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なぜ大丈夫だと思ったのですか?  作者: アーク
婚約破棄は計画的に。
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「わたくしの可愛いふとっちょさん」


バイオレット・リベルタ公爵令嬢は母カールミルラや母方の親戚筋の人間にそう呼ばれて育ってきた。


大国スピネルでは体重が重ければ重い程、男は逞しさを、女は美しさを讃えられる。


バイオレットの体重は84kg。


スピネルでは「やや細め」と呼ばれる体重である。


100kg超えの巨体のおじやおばと比べて母カールミルラはその半分程度しか体重がなく、学生時代は「カールミルラ王女殿下は国王の子では無く、不義の子ではないか?」と言う品の無い噂を立てられて肩身の狭い思いをしたと言う。


後ろ指を指される生活が嫌で、学園の図書室に籠っていたカールミルラを救ってくれたのがオニキスからの交換留学でスピネルに来ていたエルマー・リベルタ公爵令息、―――バイオレットの父である。


賊から弟妹を守る為に顔に大火傷を負った父エルマーはエルマーで、顔の半分以上が火傷の痕で埋め尽くされている様な男はいかに身分が高かろうと不吉極まると肩身の狭い想いをしていた。


互いに自分ではどうしようにもならない理由で肩身の狭い想いをしていた者同士、自然と行動を共にする事が多くなり、貴族社会には珍しい恋愛結婚をした両親の話は演劇にもなっている。


嫁いで12年、魔力過剰症が寛解して直ぐにバイオレットが祖父であるヒューベルトと瓜二つの顔立ちで生まれた事で、カールミルラの不義の子の噂は消えた。


「お母様、わたくしって、豚みたいなのですって」


カールミルラの美しい表情がぴたりと固まる。


ふとましさが美徳である祖国スピネルと違い、嫁ぎ先であるオニキスではそれは罵詈雑言の類いではなかっただろうか。


「あらあら、誰がその様な事を?ヘンリー兄さん達?」


「いいえ学園の殿方達よ。大国の王族の血を引いているのだからとは言え、豚の様な女と結婚しなくてはならないなんて、ロベール・ブレッソン殿下が可哀想なのですって」


ホールケーキをペロリと平らげながらバイオレットは言った。


使用人がカールミルラに既に対処済みである事を耳打ちする。


(何処に目や耳があるとも分からないのに、…若いって罪ね…)


ロベール・ブレッソン第2王子殿下は、1年前に編入した元平民の『聖女』、アリシア・キーズ男爵令嬢と『好い仲』であるとカールミルラの耳にも届いている。


周りが「身分を越えた愛」と盛り上がっている事もあり本人もその気でキーズ男爵令嬢と結ばれるつもりでいると言う。


『聖女』を手放すのは国としても惜しいし、側妃にするには身分が少々低過ぎるので妾として囲うくらいならば問題ないだろう。


―――ロベール・ブレッソン第2王子殿下が卒業パーティーで騒ぎを起こすまでは、カールミルラはそう思っていた。

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