第11話;羨まし過ぎるヘルオアヘブン
先日、友人から電話が掛かって来た。
「なあ、俺めっちゃおもろい漫画発見してんけど! お前も絶対気にいると思うから買って読んでや!」「へー、なんてタイトルの漫画?」「ワンピース!」
すでに全巻持ってるよ・・・。
そして、連載当初からのファンだよ!
はーじまーるよー!!!!!
ある日の早朝のことだった。
その日、俺の下にミネルバ城からの使者がやって来た。
「アルトリア侯爵閣下は御在宅か!」
朝早くから家の前で大声を出している訪問者に俺は、
「面倒くさい・・・」
と、つい愚痴をこぼしてしまう。
「閣下、どうされます?」
シズカの言葉に俺は「うーん」と少し悩む。
「居留守を使おう!」
「はあ、まあ閣下がそれでよろしいのでしたら」
と、シズカの合意も取れたことなので、至福の時間である二度寝に入ろうとした時だった。
「あ・・・」
「あら・・・」
俺とシズカの声が重なった。
俺たちの前をティリアが通り過ぎる。
かなり不機嫌そうな顔でティリアは玄関まで向かっている。
そして無言で扉を開けて、使者と言う名の生贄ににこやかな笑顔で言った。
「おい、お前。こんな朝早くに一体どういうつもりだ? お前の馬鹿でかい声の所為でウチの子たちが目を覚ましてしまっただろう! パルとリンネはな、いつもはあと三時間、夢の中の住人なんだよ! それがお前の所為で目を覚ました。あと三時間は閣下の顔を見ずに済んだというのに、可哀想に。三時間も早く閣下の顔を見てしまうことになるんだよ。お前この責任をどう取るつもりだ? それに何より、お前の所為で、私の毎朝の楽しみであるパルとリンネの寝顔鑑賞タイムが潰されてしまったわけだ。これは許してはおけない。よってお前には死でこの罪を償って貰おう!」
哀れな。
ティリアの不況を買うとは。
哀れな。
俺ってパルとリンネにそんなに嫌われてるんだ。
そんな哀れ極まりない訪問者は、ティリアの美しき女神の抱擁で頭を掴まれて宙に浮かされた後、神々の祝福(三十二連ボディーブロー)を腹に頂いてからの、神との邂逅(空中に蹴り飛ばされる)を経て、地面に激突する。
まったく。
朝からなんて羨ましいお仕置きをされているんだ!
「ティリアさん、もうその辺で」
だからね、シズカ。
君、止めるのが致命的に遅すぎるよ。
もう彼ってば、ヘルを体験してヘブンへと旅立つ寸前だよ?
「おいおい、このまま楽になれると思うなよ?」
「・・・・・・たす・・・け」
「おい、お前が今まで体験した中で、最も辛く苦しいことを思い出してみろ」
そりゃあ、今君から与えられている体験そのものでしょうよ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・っ」
「よし、想像したな? 今からお前にはその辛くて苦しいこと以上の苦しみを百回続けて休まずに与えてやろう!」
「あ・・・・・あへへ」
モザイクを入れなくてはとても人様にはお見せできないような悦楽の表情を浮かべる訪問者。
あー、彼も俺と同じく望まぬ内に、新たなフロンティアを開拓してしまった勇壮なるグラディエーターだったということか。
それにしてもティリアくん。
百回っていうのは中々リアルな数字で、ゾクゾクするね!
良い仕事し過ぎだよ、ティリアくん!
「なあ、コレどうしようか?」
ティリアという(堕)天使によって天界へと誘われつつある見ず知らずの訪問者を、さすがにあの場に放置しておくことは出来なかった。
俺はそんな彼を屋敷内に担ぎこみ、シズカに看病してもらう。
「あの、この人は一体どうしたんでしょうか? 体中傷付いて・・・よほど酷い目にあったんですね」
「・・・ボロ雑巾」
メイド服を着た人形のように可愛らしいリンネとパルは、シズカが介抱している男を見て心配そうに言う。
あー、心配しているのはリンネだけか。
それよりパルちゃん。
そんな言葉をどこで覚えて来たんだい?
恐らくティリアからだろうな。
「本当にどうしたんだろうな」
とはティリアさん。
二千パーセントあなたが原因ですとは怖くて言えない小心者な俺。
「本当に何があったんでしょうね」
シズカくん、完全に無かったことにする気かい?
それじゃあ俺もその路線でいこうか。
「・・・・・・うう」
「おー、目覚めるか?」
「・・・・・・閣下に伝言を」
「何だ?」
「・・・・し、至急・・・城へ・・・こら・・・れ・・・た、し・・・」
何と言う使者の鏡!
ここまで命を掛けた言葉を無視したとあっては侯爵の位が廃るというもの!
「分かったよ。名も知らぬ訪問者よ! 君の命を掛けたメッセージ・・・しかと受け取った!」
「では、すぐに準備を始めますね」
シズカがそう言うと、
「私もお手伝いします!」
とリンネが可愛らしく手を上げて言うと、
「・・・パルもー」
と姉と同じように手を上げて言う。
「うふふ、それじゃあ皆で一緒に準備しましょうね」
「はい!」
「・・・うん」
「よし、それでは私はこの男を介抱(拷問)してやろう」
もう止めて上げて下さい。
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