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英雄たちの選択  作者: 松本一輝
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天城花音

序章




 魔力は、誰にでも扱うことができる代物だ。


 空気中に存在する魔力を自身の身体の中に取り込み、エネルギーに変換して放出したもの、それがいわゆる魔法である。


 魔力の存在が確認されてから数百年経った現在、エネルギー資源が枯渇し始めた地球において、魔力は新たなエネルギー資源と見なされ、もはや我々が暮らすうえで必要不可欠な存在となっていた。


 使い方によっては、核兵器すら無力化できる魔法は、新たな抑止力や脅威としての役割も果たすことになる。


 ゆえに各国は、こぞって魔力の研究・解析、新たな魔法の開発・解明に力を注いだ。

 しかし魔力は平等には存在しなかった。魔力濃度が高い地域と低い地域、もしくは魔力が全く存在しない地域があるのだ。かつての石油や鉱石などの天然資源がそうであったように、在る国と無い国に分かれてしまったのだ。この魔力の有無は、当たり前だが、世界に決定的で新たなパワーバランスを生みだしてしまうことになる。


 かつて世界で1番の経済大国を誇っていたアメリカ合衆国は、国土に魔力が全く存在しないことがわかった途端に地に落ちた。反対に、ヨーロッパ全土には高い魔力が検出されていた。


 この魔力の発見以来、世界中で緊張が走った。当時まだ、高い軍事力を誇っていたアメリカが、魔力の高い領土を狙い侵略戦争を起こす恐れや、魔力の高いヨーロッパ国々が、世界を統一したり植民地化したりするのではないかという恐れもあった。下手を打ったら第3次世界大戦勃発なんてこともあり得た。

 

しかしながら、そんなことにはならなかった。


人々は絶対的な魔法の力を恐れ、優位国であった国々もそれを、自国を守るための抑止力としはしたものの、行使はしなかった。


もし魔法を使った戦争を起こせば、今後数百年は癒えぬ傷が世界中に残るだろうということを、彼らは歴史から学び、理解していたのだろう。


そしてそんな状況も少しずつ落ち着いてきた頃、正式に各国首脳が集まった話し合いがおこなわれた。


この絶大な力の処遇をどうするか。それが1番の議題だった。


結果として、魔力が国土に在る国は、エネルギー資源として自由に使うことが認められた。ただし、その力が脅威とならないように管理するべく、どこの国家、宗教、思想にも属さない中立の立場である《国際魔力管理委員会》が設立された。


魔法という大きな力には、むろん大きな責任も伴う。そのために《国際魔力管理委員会》が創ったのは『魔法使い制度』というものだった。


これは、魔法を使う人のこと、すなわち『魔法使い』は、魔法学校を卒業して『免許』を取得したものだけが、魔法を日常的な範囲に限定して使用することが認められるという制度である。もっと専門的な魔法の使用は、国立魔法学校や、専門学校、魔法大学などを卒業することによって『免許』を取得することができる。普通に暮らすうえでは、日常的な魔法が使えれば、まず困ることはない。




—————そして極東の島国、日本は土地柄上高い魔力に恵まれていた。




世界で1番の魔力濃度を誇る日本は、魔力の研究・解析、新たな魔法の開発・解明が世界で最も進んでいる国であった。


この世界で1番進んでいる技術を用いて《日本国軍》という軍隊を抑止力として使っていることからもわかるように、日本は世界のパワーバランスの頂点に上り詰めていた。


 そんな日本では、徹底した魔法の実力主義社会が形成されていた。


 優秀な魔法使いであればあるほど、国にとって重要な資源と見なされ、将来に困ることはない。逆に落ちこぼれの魔法使いは、国にとって不要なものと見なされ、職にすら在りつけず、生活が困憊しているという社会構造になっていた。


貧富の差は、魔力が発見される前の時代と比べても、およそ倍以上に拡大していた。


そしてここ、東京には、日本で5校しかない国立魔法学校のうちの1つである『東京国立魔法学校』がある。


ここでは、『学生魔法使い』という『仮免許』のようなものを与えられた若者たちが、己の魔法を磨き合いながら切磋琢磨し合い、高見を目指すべく創られた場所である。


国立魔法大学を卒業すると、『国家魔法使い』としての称号を国から与えられる。


ゆえに入学倍率が1000倍以上あるという国立魔法大学は、入学できただけで既にエリートであり、将来が安泰なのである。ただし、卒業できるものは、入学時のおよそ7割という厳しい側面もある。




—————西暦2237年4月3日—————



 今年もまた、新入生を向かい入れ、『東京国立魔法学校』の入学式が行われる。


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