夢想と真実
刻は紀元前の地球。私達人類は、皆同じ言葉を使っている。
当たり前だ。同じ人間なのだから。
ある日アルタは、第15回目の宗教会という集まりに行った。そこで、神への祈りを捧げる。
「初めに神は天地を創造された。天は混沌の内にあり、地は闇の中にあった。そして神は光あれと云われた。神はアダムとイブを生み、我等をお創りになった。我等は今、主に祈る。天におわす我等が神よ、一心不乱に祈る我等を見守り下さい。天上界の大神ゼウスよ、どうか我等に幸福を。我等がアダムとイブに感謝を」
祈りが終わると、一人の男が言った。
「俺達が神に近付いてみないか?」最初は、男の提案にざわついていたが、一人、また一人と同意し始めた。
「神は天におわすのだぞ、どうやって、近付くんだ?」
大人達は話し合いを始めた。しかしなかなか決まらない。
その様子を神たちの肖像画が彼等の上から見下ろしていた。
「塔を造ったら、良いんじゃない?」
大人達が話し合いに飽きていた頃、アルタが口を開いた。
「塔かぁ、それはいい考えだ」
「では、早速塔を造ろう」
こうして、塔造りが始まった。
そして半年の月日が流れた。
塔は、天まで届くかの様になった。
「すごいなぁ」
アルタは言った。
「うん、確かに。すごいね」
アルタの親友のスピカは答えた。
しかし次の瞬間、驚くべきことが起こった。さっきまで晴れていた空に暗雲が垂れ込めてきたのだ。
「一体どうした」
「神が怒っておられるのか?」
「しかし何故」
大人達は皆大騒ぎ。
「愚かな人間共よ、貴様ら一体何をしている。我等神に祈り、感謝の念を捧げている故、アダムやイブとは違うと思うて居ったが、やはり人は人であるな!神に近付こうなど愚かにも程がある。己が神から創られた存在だということを、忘れていたか!」
天から声が聞こえ、それと同時に雷が落ち、塔が音をたてて崩れてしまった。
「お前達はこれから先、様々な争い事を生むだろう。それは我等神を愚弄した罰である。これはお前達の運命なのだ。故に受け入れる他はない。そしてアダムとイブの様に、永遠に地上で罪を償うのだ」
天の声が消えると、目の前に光が走った。
アルタが目を覚ますと、知らない土地が目の前に広がっていた。
「あれ?私いつの間に寝てたんだろう」
アルタは、全てのことを忘れていた。
塔のことも、神のこともそして、親友のスピカのことも・・・。
「アルタ何をしてるの、早く来なさい。ご飯が出来たわよ」
そしてアルタの母も、塔や神の声のことを記憶していない。
神は、人類を分散した。
そして、塔を造ったことや神の声のことを記憶から抹消したのだった。
「はーいお母さん、今行く」
私達人類は、皆土地ごとに、異なる言葉を話す。当たり前だ。皆、異なる土地で生きているし、その土地ごとに種族や崇拝している神が違うのだから。
ここまで読んでいただいで、本当にありがとうございました。
感想など頂けましたら、これからの小説書きに役立てたいと思います。
この作品は、私の持っている知識を総動員して、書いています。
不束か者ですが、これからも頑張って書いていきますので、宜しくお願いします。