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第12話 不死の騎士が紡ぐ希望の言葉

「離してよ!」


 ライセリアは骸骨騎士の手を振り払おうとするが、びくともしない。


「落ち着け」

「落ち着いていられるわけないでしょッ!」


 骸骨騎士はため息をつくような音を立てライセリアを凝視する。

 兜のバイザーの奥で爛々と青い光が輝いている。


「おめでたいやつだ。自分が人間かそうじゃないかでそんなにも動揺するとはな」


 骸骨騎士はライセリアの襟首を持ったまま小屋の中に投げ飛ばした。

 彼女は床にとすんと尻もちを付き、彼を見上げて睨みつける。


「そういうのはな、自分がまともな人間の身体でなくなってから言え」


 骸骨騎士が兜のバイザーを上げると、そこには人間の顔ではなく、薄汚れた茶色い頭蓋骨が現れた。眼窩には青い光が宿り、ライセリアをじっと見つめている。

 思わず息を呑む。言葉が出ない。ただ、目を見開いて骸骨騎士を見つめることしかできなかった。


「これでも人間だと思うか?」


 その言葉にライセリアの表情が変わったのか、骸骨騎士は穴が開いてるだけの鼻を鳴らすような仕草をみせた。


「あまり憐れんでくれるな。そんな目で見るな虫唾が走る」


 その言葉に、我に返る。


「ごめん、なさい……」

「謝るな。同情されるのは御免だ」


 骸骨騎士の言葉に、何も言い返せなかった。

 彼の姿を見て、ライセリアは自分の悩みがいかに小さいものだったかを思い知らされた気がした。

 少なくとも、自分にはまだ人間の姿がある。でも、彼は――


 そこでライセリアは彼の意図に気づく。

 彼は励ましてくれているのだと。


「意外と優しいんだ」


 ライセリアは言葉を選びながら話す。

 骸骨騎士は青く光る眼窩で彼女をじっと見つめた後、小さく歯を鳴らす。今のは舌打ちのつもりだろうか。


「勘違いするな。お前が落ち込んでると面倒なだけだ」


 その言葉に、ライセリアは思わず笑みがこぼれる。


「でもさ――励ますためとは言え、ちょっと自虐が過ぎない?」


 骸骨騎士は一瞬、動きを止めた。


「何を言っている」

「だって『これでも人間だと思うか?』とか『まともな人間の身体でなくなってから言え』とか……ちょっと自分を卑下しすぎよ」


 骸骨騎士は「フン」と鼻を鳴らすような仕草で、鼻の穴から空気を漏らした。


「お前に俺の気持ちがわかるのか」

「わからないわ。でも、そんな風に自分を貶める必要はないと思う」


 骸骨騎士は黙ってしまった。

 少し言い過ぎたか、と思ったとき彼が小さく呟いた。


「そうかもしれんな」


 その言葉に、ライセリアは少し安心した。

 そして、この不思議な骸骨騎士に興味を惹かれた。


「ねえ、あなたはどうしてその……その姿になったの?」


 骸骨騎士は少し沈黙した後、ゆっくりと答えた。


「知らん。目が覚めたらそうなっていた。アンデッドにはよくあることだ」

「アンデッド……? この世界簡単に死んだ人間が蘇るの……?」


 ライセリアは骸骨騎士とのやりとりをきょとんと見つめるノアに視線を送った。

 ノアは小首を傾げるが、私の意図を理解したようで頷くと口を開いた。


「あの……稀というほど稀……ではないんですが人間の遺体にマナが――ナノマシンが動作不良で残り続け、遺体を動かす現象はあります。でも、多くは自我のないただの動く死体ですが――彼のように記憶の大半は失われているとはいえ明確に自我を残している事例もあって、そういう人たちはアンデッドと呼ばれ……その、迫害されたり差別を受けるのが日常で……」

「……ということだ」


 骸骨騎士はぶっきらぼうに言う。


「あ、そうだノア……」

「? なんですか?」

「あのノア……さっきはごめん……取り乱して大きな声出したりして、驚かないからって言ってたのに……混乱しちゃって」

「いえっ、わたしのほうこそ……ライセリア様におつらい思いをさせてしまったようで、申し訳ありませんっ!」


 ライセリアはノアに頭を下げるとノアは困ったように手を振った。

 お互いにぺこぺこと謝るライセリアたちを見て、骸骨騎士がやれやれといった様子で肩をすくめた。

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