遺書
福田綾は自殺することにした
社内イジメを苦にしてのことである
せっかく死ぬのであるからイジメ犯罪者の罪状をしっかりと紙に書いた
何度も書き直して立派な遺書ができた
これでメディアも取り上げてくれるし親も慰謝料がいっぱい取れるだろう
イジメ連中はみんな首になるだろうし会社はマスコミから叩かれるだろう
遺書を机の上に置いた
パソコンやスマホの動画や画像は全て消去してあるし
何も思い残すことはなかった
ただ思い出すのは高校生の頃に好きだった隆くんのことだけだった
でもそれはもう10年も前のことだ
「結局カレシもできなかったなあ」
綾はそんなことを思って灯油をかぶり火を点けた
火は燃え広がって綾の部屋も遺書も全部燃やしてしまった