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おもいつき

自動運転Lv.100

作者: ろびしょー

 男はツヤ消し塗装された黒のセダンに乗り込みエンジンをかける。


 フロントガラスにG.Au.S.T(ゴースト)の文字が浮かび、スピーカーから音声が流れる。


 「おはようございます、マスター。時刻は7時50分。本日の自動運転レベルはいくつに設定いたしますか?」


 「そうだな、今日はゆっくり向かいたいからレベル5で頼む」


 「かしこまりました。レベル5での走行を開始いたします。」


 「運転席に着席いただき、シートベルトをご着用ください」


 「なお、いつでも手動運転に対応できるようハンドル、アクセル、ブレーキの位置をご確認ください」


 「それでは自動運転を開始いたします」


 車は静かに動きだす。


 エンジン音はなく、モーターの駆動音も聞こえてこない。


 まるで闇夜を漂う”幽霊”(ゴースト)のようだ。


 「ゴースト、音楽を頼む」


 「かしこまりました」


 スピーカーから音楽が流れ出す。選曲は男の持つ全てのデバイスから提供される好みの音楽の傾向、メンタル、体調、シュチュエーションといったあらゆる情報から導き出されたものだ。



 「マスター。課長から着信です」


 「わかった、つないでくれ」


 フロントガラスの一部に通話先の映像が表示される。


 「やあ、朝早くにすまない。今は職場に向かう途中か?」


 「そうです。27分後に到着します」


 「そうか、急ですまないが大阪まで飛んでくれないか? 至急対応してもらいたい案件があってな。」


 「大阪ですか?」


 「ああ、詳細は追って連絡する。のんびりでいいから10時までには到着してくれ」


 「かしこまりました」


 ここから車での移動では、到着までに6時間以上はかかる距離だ。


 「ゴースト、自動運転レベルの変更を頼む」


 「かしこまりました。いくつに設定いたしますか?」


 「レベル45だ大阪まで頼む」


 「かしこまりました。形態変化を開始いたします。よろしいですか?」


 「ああ」


 「それではフライトモードへ変更の後、目的地まで自動運転を開始いたします。」


 「安定軌道到達後に自動でシートベルトは解除されますのでしばらくそそのままでお待ち下さい」


 突然、車はボディーと同じ黒色の霧のようなものに包まれる。


 「離陸可能な直線ルートに入りました」


 「進路クリア。離陸体制に移行します」


 少し長めの直線に入ったところで加速し、車を包んでいた黒い霧が晴れていく。


 再び姿を現した車は先ほどよりもシャープな印象を受ける。さらには飛行機のような二対の主翼と後ろ側には尾翼が生えていた。


 この時代で新たに開発された素材によりボディー、フレーム、駆動機構、全ての形状を変化させることが可能となっていた。


 変化する際に”幽霊”(ghost)のように霧状に広がることからその素材は”Ghostium”(ゴースチウム)という名前がつけられた。



 飛行を開始してから約1時間、男は目的地周辺まで到着していた。


 「目的地周辺となりました。着陸体制に入ります」


 その音声とともに自動でシートベルトが装着される。


 道路へ着陸すると同時に黒い霧に包まれ、霧が晴れたあとは再び黒のセダンに戻っていた。


 「早く着きすぎたな」


 男は先程送られてきた今日の案件についての資料に目を通す。


 「ゴースト。適当に走っててくれ」


 「かしこまりました。自動運転レベルを10に変更いたします」


 「しかし人使いの荒い課長だ。今月に入って急に予定を変えられるのは何度目だ」


 「7回目です」


 「ああ、すまない。今のは独り言だ」


 「……7回か、今月は特に多いな。正直疲れた」


 男は文句を言いながら再び資料に目を通す。


 「しかも最悪だ。今日はあいつに会わないといけないのか」


 「どうも苦手なんだよな」


 「はぁ」と大きくため息をつきシートに項垂れる男の状況をモニターしていた"G. Au.S.T"が男に提案する。


 「マスター。私の自動運転レベルを100に設定されてはいかがでしょう?」


 「そうか、たまにはそれもいいか」


 「だが、100は()()だ」


 「とりあえずこの辺りで景色のいいところに車を停めてくれ」


 「かしこまりました」


 車は当初の目的地のある街中からどんどん遠ざかっていく。


 程なくして街の景色を一望できる静かな小高い山の中腹で車は停まる。


 「この辺りでよろしいでしょうか?」


 「ああ、ここでいい」


 「ゴースト、自動運転レベルを99に設定」


 「自動運転レベル99へ移行します」


 その音声と同時に車のフロント部分だけが黒い霧に包まれる。


 霧が晴れると、そこには人間のシルエットをした()()が立っていた。


 「自動運転レベル99へ移行完了」


 「今日の資料はアップロードしておいたからあとはよろしく頼む」


 「かしこまりました。それでは行ってまいります」


 そう言って男の”分身”(ゴースト)は黒い霧に包まれながら目的地へと向かっていった。

ゴーストという響きがかっこいいなと思って無理やり多用してます笑


タイトルもゴーストにしたかったです。


作品内では書きませんでしたがレベル100でどうなってしまうのでしょうか?


みなさんの想像や感想をぜひお聞かせください!


感じたままでいいので評価のほどよろしくお願いいたします!


また、100年後のハロウィンを舞台にしたHalloween2121という短編も投稿しておりますのでそちらの作品にも目を通していただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い発想、ラストも予想外でした。素直な文章で読みやすいです。 [気になる点] 楽しかったので、まだまだ遊べそうなお話ですね。 [一言] レベル100は、自分自身が乗っ取られるかな?
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