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君を忘れじ【三原則×検死官】  作者: 越智屋ノマ@『今世はあえての悪嫁です』7/7配信開始
Chapter 4.心の在り処(ありか)

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【 Section 32.“マリア”とクリス(中編) 】

《1998年11月14日 3:20PM エルハイト市内 某喫茶店》


 マリアの胸は、春の陽みたいにあたたかかった。

 人間クリスが、ロボットの“心”を信じてくれたから。

「マリア……信じてくれるの?」

「もちろんよ」

 マリアが強くうなずくと、クリスの表情かおも、みるみるうちに明るくなった。

「ありがとう! マリアに話してよかったよ」

 手つかずだったケーキと紅茶を、クリスはすごい勢いで食べ始めた。子供らしいその仕草を見て、マリアはますます幸せになった。

 ――この子に会えて、本当に良かった。

 クリスはとっても優しくて、心がきれいな子だ。……だから、

「ねぇ、クリス? 盗んだお金で、あなたは何をしようとしたの?」

 こんな良い子が他人ひとのお金を取るなんて、マリアには信じられなかった。

 空っぽになったケーキの皿をぺろぺろなめていたクリスは、ちょっと気まずそうな顔で告白した。

「……友達を、治したかったんだ。でもお金がないから、盗んで道具を買い集めてた」

「病気なの?」

「壊されたんだ」

 クリスの顔が、突然に険しくなった。

「他の奴らは、みんな言うんだ――『あんなポンコツ、もう捨てちまえ。もっとマシなオモチャが、施設ここには他にあるんだから』って。僕はそんなの許せない。ロビィは世界に一人しかいないんだ! だから僕は、ロビィを治してやりたい」

 クリスの友達というのは、どうやらロボットのことらしい。鼻息荒く怒っていたクリスは、ふいに気弱な顔になった。

「壊れた部品は、ジャンク屋でけっこう集まったんだ。でも……ほんとは無理だって分かってるんだ。もし部品がそろっても、僕なんかがロボットを治せるわけないんだよ。それに、“整備士”の資格を持っていないのにロボットを分解したら、法律違反になっちゃう」

 “整備士”――マリアは、前にシュルツから学んだ事を思い出していた。整備士というのは、ロボットの保守点検をするための国家資格だ。シュルツ自身も、大学時代に整備士の資格を取ったと言っていた。

 クリスがロボットを解剖したら、法律違反になってしまう。――だったら、わたしは?

「わたし、あなたのお友達を直してあげられるかもしれないわ」

「え?」

 クリスが顔を輝かせた。

「マリア。もしかして、“整備士”なの?」

「えぇと……そんなようなものよ」

 前にマリアは、給仕ロボットのSULLAスラを直したことがある。だからクリスのロボットも、直してあげられるかもしれない。

「ほんとに治してくれるの!? 部品、隠してあるんだ。持ってきていい?」

「ええ。でも、ちょっと待って」

 SULLAの直し方は記憶しているけれど。他のロボットについては、勉強しなければ直せない。研究所には、いろいろなロボットの解体図があったはずだ。

「研究所に戻らないと、無理だわ」

「研究所?」

 ――そのロボットをちゃんと直して、クリスを喜ばせてあげたい。

「私に、ついてきて」

 マリアは会計を済ませ、クリスの手を引き歩き出した。


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