表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

短編(シリアス)

ドナー

作者: 裏道昇
掲載日:2023/07/23

思いついたので、もう一本。

良ければ読んでみてください。

 私はいつものベッドで、いつも通りに目を開けた。


「あれ? 私……」

「あゆみちゃん! 大丈夫? 意識はしっかりしてる? 今、先生を呼ぶからね」


 近くにいた看護師さんがすぐに走り寄って、私の容態を確認する。

 その姿を見て、ようやく実感が湧いた。


 ――ああ。

 ――私、助かったんだ。



 私、坂上あゆみは五歳の頃に内臓の病気で入院することになった。

 問題は私の病気は、ドナー? さんが見つからなければ助からないということだった。

 しかも、待っている人がたくさんいるらしくて、十五年以上待つかも知れないと言われていた。

 にも関わらず、数日前にドナーさんが見つかったのだ。


 そして私は緊急手術を受けて……無事に目覚めた。

 術後の倦怠感はあるが、体の苦しさは嘘のように消えていた。


 すぐにお父さんが病室へとやって来た。

 高い背にぼさぼさの髭。大きな瞳と口。男手一人で私を育ててくれて、高い医療費も出し続けてくれた人だ。

 でも、お医者さんよりも早いのはどうかと思う。


「おお、良かった! あゆみ!」

「声が大きいよ、ここは病室だよ?」


 結局、お医者さんが来るまでお父さんは叫ぶことを止めなかった。



 私はすぐに回復していった。

 すぐに立てるようになり、歩けるようになり、走ることも当たり前に出来るようになった。

 お医者さんも驚いた様子で「来月には退院して良い」なんて言っている。

 もうすぐ私は自分の家に帰るのだ。


 その頃からだった。私は白昼夢を見るようになった。

 最初に見たのは、学校だと思う。私は行ったことがないけど、テレビで見た覚えがあった。


 私は女の子と話している。同級生だろうか。

 数人で話しているとチャイムが鳴って、私達はゆっくりと席に着いた。


 このことをお医者さんに話すと、術後の負荷が原因だろうと言っていた。



 自分の部屋で過ごしている時間。

 学校でスポーツをしている時間。

 授業中に寝ている時間。


 色々な白昼夢を見ている内に気が付いた。

 いや、認めざるを得なかった。これはドナーさんの夢だ。



 退院の日。

 看護師さんに見送られながら、私は病院を出た。

 家はすぐ近くだった。お父さんは病院のすぐ近くへと引っ越したのだ。


 自宅までの帰り道。

 私は元気に飛び跳ねながら、お父さんの手を引いて歩いた。


「ははは、本当にあゆみは元気になったなぁ」

「でしょ?」


 お父さんが嬉しそうに笑っている。

 私も笑って返す。


「あれ?」


 この帰り道に見覚えがある気がした。

 そんなはずはない。私は病院の外の記憶はないんだから。


「あゆみ?」


 また白昼夢だ。

 日が暮れた部活の帰り道。

 私は何かから逃げている。この通学路を走る、走る。

 走りながら後ろを振り返る――その途端、がしっと、首を掴まれて物陰へと引きずり込まれた。

 同時に口を押さえられて、声も出ない。

 急速に意識が遠くなる。変な匂いがする。口を押さえている布に何か混じっているのか。

 相手の顔を見ようとするが、暗闇で見えなかった。

 意識が消える瞬間、すぐ隣を車が通った。ライトが路地裏を照らす。


 ――犯人の顔が見えた。



 目が覚める。


「あゆみ? 大丈夫か?」

 お父さんが心配そうに繰り返した。


「……大丈夫」

 私は震える声で何とか答えて、見上げた。


 ――高い背にぼさぼさの髭。大きな瞳と口。

 ――白昼夢で見た、その顔を。

 

 恐る恐る口を開く。


 ――私の為に、ドナーを増やしたの?


 訊けなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

以下のサイトにURL登録しています。

小説家になろう 勝手にランキング
cont_access.php?citi_cont_id=502865344&size=200

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ