キーパーソン登場
パチンッ!
オルフィークが指を一つ軽く鳴らしただけで、彼の目の前に荘厳な円卓が現れ、各席に地球から運んできた魂が配置された。
彼を中心に左右に五体ずつ並んだ魂は、椅子の上で揺らめき静かにその時が来るのを待っていた。
オルフィークは目を閉じ意識を集中すると、神語での呪文詠唱を始めた。その力強い詠唱が続くにつれ、魂が徐々にその形を変貌させていく。
そしてオルフィークが大きく手を広げ、より一層強く神語を放った瞬間、10体の魂は地球での器を完全に取り戻した。
その10体の魂はなんと全て人間であった。
これは、偶然かーーーー?
オルフィークは魂が地球での器を取り戻した、その姿を見て一瞬目を疑った。
しかし管理者がテミスであることを思い出すと、ようやく合点がいった。
そう、彼女は法と秩序の女神なのだ。おそらく転生ラインを種別に並べ替えたに違いない。
「テミスめ、余計な事を……」
出来れば動植物など、違う個体もオルフィークとしては欲しい所だった。しかし今更後悔しても仕方がない。人間は人間にしか転生しないから、必要であればもう一度魂を持ってくるしかないだろう。
しかし、高い知能をもつ生命体である、人間のクオリティを上げるのが一番の難題であり、オルフィークはむしろついていたのだと前向きに考えた。
そしてーーーー
パチンッ!
再びオルフィークが指を鳴らすと、円卓に座した10人の転生者が静かに目を開けた。
「え?」
「うお⁉︎」
「ひぃぃ⁉︎」
「な、何なの?ここは、え、天国?」
など、状況を全く理解できず、各10人が様々な驚きの第一声を上げる。
しかし即座にオルフィークは片手をあげ、それを制した。
そしてオルフィークは素直に、そして率直に彼らにこう述べた。
「私は二代目全能神オルフィーク。選ばれし10人の転生者よ、非常に勝手な願いとなるが、汝らにはこれから異世界へと転生してもらいたい」
神は嘘を付けない。余計な事は言わなければいいのだが、意識の共有が必要な異世界転生には魂にもそれを納得してもらわなければならない。
その為にこの場を用意したのだ。おそらく様々な質問、要求がなされるに違いない。
如何にこちらが絶対上位の存在だとしても、威圧的な態度では成功は望むべくもない。
「そなたたちは地球でその生命を失い、今は再び地球の器へ転生する準備をしていた魂の状態である。しかしある事情で次の転生先を、地球ではなく私が創った異世界にしてもらいたいのだ」
転生者たちはオルフィークの言葉を、動揺する事なく冷静に受け止めていた。彼が先ほど片手で転生者のざわつきを制した時、胆魂の神術を施したからだ。
だから誰もオルフィークの言葉に口を挟まず、静かに耳を傾けているのだ。当然、自分たちが今置かれている状況を理解し始めていることも、彼らの態度に作用している。
それはここが神界であり、目の前にいるのがその頂点に君臨する全能神であるという事実だ。
「そして、異世界への転生は、転生する魂が
それに同意する必要があるのだ。だからそれを確認する為に、我は汝らにかりそめの器を与え、この円卓に招来したというのがここまでの経緯である」
パチンッ!
オルフィークは転生者を見渡し、皆が理解したことを読み取ると胆魂の神術を解いた。
彼らが素の状態で納得しなければ、意識を共有することができないのである。
「い、い、い、い、異世界転生、マ、マ、マ、マジキタコレーーーーー‼︎‼︎」
円卓を取り囲む転生者のなかで、最初に声を上げたのは秦野ヒロユキ。
彼が転生者全員に然るべき転生条件を与える、その鍵を握る人物となる。