注意事項3 小さなこともコツコツと
第二章?
あれから、三日。特に何も変わってない。
けど、彼は私を思い出したのだろうか。
一度気を失ってから、「カレ」が「カレ」じゃなくなったような気がする。
昔のあの時の、「カレ」みたいだった。もしかしたら、思い出せていないのかもしれない。けど傷つけたくないがために、嘘をついているのだと思う。女の勘だ。
けど、今はまだいい。このままで、ゆっくり「ワタシ」を思い出してくれればそれでいい。
だけど、完全に不安感が消えるわけじゃない。いくらそれで良いと言い聞かせたって、我慢できないときが何時か来る。
どうか思い出して下さい。「私」を「ワタシ」を。
私を助けてください。
止まってしまったあの時の時間を、歯車を「アナタ」がまた回して下さい。
思い出して下さい。あの時、青の場所で誓った「約束」を
私の体温を、声を、形を。
「過去」に縛られてしまった私を、消えない罪悪感を、止まることを知らない、この欲求を、「アナタ」がすべて動かして下さい。もう一度。
繋がらない思いの言葉。つぎはぎ。縫いあえるように、幅を合わせてみても、どちらかを切り過ぎて、合わない。
たどり着けない。
***
今日はいい天気だ。
別にそんなわけではないのかもしれないが。
日が昇るのより早く起きた僕は、カーテンを全開にして外を眺めていた。ちらと時計を見ると、まだ4時だった。
(日の出とやらを拝んでやろうじゃないか)
寒いことは解ってたけど、僕は窓を開けることにした。
すー、と寒々しい風が入る。部屋に、口に肺に、その冷たい侵入に身震いをした。
喉元が渇いていく、湿度のない乾ききった空気。喉になにか突っかかったように僕はせき込んだ。
「げほ…げおほ!…………あぁ、寒。」
外をじっと見ているうちにだんだん、空が明るくなっていくのがわかった。
淀んだ、藍色をした、空が少しばかりの橙色の絵の具で汚されたみたいに。
やがて色は交わっていき、藍色が、紫色に、やがて、その色の配分は橙色が勝っていき、果たして、橙色は、明るい黄色を含んでいった。
ぼくの記憶があったのはここまで。
…済みません寝ちゃいました。
午前8時。
紅葉の部屋は、目覚まし時計の耳障りな音で満ちていた。
―――ジリリリリリリリリ――――――
お寝坊さんな主人公君