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注意事項1 前を向いて歩こう-4

出会う

「おまえ…あの時の」


僕は、声を掛けた―はずだった。そのはずなのだ。だけど、僕は口すら動いていなかった。動揺を隠せない、僕の目の前に居るのは、あの登校する時にぶつかった少女なのだ。分からない。


何故か、僕は気が動転している。


理由が分からないびくつき。あの少女は、僕を見据えている。僕は、少しの恐怖を覚えた。


「助けて…助けて、」


少女の目は潤んでいた。


暗闇に慣れてきた、僕の目には、さっきよりも少女の全体が見える。少女は椅子に縛り付けられているようだ、身震いをして、ガタガタ、雨の中の子犬のように震えていた。

僕の体はまだ動かない、少女はさらに身を震わせ、椅子をガタガタふるわせる


「いや――置いてかないで!!やだ、私を助けて、独りにしないで―――私を…愛して」


少女を見ている僕は、自分の頬が濡れていることに気がつくのに、少し時間を要した。僕はどうせ、動きもしない口を、必死に動かした、「僕が…僕が助ける、だから、…泣かないで」


「…本当?」


立ち止まって見ているだけの僕に、少女は言葉を返した、口も声も出てはいなかったのに、少女は僕に、涙を浮かべた暗いまなざしで。少女は僕に言葉をかえした。不思議がる僕に少女はつづける。


「アナタと私に言葉は無い、…私は、私の名前は―――――」


***


「……」


何とも、意味不明な夢を見たものだ。すっかり冷めてしまった僕は、夢の中の少女と「アノ」少女の事を考えていた。なぜ僕の夢の少女が「アノ」少女なのか…。まぁ…考えてもしょうがない、か。


僕は余り気にとめないことにし、ふと時計を見た


「あ、3時だ。」


すっかり寝過してしまった。まぁ、僕がやることは無いので別に良いのだけど…。昼食を寝過してしまったために、とてもお腹が空いた、いま腹の虫が大きな音を立てた。


「まだ、時間あるし…でみせやってる、グループから、なんか貰おう。」


そうおもった僕は、音楽室を出た。



「おう、紅葉こうよう、なんかおごるぜ!?」


コイツは…確か日野宮ひのみや 幸助こうすけ数少ない、友達だ。焼きそばをやってるらしい。遠慮することなく、焼きそばを3つ貰ってあげた。感謝しろ。


「紅葉、あとで、バンド行くからな、席たのむぜ?」


ほいほい、わかった、と言っておく、僕はドジらしいが、要領は良い、もうすでに日野宮の席はとってある。流石僕。


暇だ暇だ、とぽくぽく歩く。もうそろ、軽音部の時間だ。だるい。


はっきり言って、アノ一之瀬兄弟にやらせときゃ、何とかなる、あ、ベースは負傷か…。朔にギターを任せて…僕がベース?…いや、生憎ベースは趣味じゃない。僕はヴォーカルだ(ココ大事)。まぁ、しょうがないか、と、僕は、体育館へと足を運んだ。


まだ、演劇部が芝居をやっていた…暇なので、開いてる席に腰を掛けた。


「…。」


何とも言えなない…僕はこういう…何だろう、大げさな芝居が嫌いだ。「お前は誰に言ってるんだ?」と聞きたくなる。暇つぶし暇つぶし…と薄眼だけを開けて、じっと見ていた。


劇が終わったころ、亮が入ってきた。


「おう、紅葉!何処に行ってたんだよ…探したんだぜ?あ、そうだベース出来そうだ。」


「あ、亮」


「あ、亮じゃねぇよ…ほら、部隊準備手伝いやがれ。」


「亮、別に僕たちがやることは無いと思いますが…。」


「あれ?そうだっけ?あぁ、そかそか、放送部がやってくれるんだっけか?」


「そうです、だから、やることはありませんよ。」


「そっかぁ…あ、朔…見なかったか?」


「いや、見てませんね…。!、来ましたよ」


朔が亮横を通り抜けて、体育館に入る。


「なぁ、朔、翔は?」


亮が聞いた、そういえば翔とは朝練の時以来あってないな…。


「えーと、翔は、先に体育館に行くって言ってたけど?会ってない?」


「うん、会ってない。」


亮と僕は、声をそろえて言った。


演劇部が、片づけているころ合いを見て、朔が叫んだ。


「おーい、翔!!!何処に居るの?」


「んあ?」


と、びっくりしたような大きな、声。――ガタン、と椅子から落ちる音。どうしようもない、この馬鹿は…。


どうやら、翔は、暇つぶしに演劇部の劇を見ていて、退屈過ぎて寝てしまったようだ。まぁ、内容があれだから、しょうがないよな…。


とりあえず、メンバーがそろったということで、最後の音合わせをした。


「うし、大丈夫だね、ねぇ、紅葉、もうちょっと声出してね?」


朔から、文句が来た。


「さっき、寝てたから…ちょっとのどの調子が…えふん、えふん」


と、咳払い、まぁ、時間になったら、大丈夫だろう。




時間が来た。


客入りは、申し分ない、と言うよりはあんまりいると緊張してしまう。目測で、40人程度だろうか、日野宮も、一番前の席で腰をゆったり下ろしている。


「紅葉!!!気い抜けよ!!?」


余計な御世話だよ、と言っておいた。


バンドの演奏が始まる。


声の調子も上々、いい感じだ、自分が奏でるギターのおと、亮のベース、翔のドラムがとても心地いい、朔のコーラスはとても綺麗で、耳を撫でられる気分だった。



演奏が終わり、客からの拍手。アンコールという声もちらほら聞こえる。


「亮、アンコールだってよ」


「おれは別に良いぜ?オリジナルでも披露しちゃうか?」


「そうだね」


後ろから、翔も答えた。朔歯と言うと、…疲れたように黙っている。


「うし、―じゃぁ、僕らのオリジナル曲、聞いてください。――――」


僕らの、奏でる音響が、広い体育館に拍手と喝さいをもハーモニーにしながら、強く響いた。



***



「おつかれー、よかったよー」


「そうだね、まぁ無事に終わってよかった、って感じかな。」


と皆が部室(第一音楽室)で、コーラなどを飲みながら、だべる。


あーぁ…疲れた、と喉をさすりながら、僕は独り、音楽室を出た。


空はすっかり暗くなった午後7時、この暗がりはアノ夢の世界となんとなく、似ているようなそんな気がした。


ふと、廊下の窓から、視線を落としたとき、あの少女の姿が、目に映った。


「おーい!!」


と、僕は唐突に話しかける。すると少女はこちら井に気づいて上を見上げる。


「あ、朝の人ですね?、軽音部見ましたよ?凄く良かったです!!」


上目づかいで、少女…っていうか、少女、少女言ってるけど、同年代なのか…。今頃気づいた。


彼女…でいいか。彼女の、言葉がとてもうれしかった。


「そ、そうか…あ、ありがとうな」


「いえいえ、ありがとうを伝えるのはこちらの方です、とてもいい思い出になりました。」


「あ、あのさ、この後暇かなぁ?暇だったらで良いから、僕と、廻らない?」


自分でも理由が解らない、だけど、僕の口はもう、動いてしまったあとだった、変なことを…まぁどうでもいいか。


「い、…良いですよ?急でびっくりしましたけど、」


マジか…。予想外の答えに、僕は立ちすくんでしまった。



…ただ今、心拍数上昇中。

登場人物紹介


夜崎よさき 紅葉こうよう


性別:男


年齢:15


高校一年生、軽音部ボーカル、だけど、あまり熱心じゃない。


夢に出てくる少女と、学校の割れ物札の少女が似ていることに疑問を抱いている。



次回、夜間デートのフラグ

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