PRE: ようこそ、地下世界(アンダーグラウンド)へ
目が覚めたルカが最初に見たのは、今まで見たことのない色をした空だ。
灰色と紫と黒、たまに赤が混じっている何とも不気味な空。
辺りを見渡したら、枯れ木だらけ。見事のまでに枯れ木しかない。葉っぱ一つもない木に囲まれたルカは、その不気味さに緊張したが、今の彼にとってそれは些細な事。
(よくもおじさんを、みんなを――。)
頭にこびりつく勇者たちと騎士たちの遺体。はらわたが煮えくり返るほど憎たらしいあの声とあざ笑い。
思い出すだけで吐きそうになるが、今この状況を何とか理解しないといけないためルカは思考を切り替えた。
(ここはどこだ?とりあえずこの森を出て、人を探そう。)
ルカはとりあえずといった感じで、枯れ木だらけの森を彷徨った。
歩いてさほど時間がたっていない頃、出口らしき道を見つけその道に進んだルカの目の前に、突如影を纏う魔物らしき物体が複数現れた。
状況に焦ったルカは、慌てて腰に装備してる剣を抜き取った。剣を抜いた瞬間、複数の内の一体の魔物がルカに襲い掛かった。何とか攻撃を躱したルカは剣を強く握り、攻撃を仕掛けた。
腕を大きく振り上げて、素早い動きで剣を振った。いつも通っている学校の実践授業に出てくる人工魔物や、先ほど初めての任務で倒したゴブリン共には攻撃出来た、そしてその手応えもあった。
なのに、目の前にいる魔物に向けた鋭い剣の攻撃は魔物に当たるどころか、すっ、とすり抜けたのだ。
剣がすり抜けた事に動揺したルカは、すぐに後退し、警戒態勢をとった。
(何だアイツは!?何で攻撃を食らってない!?剣が奴の体に触れた感触はあった。だけど傷も付けてなければ、何も手応え無かったぞ!?)
確かにルカの剣は影の魔物に触れた。だがその感触は、水の中に剣を振り切ったかのような感触だった。攻撃が効かなかった事に焦ったルカの前に、別の魔物が近づき、ルカに攻撃を仕掛けたその時。
パァン!!
と、大きな銃声が聞こえた。
銃声が聞こえた直後、目の前にいた一体の魔物はまるで銃弾に撃たれたように身体が歪んだ。
そしてまた直後、ルカの耳に凛とした女の声が聞こえた。
「その武器じゃ駄目よ。貴方は下がってなさい。」
後ろを振り向いたら、ちょっと離れたところにマスケット銃を構えた女がいた。
(何だ...一体どうなってるんだ...?)
何故こんな訳の分からないところで、訳のわからない魔物に遭遇し、そんな魔物に自分の攻撃が効かないのに、女のマスケット銃の攻撃は効くのか。
混乱するルカ。
それもこれも、あの”悪魔らしき”奴と契約を結んだのが、始まりだった。