15話:詐欺疑惑の解決
土曜日後編です
-土曜日 続き-
デミア南東の森のソロ狩りから戻り、ログアウトした雑巾。
SSSOからログアウトした俺は、身体が凝った感じがしていたので軽く伸ばす。
その後、情報サイトを見ようと思いPC用の椅子に座ったが、急に睡魔が襲ってきたので、これはいかんとベッドへ横になり、昼寝ならぬ夕寝をしてしまう。
18時半に目が覚めた。眠気は大分取れたようだ。
夕食と風呂を済ませ、情報サイトに軽く目を通した後、20時過ぎにSSSOへログインする。
忘れていた装備品の修理と、消費した[傷薬]の買い込みをしていると、地域チャットによる職人さんの呼び声の中に、“[フォレストベアの革]3枚で靴を作ります”という声があった。
タツヤの詐欺疑惑となっている人の可能性があるかなと、声の主、ステラ=ガーネットというプレイヤーを探す。
各種ギルド寄りの広場の片隅に、声の主の職人さんが居た。
声と名前から察した通り女性プレイヤーだ。
少し様子を見ていると、全身重鎧の強そうな恰好をした男性プレイヤーがその職人さんに話しかけ、暫くするとトレードしているようだった。
そのまま交渉成立したのか、お互いお礼を言ような雰囲気で強そうな恰好をした男性プレイヤーが離れていった。
詐欺師ではないようだ。
タツヤが会った人の可能性は低いかもしれないと思いながらも、一応確認してみようと思う。
「すみません。少々お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「はーい。靴の依頼ですか?」
「いえ、お聞きしたい事がありまして。
先日、フォレストベアの革を受け取った後、靴を渡せなかったといった事に心当たりありますか?」
「え!あの時の・・・人ではないですよね。心当たりはありますけど?」
「そのプレイヤーの名前とか覚えていませんか?」
「名前はわかりません。初めてのお客さんでトレード前に名前とか確認しなくて・・・。
でも、容姿は憶えてます!」
「なるほど、詐欺とかでは無さそうですね。
その心当たりの方の可能性がある人とフレンドですが、連絡取ってみましょうか?」
「あっ、お願いします!その人なら靴を渡したいので。
トレードした後落ちちゃって暫く入れなかったので・・・詐欺と思われても仕方ないです。」
「わかりました。ちょっと連絡取ってみますね。」
タツヤへ“例の職人さんらしき人を発見。靴渡したいらしいけど、イン出来そう?”とメッセージを送る。
直ぐにタツヤから返事が来て、ちょうど家に着いたところで、10分ちょっとで入れるとのこと。
「あと10分ちょっとでログインできると返事がありました。お時間は平気ですか?」
「あ、はい、大丈夫です。何かすみません。」
「いえいえ、お気になさらず。来るまでその辺で少し待ちますね。」
俺は、ステータスやスキルの確認をしつつ、タツヤが来るのを待つ。
ステラ=ガーネットを見ると、呼び掛けを止めて待っているようだ。
ステラの容姿は、身長165㎝程、髪は赤と橙色の中間といった色で、前髪は真っ直ぐ下し、もみあげ部分は長く、後ろは高い位置で纏めたポニーテールで先端は肩辺りまで垂れている。
小顔で目は青色。パッと見は可愛いタイプの容姿と思っていたが、よく見ると美人タイプ寄りに整っていた。
服装は、いかにも職人さんと分かるような、長袖長ズボンに靴と、作業用エプロンをしている。
地味な色合いになっているのは、素材の色のままで染色はまだ出来ないのだろうと思われる。
ふと、タツヤの方は容姿を覚えているのだろうかという疑問が浮かんだ。
まぁ、会えばわかることかと考えることをやめる。
十数分後、タツヤがログインした。
PTチャットで、広場に居ることを伝えると、直ぐに来た。
タツヤとステラさんが向かい合うと、ステラさんがタツヤへトレード申請をしたようだ。
お互い容姿は憶えていたようである。
数日掛かったが、無事トレードが成立したことになる。
「ども。」
「たーちゃん、PTチャットになってる。一般チャットに切り替えて。」
タツヤはデフォルトのPTチャットのままで話していたので、指摘してチャットを切り替えてもらう。
「ども。」
「あの時はトレードしたあと落ちちゃってすみませんでした。」
「無事靴が貰えたから大丈夫。」
「本当に、すみませんでした・・・・。
生産スキル上げに[フォレストベア=レザーブーツ]がちょうど良さそうで、革だけ手に入らなくてダメ元で呼び掛けていました。
その時の初めてのお客さんで、説明もする前にトレード申請してしまって。
革を渡された瞬間、停電のためネット接続が切れました。
1時間後にインしたのですけど、タツヤさんいなくて。名前も確認していなくて。
その後も時間ある時に大声していたのですけど、タツヤさん見つからずでした。」
なるほど、停電による切断、不慮の切断時は街中だと強制ログアウトされるってことかもしれない。
VR上、遅延しての故意の切断は協力者が居れば可能かもしれないが、瞬時には無理があるので、そういう措置になっていると考えられる。
「なるほど、停電による切断だったのですね。
そういえば、[フォレストベアの革]を持っている人って、結構いたのですか?」
「はい、タツヤさんいれて今日までで6人いました。」
「ほほぉ。それでスキルは良い感じに上がっていると?」
「はい!予想的中で凄く効率いいです!
本当はもっと欲しいのですけど、競売に出品されている数が少なく、あるのは通常の3倍以上のだけで。」
「なるほど・・・。協力してあげたい気持ちもあるけど、フォレストベアは強すぎるので、厳しいかな。」
「うぃ。まだ厳しい。」
「あっ、協力なんてとんでもないです!お気持ちだけでうれしいです。」
「せめて、たーちゃんの防具が強くなれば、狩れないこともないかな?」
「うーん、攻撃力も、もっと欲しい。」
「攻撃力は、散財すれば俺の方で少しは補えるかも?」
「あ、あの、防具ですけど、[フォレストベア=レザートップス]と[フォレストベア=レザーボトムス]が試作品としてあります。
試しに作ってみたのですけど、まだブーツの方が効率が良さそうで・・・。
今回のお詫びに、トップスとボトムスを受け取ってください!」
「いや、それは貰いすぎ。」
「だね。ちなみに、トップスとボトムスに必要な革は何枚ずつですか?」
「はい、えっと、トップスが6枚、ボトムスが4枚です。それ以外にもいくつかの材料を使いますが・・・。」
「もう一つ質問、ブーツでスキルを上げた後は、トップスやボトムスで上げていくことになります?」
「材料が揃うなら、それが一番効率良いと考えています。」
「ふむふむ。そうしたら、こういう提案はどうでしょう。
俺とタツヤを信用してもらうことが大前提として、今の俺たちではフォレストベアを狩るのは荷が重い。
装備が充実すれば狩る時期を早める事が出来るので、ステラさんからトップスとボトムスをタツヤが貰う。
俺たちはなるべく早く、フォレストベアを狩れるように努力する。
無事狩る事が出来るようになったら、革をステラさんに渡す。先ずはトップスとボトムス分の10枚はタダで。
その後は交渉次第だけど、作った防具を売った代金から革代を貰うとかで。」
「一応、問題点としては、俺たちが直ぐに狩れるようにならないとスキル上げの時期を過ぎてしまうこと。
後、革を渡さないという可能性もあること。その時は大声でこいつら詐欺ですって言ってくれて良いです。
ステラさん、どうでしょうか?」
「えっと、わたしがタツヤさんへお詫びとして渡すので、見返りが無かったとしても問題ありません!
もしも、革を提供して貰えるなら、その時はとっても嬉しいですけど・・・大丈夫です。」
「たーちゃんも、今の話でいい?」
「うぃ。早く強くなるのは望むとこ。」
「じゃぁ、交渉成立ってことで。ステラさん、フレンド登録してもらえますか?」
「あ、はい!お願いします。」
俺とタツヤの両方で、ステラ=ガーネットとフレンド登録する。
そして、ステラからタツヤへトップスとボトムスがトレードされ、お互いお礼を言いつつ、タツヤはログアウトする。
タツヤは仕事から帰宅した直後だったので、これから夕食と風呂とのことだった。
俺はステラに提案した話を有言実行するべく、フォレストベア狩りの準備をする。
[傷薬]を多めに買い、競売所でポーションの値段を見る。
ポーションの種類は、コモン、アンコモン、レア、ハイレア、スーパーレア、ウルトラレアという等級になっていた。
どこぞのカードゲームのレアリティのような等級の付け方だが、[コモンポーション]で最安値1,000gemと手が出なかった。
先ずは、今の現状でどこまでやれるのかを確認しておきたいと思っている。
もちろん、最初に戦った時とはスキルもステータスも装備も違っているので、1匹相手なら良い勝負が出来る気がしている。
俺の準備は終わったので、タツヤがログインするまで、訓練場で短剣の練習をして待つとする。
30分後、タツヤからメッセージが届いた。
“ごめん、家庭の事情で、今日はログイン出来なくなった。明日朝からやる。”
家庭の事情なら仕方ない、俺も明日に備え早めに寝ようと思い、ログアウトする。
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雑巾:Lv9 所持金:1,255→875gem
プレイ時間:1時間50分
総プレイ時間:1日13時間38分
筋力27、体力23、知力12
精神力12、持久力27、素早さ25
器用さ29、運11、道徳10
投擲Lv32、短剣Lv23、革防具Lv30
採掘Lv16、鍛冶Lv11
遠見Lv12、察知Lv25
強化1:筋力Lv16、素早Lv18、器用Lv20
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