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誓いのブラッド~すべて閣下の仕業~  作者: いふじ
第0章;フォート王国
9/18

第8話;まさか!祭り

もしも僕が君ならば君は気味悪いなんてことがあったりなかったり!


自分でも何をかいているのか分かりません。

少しテンションがおかしいのは見逃してあげてください!

それでは・・・・はじまるよー!!!!!!

広場には多くの人がいたが、皆一様に活気が無い。


全員が何かに怯えているようなそんな表情をしている。

 

「君、帝国の人間だよね?」

 

「ははは、お分かりになられますか?」

 

「まーね」

 

「今、この大陸がどんな情勢にあるかは知ってる?」

 

「存じていますとも」

 

「だったら、何で帝国の人間がフォートにいるのかな?」

 

奴隷商は涼しい顔で俺の質問に答えを返してきた。

 

「こんな時代です。やはり少しでも楽しみが無いと人生やっていられないでしょう? そう考えるのは、どうやら私だけでは無いようで。フォート王国の中にも私と同じ考えのお方がいらっしゃいまして、私の商品を見たいというご注文を頂いてですね」

 

やっぱりね。

 

はー、誰だろう?

 

ヘイルマン公爵かな?

 

あいつ中々根性腐ってそうだしなー。

 

「あのさー」

 

「はい」

 

「君たち、この村の人たちに何をしたの?」

 

「何を・・・と申されましても」

 

「惚けなくてもいいよー。明らかに村の人たち君らに怯えているよね? どこにいるのかは分かんないけど、何人か君の部下もいるみたいだしさー」

 

「え!? そうなんですか!?」

 

とはソーニャちゃん。

 

気付いてなかったのね。

 

まあ、まだ見習い騎士だしね。

 

将来に期待ってことですね。

 

「おや? お分かりになられますか?」

 

「そりゃーね。こんだけ殺気を放たれればさー」

 

「ほう。それで、どうされますか?」

 

「どうもしないよ。俺はあくまで君と取引をするだけだ。パルちゃんのお姉さんを君から買う。それだけだ。だから早く連れてきて」

 

奴隷商の男は俺を見定めるかのように見ている。

 

だからー、男にそんな風に見られても嬉しくも何とも無いんだってば。

 

「ふむ。よろしいでしょう」

 

そう言うと「おい、連れて来い」と告げ、先ほどまで露店で果物を手に取っていた小太りの男が頷いて近くの民家へと入って行く。

 

数分もしない内に、小太りの男は一人の少女を連れて出て来た。

 

年はソーニャと同じ頃だろう。

 

幼さが感じられるが、将来はかなりの美人になるだろうことが容易に想像できるような、そんな少女は一見すれば何処にもケガは見られなかったが、まだ安心は出来ない。

 

怯えきった瞳で俺を見る少女は、自分がこれからどうなるのか不安で仕方が無いといった風である。

 

「では、閣下。こちらが約束の品です」

 

言って、奴隷商は少女を連れて近づいてくる。

 

「やあ、ケガはないかい?」

 

少女はコクンと頷く。

 

「乱暴はされなかった?」

 

再び頷いて答える少女。

 

「良かった。すぐに、パルちゃんに合わせて上げるからね」

 

「・・・えっ?」

 

パルという名前に少女は声を上げた。

 

「心配しないでいいよー。今頃パルちゃんは俺の屋敷でウチのおっかないメイドさんといるよ」

 

「妹に・・・パルに会えるんですか!?」

 

「うん。あの子可愛いよねー! もうすでにウチの連中は皆あの子にメロメロだよー。まあ、僕は嫌われちゃってるんだけどねー」

 

あははー、と笑いながら言うが、昨日のことを思い出すと何だか泣けてくる。

 

「無事、取引成立ということで、我々はこれで失礼します」

 

そう言うと奴隷商の男は隣に立つ、小太りの男に目線をやる。

 

俺はそれを見ると、パチンと指を鳴らしてソーニャに合図を送った。

 

「まさか!」

 

おおー、ナイス演技だソーニャちゃん。

 

良い仕事してるよ!


「くっ! バレていたか!」

 

と、男は悔しそうな声を出して言うが、実際俺は彼が何をしようとしていたかなんて知りもしない。それはソーニャも同じく。

 

「こうなれば・・・」

 

そのタイミングで再び指を鳴らすと、

 

「まさか!」

 

「何っ!」

 

驚愕という言葉が相応しいだろう表情を浮かべる。

 

「なれば・・・」

 

 ↓

 

指を鳴らす。

 

 ↓


「まさか!」

 

 ↓

 

「だったら・・・」

 

 ↓

 

指を鳴らす。

 

 ↓

 

「まさか!」

 

 ↓

 

「くくく。仕方が」

 

 ↓

 

指を鳴らす。

 

 ↓

 

「まさか!」

 

「えええっ!? 今のも分かったのか!? まだ話している途中なのに!」

 

「ふふふ。実は彼女は人の心が読めるんだよ!」

 

「まさか!」

 

とはソーニャちゃんの本気の驚き。

 

まさか自分にそんな秘められた力があったなんて! という時に使う「まさか」だよねソーニャちゃん。

 

「そ、そんなっ! というか、そいつ女だったんだ!?」

 

「まさか!」

 

とは乙女な彼女の本気の憤り。

 

まさか男物の服を着ていると言うだけで性別を間違われるだなんて! という時に使う「まさか」だよねソーニャちゃん。

 

「心を読める・・・と仰いましたな。ということはこちらの計画もすでに知られてしまっているということですか」

 

「まさか!」

 

とは俺の驚き。

 

まさか今までの流れでそれを信じちゃうんだ! 思いっきりからかってただけなのに! という時に使う「まさか」である。

 

「え? 違うの?」

 

「ははは、違わないよ! 君の考えていることなんて全てお見通しさ!」

 

「くぅ~~! こんな筈では!」

 

「はははははは! 諦めて大人しく帰るがいいさ!」

 

「ま、まだです! まだ終われません!」

 

指を鳴らす。

 

「まさか!」

 

その台詞を言うのが段々楽しくなってきたのか、言葉の重みが回を重ねるごとに増していくソーニャちゃん。

 

「バ、バレていようが何だろうが構うものか! お前たちやってしまえ!」

 

男が合図を出すように右手を天へと届けとばかりに高らかに掲げるが、そんな男に対して呼応したのは小太りの男ただ一人だけだった。

 

「・・・あれ?」

 

鳩が豆鉄砲食らったような顔って、今のこの男の顔みたいなことを言うんだろうか?


「まさか!」


とは奴隷商な男の驚き。


どんな意味が「まさか」に込められているかは分からないけど、よっぽど驚いていることは確かなようだ。

 

「ねえ、君」

 

「な、何だ!」

 

「僕は今日、君と大変良い取引をした。君も三千スピカという大金を手に入れた。今日あったことはそれだけ。それ以上でもなければ以下でもない。そうだよね?」

 

「うっ」

 

「君は僕を襲うなんてしていないし、僕も君に害を及ぼそうともしていない。そうだよね?」

 

「ううっ」

 

「帰ってくれるね?」

 

遠くの方で、弓のしなる音が聞こえる。

 

こいつが大人しく帰らなければ、射るんだろうな。

 

まあ、こいつが死のうが生きようが俺はどっちでもいいけど、その後の展開が面倒だ。

 

それに、そうなるにはまだ早い。

 

だから大人しく帰れよー。

 

「わ、分かった」

 

「おお! 分かってくれたかい!」

 

男は悔しそうな顔を浮かべて俺を睨みつけた後、小太りの男を連れて去って行った。

 




 アーリアット村を去った奴隷商の男は、悔しげに呟く。


 「一体あの男は何なのだ! あんな馬鹿そうな男がこの国の侯爵だと! それに最後の威圧感・・・。あいつは只者ではないな。ええい! あんな男がいるとはまったくもって聞いておらんぞ! フォートなんぞという小国に躓いているわけにはいかんのだ!」


 男の愚痴を小太りの男が冷やかに見て言う。


 「この際だ。適当に理由を付けてフォート・・・」


 そこで小太りの男の声が途切れた。


 ドスンという物音がした。


 不審に思い、奴隷商の男が横を見てみると。


 小太りの男の額に、矢が刺さっていた。


 「なっ! い、一体どこから!?」


 男の額に刺さる矢尻は鈍い光を放っていたが、次第に赤黒い物が矢尻を侵食していき、不気味な色合いに転じる。


 「余計なことはお考えにならないことです」


 声は奴隷商の男の真後ろから聞こえてきた。


 振り返るが、そこには誰もいない。


 「ふふふ、こちらですよ」


 声に誘導されるように、男は視線を上に上げる。


 信じられないものを見た。


 木の枝にメイドが立っていた。


 「お前は・・・」


 抜群のプロポーションを誇るメイドは慈愛に満ちた瞳で男を見つめて言う。


 「貴方のお仲間さんたちには消えて頂きました」


そのメイドは真紅の弓を手に持っていた。

 

あのメイドが・・・?

 

しかし、相棒は額を穿たれて絶命した筈。一体後ろからどうやって?

 

「貴方のことは生かして返すよう言われております。うふふ、運がよろしいですね。閣下に感謝してくださいね?」

 

「貴様・・・」

 

「閣下からの伝言です。『別に帝国に帰って俺たちのことを言いふらしてもいいよ? 馬鹿な放蕩息子とメイドさんにやられたーって言えばいいさ! まあ、こんな恥ずかしいことを言えるものならね! あははー!』だそうです」

 

「お前は一体誰だ!」

 

男は馬鹿にされたことに腹を立てているのか、顔を真っ赤に染め上げて言った。

 

その問いに対し、メイドの表情は先ほどまでの優しげな笑みを妖艶な笑みへと変貌させて答える。

 

「アルトリア侯爵家、ブラッド・アルトリアに仕えしシズカ・レインズです。以後お見知り置きを」

 

「・・・ブラッド・・・レインズ・・・まさか!」

 

男は最悪の可能性を思いついてしまう。

 

数年前に突如として戦の舞台から消えた名を思い出す。

 

「そんな『血の雨』・・・だと?」

 

『血の雨』。

 

戦場にいた者でその名前を知らぬ人間は存在しないとまで言われる伝説の騎士団。

 

正体不明の騎士団は、突如歴史の舞台に現れ、現れた時と同じように突如として歴史から姿を消した。

 

「うふふ。閣下のお邪魔をなさるおつもりなのでしたら、それ相応のお覚悟を。次にお目に掛かるときは、容赦なくお命頂戴致します」

 

言うと、メイドは華麗に礼をして姿を消すのだった。


読んで頂きありがとうございます!

この作品が貴方のお暇のお供になれれば幸いです!!

ご意見・ご感想などがあれば是非に!!!


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