16話:ペア狩りの実力確認
日曜日の前編です
投稿が遅れ申し訳ありません。
週1回は守るように努力していきます。
-日曜日-
俺は朝8時に目が覚めると、タツヤからインしているとのメッセージが届いていることに気付く。
顔を洗って、眠気覚ましに珈琲を飲んでから、SSSOへログインする。
「たーちゃん、おはよう。朝早いね。」
「おはよう。」
「早速だけど、熊との現状見たいと思うんだけど、いいかな?」
「うぃ。どこまで苦戦するか知りたい。」
「じゃぁ、良い場所知ってるから、そこへ向かおう。」
「おお。行く。」
タツヤとデミアの東門から出て、街道沿いに東へ進んでから南の森へ入っていく。
「好戦的は森林狼とフォレストビーくらい。稀にでっかい猪や熊いると思う。」
「うぃ。」
「非好戦的は森林鹿だけかも。美味しいMOBだけど、仲間同調するからね。」
「わかった。」
「前方に好戦的。えっと、・・・森林狼だ。」
「OK。」
森林狼も、フォレストビーも相手からの奇襲さえ防げば、脅威にならない。
森林鹿も、3匹までなら構わず狩っている。4匹以上まとまっている場面には遭遇しなかった。
「鹿強くないけど、戦利品いい。」
「うんうん。美味しいMOBだよね。店(NPC)売りの値段も良い感じだよ。」
「おおー。」
でっかい猪等に遭遇することもなく、30分程で大きな池へ到着する。
「この池の先に、熊の群生地っぽい所があるけど、休憩必要?」
「いや。大丈夫。」
「おっけー。じゃぁ、近くまで進もう。」
池に沿って歩き、熊の群生地手前で戦闘する場所を考える。
大きな池の周りは、1~2m程は木がない。
但し、このスペースでは戦闘に不利なので、もう少し開けている場所を探す。
池の周り4m程木が無い場所があり、それが6m程続いていたので、一旦ここを戦闘場所とする。
「たーちゃん、ここなら動けそうかな?」
「うぃ。大丈夫。」
「じゃぁ、釣ってくるね。」
俺は少しだけ森の奥へ入ると、察知スキルに反応が出る。フォレストベアだ。
視界は辛うじて通るが、木々が邪魔して投擲を当てるのは難しそうだ。
仕方ないので、試しにフォレストベア近くの当てられる木に向けて投擲する。
ゴンッという音がなり、熊が音の方向へ動いてくれた。
熊が投擲を当てられる位置に出てきたので、投げようとした所、熊が俺の事を認識したようで、こちらへ向かってきた。
慌ててタツヤの元へ走る。
「1匹釣った!」
「うぃ。」
タツヤの元へ走って戻り、熊を迎え撃つ。
「《技技》挑発」
タツヤが挑発スキルを使い、敵視を取る。
「《武技》ダブルストレート」
「《武技》ダブルミドル」
タツヤが熊の攻撃を躱しつつ、必殺技を発動した。
俺も、[分銅]を持って、必殺技を繰り出す。
「《武技》ダブルスロー」
熊の頭に直撃し、大き目のダメージエフェクトと共に熊の頭が揺れる。
俺が熊の敵視を取ったのか、標的が俺になった。
タツヤが熊の後ろから蹴り殴り蹴りと入れ、挑発を使い敵視を奪い取る。
熊の標的がタツヤへ向いた瞬間、熊にダッシュで近付き落ちていた[分銅]を拾いつつ、短剣で切り付ける。
離れ際に、[石ころ]を至近距離から投げつけ、距離を取る。
俺の方は、WPを稼ぐため、[石ころ]を投げまくる。
WPが溜まったら、[分銅]で必殺技を使い、ダメージを与える。
俺の必殺技の後に、熊の敵視を取ってしまうが、すかさずタツヤが敵視を奪い取っていく。
[分銅]は限りがあるのでなるべく回収し、熊に近付いた時は短剣で攻撃を入れる。
「グゴォォォォッ!」
熊が突然吠えた。俺の方に突進してくるかと警戒すると、熊はタツヤへ猛然と両腕を振り回した。
タツヤは、初撃は回避したが、次から次へと振られる腕に完全には回避出来ず、HPがどんどん減っていく。
俺は慌てて、[石ころ]を投げる。まだWPが溜まっていないので、必殺技は使えない。
このままではタツヤがヤバイと、俺は[石ころ]を投げながら熊へダッシュする。
タツヤは既に瀕死の状態で、後1発貰ったら死亡してしまう。
俺は、タツヤへ振り下ろされる熊の右腕に向かって短剣を構え突撃する。
熊の手に短剣が当たったが、そのまま振り抜き俺を身体ごと吹き飛ばす。
俺の身体に鈍痛が走り、HPが7割程持っていかれた。
タツヤが最後の抵抗と攻撃をしたようだが、熊よりも先にタツヤが倒れた。
俺も最後の抵抗と短剣を構え、[石ころ]を投げるが、熊の突進による体当たりの一撃で、そのまま倒れてしまう。
お互い、初の死亡である。
死亡した状態では、最後に寄った街へ戻るか、蘇生を受けるまで待つか選べるようだ。
30分待っても蘇生されない場合は、強制で街へ戻る事になるのか、カウンターが減っている。
「たーちゃん、ごめん。上手くフォローできなかった。」
「いや。吠えた後の攻撃が痛かった。」
死亡した状態でもPTチャットは使えるようだ。
「とりあえず、街に戻ろうか?」
「うぃ。戻る。」
街へ戻るを選ぶと、デミアの街の広場に出ていた。
「雑巾、死んだ時のペナルティってある?」
「公式の情報だと、装備品の耐久が減るのと、更に1時間以内に死亡すると一時的にステータスやスキルLvが10%下がる、だったはず。」
「ふむふむ。」
「短時間に連続で死ぬと、どんどん下がるみたいだね。回復に時間が掛かるっぽい。」
「金が減ったり、装備やアイテム無くなったりはしない?」
「しないと思う。装備は耐久0になったら壊れるとは思うけど。」
「了解。」
「で、たーちゃん、熊は狩れそうだと思う?」
「んー。初めて戦った時より、だいぶ楽になってる。
雑巾の攻撃力もあって、吠えるまでの時間短くなってた。
吠えた後、どうするかが問題。」
「そこだよね。今だと畳み掛けるしか無いんだけど。」
「むぅ。吠える前にWP溜めておく感じ?」
「必殺技だけで倒せるなら・・・あぁ、[分銅]乱発すればいけるのかも?」
「分銅?」
「必殺技使うとき、[石ころ]から[分銅]に替えてた。攻撃力3倍近くあるよ。」
「なる。それでいけるかも?」
ということで、装備品の修理をし、先程の戦利品を店(NPC)売りしてから、もう一度南東の森の池へ向かう。
道中、森林狼と森林鹿を狩って、WPは溜まっている。
先程の戦闘場所まで来たが、戦っていたフォレストベアは居ないようだ。
準備万端で、フォレストベアを1匹釣ってくる。
先程の戦闘と変わらず、順調に戦闘が進む。
「そろそろ。WP温存。」
「おっけー。」
タツヤの声に答え、必殺技を使わずに、攻撃を続ける。
「グゴォォォォッ!」
熊が吠えた。標的は、タツヤのままだ。
「《武技》ダブルスロー」
熊がタツヤへ両腕を振り回した瞬間、熊の頭へ必殺技を入れた。
熊が俺の方を向き、標的を変えた。
「《武技》ダブルストレート、 《武技》ダブルミドル」
すかさずタツヤが必殺技を熊へ連続で当てると、熊の標的がタツヤへ変わった。
この僅かな間だが、熊はまともな攻撃が出来ていない。
狙っていたわけではないが、標的回しはかなり有効だ。
必殺技も使い終わり、ここからは、俺たちが倒れる前に熊を倒しきるしかない。
俺は熊の敵視を奪い取るつもりで、[分銅]を連続で投げる。
タツヤは、熊の猛攻をなんとか耐えている。
3回当てたところで、熊の標的が俺へ変わった。
隙をついてタツヤが攻撃するが、熊はまだ倒れない。
熊が俺に向けて突進の姿勢になったところを、タツヤが挑発スキルで敵視を取っていく。
挑発分の敵視を奪い取るのは厳しいと若干焦りつつ、俺は[分銅]を投げる。
ここで熊が横に倒れ、離散エフェクトで消えていった。
「よしっ!」
「ぐっじょぶ。」
俺とタツヤから声が出て、俺はすぐさま先程まで熊が立っていた場所へ行き、落ちている[分銅]を3個拾う。
2個ロストしたかと思っていると、戦利品のウィンドウが現れた。
[フォレストベアの革]x2、[フォレストベアの爪]x2、[フォレストベアの肉]x2で、ここからランダム分配だが、フォレストベアの素材はPCの需要がありそうなので、全てタツヤに渡しておくことにした。
俺は近くにあった倒木に腰掛、癖になりつつある察知スキルで周辺を警戒する。
「周辺に敵なし。熊なんとか倒せたね。」
「うぃ。結構辛い。」
「吠えた後、標的回しで熊の攻撃減ったから良かったけど、出来れば必殺技だけで倒せるようになりたいね。」
「うぃ。そうなったら余裕。でも、まだ無理かな。」
「だよね。ちょっと休憩した後、もう1回いってみる?」
「おけ。一旦離席にする。」
「15分後で。」
俺は離席状態にすると、集中していたせいか若干疲れていた。
トイレを済ませ、冷たい緑茶で喉を潤し、さらに顔を洗ってさっぱりする。
身体を軽く伸ばし、SSSOへ戻った。
タツヤは既に戻っていたので、先程と同じ感じでということで、熊を1匹釣ってくる。
熊が吠えるまではタツヤに標的を固定して、安定している。
吠えた後は、俺の必殺技、タツヤの必殺技x2、俺の投擲連打、タツヤの挑発、俺の投擲連打という流れで標的回しも上手くハマり、無事倒すことが出来た。
離席状態にせず、その場で数分休憩した後、熊を釣ってくる。
熊が吠えるまでは順調に進んだが、吠えた後、タツヤの手数が多かったのか、俺が敵視を奪えず、タツヤのHPが削られていった。
なんとか標的を俺に向かせることが出来、1発ダメージを貰ってしまったが、タツヤの連続攻撃で倒す事が出来た。
「ふぅ。周囲おっけー。回復しておこう。」
「おけ。」
「熊狩れる事わかったけど、30分で2匹かぁ。格上だから仕方ないけどねぇ。」
「効率は・・・悪くない。スキル凄い上がってる。」
「えっ?マジで?・・・」
タツヤに言われて、ステータスウィンドウを見ると、想像以上にスキルLvが上がっていた。
「ほんとだ、俺も凄い上がってる。」
「雑巾、一旦街いい?朝飯食ってないから、昼食う。」
「11時半近くか、街戻るのに30分くらいだから丁度昼だね。一旦戻ろう。」
「ほい。」
帰り道、森林鹿は美味しく頂き、デミアの街に着く。
「雑巾ごめん。WCアラート。離席のまま昼食う。」
「おっけー。俺も離席で昼食っちゃうね。」
離席状態は15分無敵というだけで、街中等の安全な場所であれば、15分を超えて離席していも問題はない。
昼は何を食べようかと考えながら、俺も離席状態とする。