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10年程むかしの話。
リベルタ公爵領で保有している鉱石山で落盤事故が発生した事がある。
作業員は全員無事だったが、鉱石山に父エルマーの視察に着いて来ていたバイオレット、作業員に弁当を届けに来ていた孤児院の子供のアリシアとパスカル、元伯爵令嬢のセシリアが閉じ込められてしまった。
怪我を負って動けないバイオレットを助けたのが、後の『聖女』アリシアだと言う。
事故発生から12時間後、子供達は保護された。
ただ、救助された時元伯爵令嬢セシリアは、落盤の際に顔が潰れてしまい、息も絶え絶えだった。
治療魔術を施したものの、元伯爵令嬢セシリアは治療の甲斐なく落命してしまった…
「―――と、一般的には公表されているわね」
『聖女』としてキーズ男爵に養女として迎えられたアリシア・キーズ男爵令嬢を見た時、カールミルラは落盤事故で子供達に何が起きたのかを徹底的に調べ上げた。
結果、―――元伯爵令嬢セシリアとして死亡したのは本物の聖女、アリシアである事が判明した。
『豚娘に貴石の髪飾りなんてもったいないわ!!』
ヘンリー王からバイオレットへ贈られた髪飾りを奪い取ったセシリア嬢は突然実家が没落し、一族郎党各地の炭鉱や鉱山で働く事となった。
バイオレットが落盤事故に巻き込まれたのはセシリア嬢が
『本当に酷い事を言ってしまったと反省しているわ。仲直りしてくださる?』
と話しかけた事が起因している。
落盤事故の際、セシリアがバイオレットとアリシアを押し退けた事でバイオレットは足に大怪我を負い、アリシアは顔が潰れて生命保持の難しい状態となった。
セシリアは、アリシアが自分と似た顔立ちである事を良い事にアリシアに成りすました。
例え孤児院に棄てられていた平民の孤児でも、
「大国の王族に連なる血筋の公爵令嬢を助けた」
と言う事実があれば貴族の地位を取り戻す事が出来る、と幼いながらに考えたのだろう。
ただ、セシリア嬢に治癒魔術の才能は無い。
ならば、バイオレットの傷を癒したのは消去法でパスカルとなる。
パスカルは事故の後遺症で事故当時の記憶がない、と言っていた。
「―――家族想いよね」
もちろん、パスカルの身元も調べ上げている。
―――本名、ヴィクトル。
スピネルと並ぶ大国ディアムンドの王子だ。
双子の兄との継承権争いを回避する為王籍を離脱した直後落馬事故で谷底に落ち、遺体すら見付からなかった王子。
ディアムンドから招いた魔力測定師と王女アンジェラの確認により、パスカルがヴィクトルである事は証明されている。
過去に我が娘を救い、現在は従僕として身を置く青年。
「バイオレットがパスカルの話をする時の目は、どう見ても恋する乙女なのよね…」
公衆の面前で婚約破棄された傷モノの娘の婚約者候補として申し分無いわね、とカールミルラは呟いた。
落盤事故発生 セシリア →アリシアに成り済ます
アリシア → セシリアとして死亡する
キーズ男爵「こちら、養女として迎えた元平民の聖女です!」
リベルタ公爵夫妻「(いや、セシリアだろうこの娘は)」
面識のある相手の魔力パターンくらい覚えています。




