注意事項2 忘れ物をしないこと-5
何事もなかったような清々しさ
結局、僕はその少女に振り回され、色々と付き合わされた。
今の今までなにをしていたか思い出せないけど。
気がついたら、少女の膝の上で、目を覚まして…。
少女は今も無邪気な笑顔を振りまいている。
とことこと小走りになっては、母校の名前を優しく読んだ「紅葉さん、紅葉さん」て。
けど、僕が感じるのは罪悪感だけだたった。―――嘘をついているから。
少女は僕に「私を思い出したから」といった。けれど僕はまだ思い出せていない。その少女のことだけ。
他のことは鮮明…そうでもないが覚えている。今日学校へ来る前にドアを直すのを忘れていたことも、先日は妹(小百合)の彼氏さん(純人)を泊めたこともちゃんと覚えている。
それから、ライブをやったことも覚えている。
それなのに僕の目の前に居るその少女の事だけが、思い出せない。
いや……彼女に深く関連していることすべてを忘れている…思い出させないようにしている?
……まぁ、どうでもいいか。
要は嘘をつきとおせばいいんだろう?
簡単じゃないか。
彼女はちょこちょことこちらにやってきて
「紅葉さん、あれ食べましょう?」
…まだ食べるのか。
僕はそう思いながら半場無理やりに手をひかれる。
強引だな。本当にさっきからずっとこんなんだ。
このこ一時間だけで慣れた気がする。つか慣れた。
僕ははいよはいよと、連れて行かれた。
そして時間がきて、僕らは帰った。
「じゃぁな」
「さようならです。紅葉さん、またあしたです。」
彼女はまた笑顔を向けた。
僕は少し思い出せないことを悔しく思った。
***
気が付くと、僕はベッドの上で横になっていた。
ドアのほうに顔を向けると、まだドアは外れたままだった。
そういえば、小百合の奴昨日来たのかな?
まぁ、今聞けばいいか、
「小百合~」
…五秒…十秒。
返事はなかった。
僕は仕方なく、立ち上がって、下に降りる。
「小百合~……なんだ?居ないのか?」
きょろきょろと視線を動かす。小百合の姿はなかった。代わりに、紙切れが置いてあることに気付いた。
そこには
『純人とピクニック行ってきます。朝ごはんはレンジの中にあるからチンして食べてね』
「かっこはぁとっと…はぁ、……リア充が。なんなんだ―――」
と、叫びの続きをさえぎるようにケータイが鳴った。
ガチャ
「はいもしもs―――『お兄ちゃん書き置きみた?ご飯入ってるから、チンして食べてね。今日は遅くなるから、そう、デートでーと。お昼と夜ごはんは自分でよろしくソレじゃ!』」
プツン、ツーツーツー。
……どうして僕の周りの人たちは…こう、身勝手なんだ。
ってまてよ?お母さんが帰ってるはずなんだけど…。
ん?
表示されていた画面には「母」の文字。
ちょっと予感が当たりそうなので無視してみる。
少し経ってから…勇気を出してそれをきいてみる
『あー?あれー?、もう寝ちゃったのかなぁ?まぁ、いいか。紅葉?帰りが一日遅れることになりました!以上でぇす!』
……はぁ。
全然何処もよくなんかないよ。
仕方ないから僕は、昨日のこともあったし、昔のことを思い出そうとした。
…高校デビューの話。
ここまでの登場人物紹介
夜崎 紅葉
主人公。記憶喪失。
藤戸 薫
ヒロイン的な立場。昔紅葉と何かあった模様
日野宮 幸助
友達以上親友未満(?)
一之瀬 亮
ベース
先輩。妹あり
一之瀬 朔
サブボーカル
同学年。兄あり
戸三 翔太
ドラムス。
遅刻魔。馬鹿
夜崎 小百合
妹。ツンデレ
リア充
純人
妹の彼氏、名字はきいたことない。
リア充
その他もろもろ。