第14話;アルトリア式メイド(冥土)召喚魔法
皆さん、こんにちは!
つい先週のことです。
唐突に友人から「かくれんぼ、やろうぜ!」
という提案が持ちだされてきました。
ちょうど仕事を終えて帰宅したばかりで疲れていたこともあり、僕はその提案を丁重に「よし! やろう!」とお受けしました。
まあ、面白そうだったので(笑)
集合時間は19時。場所は少し大きな公園で。
次の日は仕事がお休みだったので、フルスロットルでかくれんぼに臨みました!
いやー、大人になってからするかくれんぼって最高に楽しいですね!
はーじまーるよーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!
どうしてこうなってしまったのか、俺には理解できないが、ただ一つ分かっていることは、俺が何故か彼女を怒らせてしまったということだ。
「こ、これは王女殿下・・・」
あの美しくも聡明なユリア・ファン・フォートの一人娘にして我が国の王女であらせられるミネルバ・ファン・フォート王女殿下のドスの効いた声が俺の耳に届く。
「よくも私の呼び出しを無視して下さりやがりましたわね。このクソ虫以下の絶賛底辺這いずり野郎」
一国の王女様のお言葉とは到底思えないような台詞が、小さく瑞々しい魅力的な口から放たれる。
「あの、それには理由があってだねー」
「あらあら、私は幻聴でも聞いているのかしら? とても大きなゴミクソ虫以下の絶賛底辺這いずり野郎が人間の言葉を理解した上でさらに人間の言葉を話すなんて」
俺への罵倒にゴミが追加される。
俺、何か悪いことでもしましたか?
女王陛下の娘というだけあって、陛下と同じく美しく整った目鼻立ちをした彼女は、その切れ長の瞳に暗く濁った怨嗟の炎を宿らせた視線で俺を射抜く。
「あの、殿下?」
と、ソーニャちゃんが恐る恐る声を掛ける。
「ああ! 私の可愛いソーニャ! かわいそうに! こんな見ているだけでグロテスク極まりない変態侯爵にその無垢で清らかな肢体を舐めまわすように視姦されるなんて! でももう大丈夫! 私が来たからには貴女を吐き気を催すこと必至な超弩級の鬼畜侯爵の魔の手から救って差し上げます!」
俺は貴女のそんな素晴らしくもバラエティーに富んだ罵詈雑言から救い出して欲しいです。
「アルトリア侯爵」
どうやら王女殿下の友人であるらしいソーニャちゃんと、第四騎士団の皆さま方の必死の説得のお陰で、落ち着きを取り戻したミネルバ王女は何事も無かったかのように冷静な声音で言う。
「貴公が奴隷の少女を商人から買ったというのは本当なのですか?」
「イエス・マム!」
「真面目に答えなさい!」
「はい、本当です」
怖いよ。
本気で怖いよ!
でも、ありがとうございます!
鋭い視線で下劣で卑しい俺を見下すかのように見てくださる眼光!
ごちそうさまです!
「何故そのように人の倫理より外れた行いをされたのです!」
「むしゃくしゃしてやった。誰でも良かった」
「至急、処刑場の手配を致しましょう。斬首刑、絞首刑、焼身刑等など、お客様のお好みに合わせた、ニーズに合った刑を多数取り揃えております」
「すみませんでした」
謝らずにはいられなかった。
だって死にたくないもの。
しかし、これは俺が何を言っても聞いてもらえないだろうなー。
ここはご本人に登場して頂いて誤解を解くしかあるまい。
俺は死を賭した覚悟で叫ぶ。
「ティリアくんのアホー! 俺だってパルちゃんやリンネちゃんの寝顔を見たいんだよー! 君やシズカくんだけずるいぞー! それからどうせ始末されるのなら最後に二人の顔を見てから逝きたいです!」
力の限り叫ぶ俺を、王女殿下を始めソーニャちゃんや第四騎士団の方々が残念な人を見るような目で見てくる。
「何を言ってらっしゃるのですか?」
と、王女殿下が極めて当然な疑問を口にする。
俺が何を思って叫んだのか。
その答えはすぐにやって来た。
アルトリア式メイド(冥土)召喚魔法、天への回帰(DEATH)。
これにより我がアルトリア侯爵家が誇る、有能で美しくも無慈悲なるメイド長、ティリア・レガンスがここに顕現した。
ティリアの傍には可愛らしいメイド姉妹が不思議そうに佇んでいる。
「閣下」
「や、やあティリアくん・・・。あのね、さっきのは必要に迫られて言ったわけで、決して本心からの言葉では無いんだよ! そこの所を踏まえた上でご再考頂きたいんだけど・・・」
「え? 死にたい? そこまで閣下が仰るのならば、閣下に仕えるメイドとして私直々に、この世のありとあらゆる苦痛を与えた挙句に惨殺して差し上げるのがメイドたる私の使命ですね」
やっぱり死は確定なんですか?
「再審を要求します」
「却下します」
そう言った直後、ティリア式冥土殺法が俺を天に導くために展開された。
まずはお馴染み女神の抱擁から空中に浮かされ、大いなる慈悲を経て、女神の鉄槌、聖なる光魔法、メインディッシュに艶美なる振り子で魂を極楽の先に誘ってくださったティリア様。
まさに圧巻のパフォーマンスにその場にいた一同沈黙。
いや、パルちゃんだけは「・・・ゴミ掃除♪」と嬉々とした声を上げていた。
喜んでいただけて何よりです!
その後、俺の生命を賭した召喚に応じて現れたパルちゃんとリンネちゃんをソーニャちゃんが王女殿下に紹介し、俺の無実を証明してくれたのだとか。
もう・・・ゴールしてもいいよね?
俺の命の灯は弱弱しく明滅していた。
良い仕事振りだったよ・・・ティリ・・・ア、く・・ん・・・。
読んで頂きありがとうございます!
この作品が貴方のお暇のお供になれれば幸いです!!
ご意見・ご感想などがあれば是非に!!!