煌めく蓮華
画家の妻が、色とりどりの蓮を描くのに熱中している。彼女の一途なまなざしに、今でも惚れている。
妻が自分の『生きがい』に鋭意邁進しているアトリエの隣の寝室で、俺は不義理なことに傾注している。職場で出会い、親しくなった後輩女性とラインを交わしている。不穏当な人間関係によるストレスに毎日苦悩しているがゆえに、可愛らしい女性に愛情をほのめかすメッセージを、平気で送り続けているのだと思う。自分勝手な俺は、妻に対する背信行為を、裏で惰性のようにやらかしている。
かといって、妻を嫌いになったことはない。自分自身にも、誰に対しても嘘をつくことができず、純粋な彼女は、俺のことをいまだに信頼してくれている。そんな彼女の存在は、誰よりも大きいがゆえに、俺は一人きりになるといつも、津波のような良心の呵責に飲み込まれ、溺れている。いっそのこと、リトル・マーメイドみたく海の泡になりたい。
こんな冷たくわがままな自分が心底嫌いだ。身の程知らずを覚悟で言えば、私生活がめちゃくちゃだった文豪太宰治を想起してしまうが、太宰はその反面、文学的才能が素晴らしかった。俺には才能がどこにも見当たらない。齢四十で、遅きに失してしまったが、せめて優しい人間になりたい。




