がって、基本の生産品の派生パターンが作れるようになりました。」
「派生パターン?申し訳ない、ちょっと理解出来ないのだけど?」
「え、えっと、例えばレザートップスを作成する時に、決まっている追加素材を併せて作成することで、防御力の高いものが作れます。
パターンといいますか、レシピは決まっているのですけど、通常の防具よりも良い物や特化したものが作れます。」
「ふむふむ。なるほど。そういうカスタマイズ的な詳細レシピが増えるのですね。」
「は、はい!そういう感じなのです。」
「それで、試しにカスタマイズした防具を作ってみた、という所ですね?」
「あ・・・その通りです。よかったら、タツヤさんに装備してもらえたらと。
ノーマルの試作品を渡してしまっていますので、もう少し良い装備品をお渡ししたいです。」
「うんうん。良いんじゃないかな?
それの作成に必要な分の素材は、残りの素材から差し引いて貰えば良いし。
ちなみに、どの部位がありますか?」
「い、一式です。」
「一式・・・とは、気合入っていますねぇ。
たーちゃんも、それでいいかな?」
「うぃ。手以外貰う。」
「手・・・手袋は何か別の物を?」
「あー、そういえば、熊からドロップした革手袋を装備していたね。」
「え!?それって、[森林熊の革手袋]ですか?」
「うぃ。それ。」
「ええ!?競売でも見た事のない、装備品です。
その、[森林熊の革手袋]を素材としたレシピがありますけど・・・消失は怖いですね。」
「うーん、素材にするくらいだから、それより強くなるのかな?」
「あ、はい。強化系レシピですので、期待は出来ると思います。」
「たーちゃん、どうする?
今の手袋を素材として、グレードアップに挑戦って感じだけど、消失の可能性はあるよ。」
「挑戦で。失敗したら普通のでいい。」
「うんうん。そう言うと思ったよ。」
「では、タツヤさん、[森林熊の革手袋]を頂けますか?
手袋以外の一式は、お渡ししておきますね!」
「ほい。」
タツヤとステラがトレードして、防具を交換する。
「では、さっそく、手袋を作ってきます!
少々お待ちください。」
「いてら~。」「がんばってね!」
ステラがターッと小走りで裁縫ギルドへ向かっていった。
「雑巾、ステラの防具装備したけど、結構強い。」
「おおー。見た目はあまり変わらないんだねぇ。」
「今までの装備どうしよっか?雑巾装備する?」
「あ、そうだね。こっちはお古で十分助かる。」
「ほい。」
タツヤから、手袋以外の装備一式を受け取り、装備する。
「装備してみたよ。少し強そうに見えるかな?」
「うーん・・・、腹出てるので台無し。」
「ぐふっ。」
「で、で、出来ましたー!!!」
「「おお!」」
「えっと、性能は、物理防御10、魔法防御6、突属性の10補正です。」
「えっ?それって、かなり強化されているのでは??」
「はい!すごいです!」
嬉々として小走りしてきたステラが、タツヤへ革手袋を渡す。
「装備した。ごつくなった。」
「うんうん。爪が凶悪な雰囲気だね。」
「あっ、ぞうき・・・えっと、ぞうさんとお呼びしてもいいですか?」
「え?あぁ、呼びやすい呼び方でいいですよ。」
「はい、それではぞうさんで。ぞうさんに手袋お渡ししますね。」
ステラから、[フォレストベア=レザーグローブ]を渡される。
「手袋装備したけど、指から掌も分厚い革で出来ているんだね・・・。」
「あの、タツヤさん用に、防御特化のレシピで作った物です。
ぞうさんは、その手袋では武器が持ち難かったりしますか?」
「一応、短剣と投擲を扱っているんだよね。
薄い革の方が助かるかも。」
「なるほど、確か素早さか器用さ特化の物が薄かったと思います。
今から作ってきても良いですか?」
「助かるけど、素材は大丈夫?」
「はい、さっき競売で買った分で足りると思います。
行ってきますので、少々お待ちください。」
言うが早いか、ステラがターッと小走りで去っていく。
「たーちゃん、この後すぐに狩り行く?」
「うぃ。夕方まで暇。」
「おっけー。じゃぁ、狩りの準備しちゃおう。」
「うぃ。」
俺は、倉庫経由で急ぎ鍛冶ギルドへ行き、[飛苦無]26本と、[炸裂丸]17個を作り、倉庫へ戻って狩りの準備を整える。
「ぞうさん、こちらの手袋はどうでしょうか?」
ステラから、革手袋を受け取り、早速装備して感触を確かめてみる。
「ありがとう・・・おお!これは良いね。今までのより扱いやすいよ。」
「良かったです。」
「じゃぁ、今日貰った俺とたーちゃんの装備で、残りの素材はチャラにしちゃってね。
それと、フォレストベア素材は、まだ使うのかな?」
「え!?残りの素材全部と渡した装備では、ぜんぜん釣り合いません!わたしが貰い過ぎです。
あ、後でちゃんと計算して清算します!
それと、フォレストベアの素材ですけど、特化レシピの関係もあって、まだまだ沢山欲しいです。」
「うーん、一応了解。今後もヨロシクという意味も含めてのチャラでいいんだけどね。
じゃぁ、今日もフォレストベア狩りということで、張り切って狩りまくろう!たーちゃん、ヨロシク!」
「うぃ。狩りまくる。」
ここでステラと別れ、デミアの街の東門から南東の森の池へタツヤと向かう。
道中の森林鹿は、さくさくっと美味しくいただき、池へ到着したところで、一度離席休憩を取った。
豆情報:[森林熊=レザーグローブ] 森林熊の革手袋をベースに、更に森林熊の革と爪を使い、強化した一品。物理特化している。