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 今回もシリアス展開……

 気持ちの悪くなった人、すいません。




懐から青年が静かに取り出したのはリボルバー式ハンドガンだった。


「クレム、さんでしたっけ? 言い忘れていましたが、僕は“狼人間”退治専門の猟師なんですよ。これがその銃です、貴方たちは普通の銃じゃ死なないですからねぇ」


シリンダーに、なんの迷いもなくシルバーブレッドを詰めていく青年。

ここ最近仲間の姿を見なくなった原因が解った男はますます青年を睨む。


「……てめぇ」


あまりの怒りに全身の毛が逆立った。


「――ライン! 止めて!!」


少女の声に軽く頭を振ってどこか狂気じみた笑顔を向けた青年は独り言のように言う。


「いくら愛しいメリッサの頼みだからってこればっかりは聞けません。でもこれだけ“退治”するのを我慢したのは初めてですね。……これ祖父から受け継いだ“狼人間”用の銃です。せめてものお詫びとして一瞬で終わらせてあげます」


自分を殺そうと銃を向けられているのにも関わらず、男は青年の言った言葉に気を取られていた。


「『頼んだ』? ……何の話だ」


「はぁ……これだから“半獣”は居なくなればいいのに」


哀れみと侮蔑の目で見られても男は構わなかった。

ただ、自分が大きな勘違いをしているかもしれないということだけは分かった。


「どういうことだ」


「……僕が“狼人間”退治の猟師であることをメリッサは最初から知っていました。そして僕がこちらに来ることを知った彼女は私にこう言ったのです。『自分の森に住む狼だけは殺さないで欲しい』と。そして僕の交換条件である僕と一緒になるということを認めたのですよ。貴方にもう二度と会わないことも」


男は文字通り絶句した。

なんということだろうか。

少女は、今自分が痛いほどにその腕を掴んでいる少女が自分のことをこれ以上ない程に目を見開いて見つめる。

掠れるようにして男の口から溢れたどうして、という呟きはとても小さく、弱々しいものだった。

その言葉を向けられた少女は男が見たことのないくらい震え、信じられないくらい顔は青ざめていた。

少女は目に涙を浮かべながら言った。


「……ごめんなさい、貴方が一人になるのを止められなかった。私知っていたの。ラインが貴方の仲間の狼人間を退治しているのを。私は知っていたの……」


嗚咽混じりに少女の懺悔は続く。


「貴方が一人になった理由を知っていたのに私にも十分罪があるのに……いいえ、今更何をと貴方は思うでしょうけれど、救えなかった仲間のためにも貴方だけは笑っていて欲しかったの」


崩れ落ちた少女を呆然と見つめていた男は理解できず立ち尽くした。


「……じゃあ、何で俺のことあんなに邪険に」


「僕が欲しいのはメリッサ一人であって貴方を殺すのは、ただ単に目障りだから。貴方が現れて僕の邪魔をしようとすることを彼女は分かっていたんでしょう。そんな貴方を彼女は遠ざけようとした……当たり前ですよねぇ、彼女のことが無くたって僕が貴方を殺したいのは分かりきっっているんですから」


事も無げに言われた言葉に、これまでの少女がいかに自分のことを思っていてくれていたかが分かった。


「そんな……」


二の句を告げなくなった男を青年はその奥に燃えるような碧い焔を宿す瞳で睨みつける。


「そんなことも知らずに……能天気ですね、貴方は」


整った顔立ちが見るからに歪み、それは泣き顔のようにも見えた。


「いつだってそうだ。僕が欲しいものは全部“奴ら”に奪われてきた」


唇を噛みどこか決心した顔で、だけど、と青年は続ける。


「僕は彼女の心も欲しいんです……でも彼女の心を占めているのは僕じゃなくて貴方だ。欲しいものは手に入れるまで諦めきれない質でして。しかもそれが“奴ら”の仲間である貴方が望んでいるのであれば尚更――その能天気のまま誰も恨むことなく死んでください」


パァン!!


叫ぶ彼女の声を無視して男に向けられた霞掛かったような碧の双眸に、男は未だ正常ではない頭の片隅で理解した――この男は自分を、それに彼が口にした“奴ら”をとても怨んでいるということを。

ゆっくりと男の身体が床へと崩れ落ちる。


「い、いやぁァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」



――凍えるような満月の空に少女の悲鳴が響き渡った。


 ……大丈夫でした?



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