号哭のカルマ
コンビニの帰り道に迷い込んだのは異界か後悔だったのか
「入学」
当時、地元の公立高校に入学した私のクラスには、同じ中学からお同級生もおらず借りてきた猫状態だった。不安そうな感じに見えていた私に気付いて最初に声をかけてきた女の子が、私の前の席に座っていたボブヘアのヤンチャな感じの田中さんでした。
田中君は後ろを振り向いて「ね、どこ中」と、ぶっきらぼうに聞いた来たので私は「浜中だけど何か」すると田中さんは「え、浜中なの。それじゃ添島って子知っている」いきなり聞かれても生徒数は県内でも多い学校だし、添島なんて生徒は聞いたこともないので「添島さんていう子は知らないな」そう答えると田中君は「そうか、だよねー」とつぶやきながら、その添島君の話をあれこれ話してくれました。
その話によると、田中さんとは学校は違うけれど部活動を通して知り合った友人で、釣りが趣味でよく一緒に堤防釣りに出かけていたそうだ。
田中さんとはそれ以来、教室でよく話をする友人になった。
そして、隣の席で何時も気さくに話しかけてくる、坊主頭の山中君とも何時しか友人になっていた。山中君は野球部で顔が広く彼を通して数人とも友人ができたんだよな。
高校生活は慌ただしく過ぎて、3か月ほど経った期末テストが終わって皆が一息ついていた頃でした。
この、朝のホームルームの時間に担任の先生が沈痛な顔をして教室に入ってくるんだよな、これって何処かで見た気がするな。
「お堂の山」
大都市が日に日に敵国の空爆が激しさを増していた、国は都会に暮らす子供たちを空爆から守るために郊外の田舎へ子供たちを集団疎開させることにした。田舎の小学校「と云うことで、このたび首都から30人のお友だちが皆さんと、この学校で学ぶことになりました」と校長先生は生徒たちに紹介しました。
疎開してきた児童は地元の人たちは「お堂の山」と呼んでいる尼寺で集団生活をすることになりました。尼寺と言っても4人の尼さんが暮らす小さな寺なので、本来なキャパオーバーで寝起きする隙間もないほどだったが一人でも子供たちの命を救いたいという信念で受け入れたそうだ。
子供たちの中には幼い子供もいて、夜中に家に帰りたい母親に会いたいと言って泣く子もいて、夜中に尼さんが泣く子を抱いて境内を歩く姿も見かけたそうです。
尼寺の暮らしは楽ではなかったが、疎開してきた子供たちにひもじい思いはさせないようにと、地元の農家らが米や野菜などを尼寺に持ち寄っていた。
敵の空爆が郊外の街にまで及びはじめた夜のことです。
そう、この夜に防空団の人が尼寺に駆け込んできて「隣り街が空爆に遭っているから、速やかに子供たちを防空壕へ避難させてくれ」と息を切らせながら急を要する事態を伝えに来るんだ。
尼さんたちは手分けして寝ていることも立を起こして、境内にある防空壕へ避難させ。
尼寺がある街は田畑が広がる田舎町で、隣の街とは違い軍事的な標的になるようなものは何一つなく空爆とは無縁な街だと住民たちは思っていた。
ところが、敵の爆撃機は隣り街の爆撃を終えると余った爆弾を搭載した爆撃機が近隣の街に爆弾を捨てるように学校や病院、寺院などに投下していった。
そんな中に疎開してきた子供たちが暮らしていた尼寺があった。
尼寺に投下された爆弾は焼夷弾ではなく、強固な造りの建物を破壊する爆弾だった。爆弾は本殿に落ちたが想像を絶するすさまじい破壊力で、境内にあった鉄筋コンクリート製の防空壕をも破壊してしまった。
激しい空爆が止んで静まり返った翌朝、心配になった防空団員が尼寺を見に行くと境内に大きなクレーターのような穴があり、周囲には砕けたコンクリート片や焼け焦げた寺があたり一面に転がっていて、その中に引き千切れた子供たちの遺体が転がっている。例えようもない悲劇だけど何度も観たような気がする。
家を焼かれ家族を失った地元の人たちだったが、地元の長の呼びかけで尼さんと子供たちの遺体を拾い集め境内で荼毘に付して埋葬したそうです。
その空襲から十日後に終戦を迎えた。
「異界」
お堂の山」の参道で歌いながらマリをついて遊ぶ少女「一つ御堂に夜が明けた、二つ階段上り下り、三つ御社に火が付いた、四つ・・・」少女のボールが、お堂の山の敷地へと吸い込まれるように入っていった。
少女はボールの後を追いかけて境内へ入ろうとした、その時「駄目よ、中に入っては駄目」と母親が少女を引き留めた。少女は不満そうに「何で駄目なの」母親は「あの中に何人も履いて怪我をした人がいて物凄く危ないの、だから絶対に入らないでね」少女はうなずいた。母親は少女の手を取り「新しいボールを買いに行こうか」少女は嬉しそうに「うん」と微笑んだ。
これは、母親は娘に本当のことを話していないんだよな。
御堂の山は境内を取り巻くように道路があり、お堂正面に境内へと続く参道があり左右には桜並木もあり春には花見でにぎ合う。普段は参道が子供たちの遊び場となっていた。一見よく整備されたごく普通のお堂に見えるが、お堂の境内は雑草が生い茂り境内の松や銀杏などの樹木などは全く手入れされておらず。それどころか、境内にはいくつもの墓石とみられる物が沢山並んでいた。しかも、どの石にも苔が生えていて長年放置されて不気味な感じさえ漂っていた。
お堂の境内へ誰も立ち入ろうとしないのは何故か、話によると何年か前にキャッチボールをしていた少年が、ボールを探しに境内に入っていったきり行くへ不明になったり、境内に入っていた犬を下がりに入った人が行くへ不明になった事件が起きていた。境内の入り口には行くへ不明になった少年の捜索願いの看板が立っていた。もちろん、境内の入り口には立ち入り禁止の立札とロープが張られていた。
それから時は過ぎ去り、参道は市道になり田畑も住宅地に変わり御堂の境内の事件も都市伝説になっていた。
しかし、御堂の山の境内だけは昔と変わらず草木が生い茂り手つかずのままだった。境内の所有者は何度か境内を整地しようとしたが、工事に入った人が相次いで怪我や病に倒れる事故が起きて、何時しか工事業者の間で「呪いの御堂」と呼ばれ工事の入札に誰も参加しなくなった。
呪いの御堂の話は何度も聞いたけど、何処で聞いたんだろう。
何度か工事車両が入ったことも有り、入り口は広げられ立ち入り禁止の立て看板もロープもなくなっていた。周囲が住宅地と云うこともあり、車で来た人や配送業者のトラックが境内に車を駐車することも日常化していた。
「カルマ」
コンビニエンスストアの前、スマホにショートメッセージ田中からだ「いまどこ」添島「コンビニの前」田中「季節限定のアップルパイ買ってきて」添島「わかった」まったく田中は限定品が好きだな。
あった旬の季節限定アップルパイ、うん海軍カツカレーサンドとな見慣れないサンドイッチだけど、これも限定品かな買ってみよう。
添島は支払いを済ませると店を出てスクーターに乗って道路へと走り出した。すると、いつもの市道へ出ると風景が一変したことに気づいた「あれ、ここは何処なんだ」振り返るとコンビニはおろか街並みすら無いのだ。
目の前には桜並木の砂利道が一直線に伸びていて両側には水田が広がっていた。コンビニがあった場所には鬱蒼と生い茂る空き地があった。
気が動転した添島はスマホで田中に連絡を取る「あっスマホは繋がっている、もしもし田中」田中「慌ててどうしたの」添島「コンビニを出たら見たことのない場所にいるんだ」田中「はぁ~何言ってんの」あ~何やってんだ、そうだ、こういう時こそ落ち着くんだ。今自分に起きていることを田中に話して聞かせた。田中「うん分かった、ちょっと待っていて」田中さんは母親に添島さんが変なことを言っていると話すと、良く遊びに来る地元住民の95歳になる鈴木さんが「ちょっと、その電話を私に変わってくれる」スマホを受け取ると「添島さん、今の話をもっと詳しく私に話してくれる」すると、添島は周囲の状況を詳しく話し出した。そして、その場で撮影した画像を送ってきた。鈴木さんは「やっぱり」何がやっぱりなの、と云うと親子は画像を覗き込んだ。娘は「これ、どこの風景なの。今どこにいるのかしら」鈴木さんは「これは、70年前のこの街の景色よ」奇異な顔をする親子、母が「70年前ってどういう事」鈴木さんは少し考え込んで「この、コンビニがあった場所には尼寺が在ったの、だけど戦争で爆撃されて尼さんと疎開してきた子供たちが犠牲になるという出来事があったの」その話を聞いた娘は「でも、そう言った話なら国中で聞かれる話でしょう」鈴木さんは少しうなずいて「そう、そう言う話はどこにでもあるわ、でもね犠牲者を弔った御堂の山にはみだりに立ち入った者には必ず報いがあると言われてきたの」娘「それって、都市伝説じゃないの」鈴木さんは一口お茶をすすると「たしかにね、貴女が知る現代では何も起きていなかったから、そういわれるのも無理はないわね。でもね、昔は御堂の山にはいった者は二度と出てこれないと言われていて、実際に何件もの行くへ不明事件が起きていたの。添島さんは偶然空いた異界へ入り込んでしまったようね」娘は狐につままれた様な顔をして「そこから出る方法はあるんでしょうか」鈴木さんはうなずいて「あるわ、ただ添島さんと電話をしながら道案内をする必要があるの」娘はスマホを手に取り添島さんに電話を掛けるが繋がらない。「あれ、さっきは普通に会話が出来たのに」どうやら通話は添島からの一方通行のようだ。なぜ、スマホが通じていたんだろうか、鈴木さんって何者なんだろう。
途方に暮れている添島は、まいったなどうしようスマホのバッテリーが残り少なくなってきた。よし、これが最後だ。祈るように電話を掛ける添島「あ繋がった。添島くん聞いて、この電話を絶対に切らないで、いまから話すことをよく聞いて」何言ってんだよバッテリー残量が少ないんだぞ。「添島さん、私の云う通りに道を歩いてくれる」鈴木さんは添島さんに道案内するにあたって大切な約束を話した「今から話すことは大切なことだからよく聞いて、いい何があっても絶対に後ろを振り向かないで祠まで行くこと。誰かが呼んでも助けを求めてきてもすべて無視をして歩き続けること。いい添島さん、あなたが今いる場所は過去でも未来でもない異界なの、いま言ったことを絶対に忘れず守ってね」厳しい顔で添島に言い聞かせた。
添島さんが現代のこの場所に戻ってくるには御堂の山の鬼門にある祠に行って五体投地の祈りを捧げる必要があるそうで、当時を知る地元の人ならだれでも知っているが現代人の若者には道案内なしでは到底たどり着けない場所だった。
「償い」
何とか祠に辿り着いた添島「鈴木さん祠に着きました」少し安どした様子で鈴木さんは「これからが一番だいじだから良く聞いて」そういうと鈴木さんはは添島に五体投地の方法を教えた。そして「私が祈りを捧げている間はそのまま五体投地の姿勢を崩さないで。祈りが終わった合図は背中を3回頭を2回尻を3回叩くから忘れないで」そう言うと鈴木さんは祈りを始めた。その祈りはスマホを通じて祠の前で五体投地をしている添島にも聞こえていた。
しばらくすると祈りの声が聴こえなくなった。不安になる添島、あれどしたんだ、声が聴こえなくなったぞスマホのバッテリーが切れたのか、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイよ大丈夫なのかな。でも、言うとりにするしかないよな、それしかないんだよ。
すると、誰かが背中をポンポンと3回叩いた感じがした。よし、今度は頭を2回そして尻を3回だ。鈴木さんに言われたとおり尻を3回叩かれたので静かに体を起こすと、添島を取り囲むように30人の子供たちの亡霊が立っていた。何だよ!お前らは、怯える添島に襲い掛かる子供たち。
凶悪犯専用医療施設、白で統一された処置室の寝台の上に仰向きに寝かされ体をベルトで拘束された囚人がいる。
彼は悪夢でも見ているかのように「何故だ、どうしてこうなった、助けてくれ」囚人は大声で泣き叫んでいた。
監視室で囚人を監視している看守たち「これ、効果あるのかしら」法律で決められた事だ。死刑を廃止した凶悪犯罪者に対する刑罰が同じ悪夢を何度も繰り返し見せると云うものだった。看守の鈴木「この人に、これ何回続けるの」タブレット端末を観て田中は「あと236回だな」呆れた顔した同僚の鈴木に「あの男は少なくても30人の児童を誘拐して殺害した凶悪殺人犯だぞ」「あゝあの事件の男」二人の看守たちは窓越しに号哭する囚人を見つめていた。




