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第52話 誰だってみんな人生の主人公。

「私たちを囮にラワって男を誘き出して、倒しましょう。」

「何を言っているのか分からないよ結衣くん。」

「だから、イリスの仇をとるんです!」

「なぜ、ボクたちでやるんだい?」

「それは、イリスが仲間だからですよ!」


 するとミラン先輩が机を思いっきり叩いた。


「無理に決まってるだろ!」

「……!?」


 珍しくミラン先輩が怒った。

 いや、初めてかもしれない。


「君は蒼月華がどんなに恐ろしいのかを知らなすぎる。」

「知らないですよ、でも悔しいんです!」

「悔しいとかそんな理由で君は、戦うのか!?

 君は知らないかもしれないが、蒼月華は国1つを簡単に滅ぼすほどの破壊力があるんだぞ!

 この事件は、ボクたち生徒だけで解決出来る問題じゃないんだ。

 警備隊に任せよう。警備隊なら、"聖人"と連携出来る。"聖人"がいれば蒼月華の事も解決できる。」


 結衣は、何も言えなくなる。

 結衣は、改めて信長の方を向いた。


「信長は、一緒に戦ってくれるよね!」

「我は……、我は絶対に嫌だぞ! 戦いたくないぞ!」

「なんで! 悔しくないの!?」

「友がやられたのは、悲しいものだ。でも、更に友がやられるのは見たくない!

 それなら、これ以上の被害を出さないようにするのが得策なのではないか?」

「そん、な。」


 結衣は、その場にストン、と座り込んでしまう。


「結衣くん、信長くん。」


 そんな時、ミラン先輩が口を開いた。


「ボクは今回の事件について生徒会に報告しないといけないから、ここで失礼させてもらうよ。

 もしかしたら、外は危険かもしれない。

 帰る時は、ボクを呼んで。転移魔法で君たちを寮まで送るから。

 呼ぶ時はこれを使ってね。」


 そう言うと、ミラン先輩は石のようなものを手渡した。


「そこにある小さいスイッチを押すと、ボクに合図が送られるから。」


 そして、ミラン先輩は病室を出て行った。


「ねぇ、信長。」

「なんだ?」

「少し、1人にさせて欲しい。」

「分かった。」


 信長も病室を出て行った。




――――――――――




 異世界召喚。

 私は、何年か前に異世界召喚されてこの世界にやって来た。

 異世界召喚なんて、普通の人には有り得ない事だから、最初は戸惑ってたけど、だんだんと私は主人公なんだって思うようになった。


 魔力が無かった私は、一瞬だけ主人公から遠ざかった気がしたけど、その時"聖人"と呼ばれるアーシさんと出会って、魔力を分けてくれて、魔法の勉強をして、全ての属性の魔法を使えるようになった。


 普通、全ての属性を操るのは難しい事らしい。

 だから、私は本当に主人公なんだ、って錯覚してしまってた。

 私は強い、私に叶う奴は誰もいない。

 まるで、ラノベの主人公なんだと。


 でも、違かった。


 ターボン学園に来て分かった。

 上には上がいた。

 いや、上しかいなかった。

 私は、弱かった。

 主人公にもなれなかった。


 私は、中途半端なんだ。何もかもが。強さも、決意も。だから、友達を無くすんだ。




――――――――――




 誰もいなくなった病室で、結衣は黙ってイリスの姿を見ていた。


「イリス……、私はどうするべきだろう。」


 心の中で思っていた事が、思わず口に出てしまった。

 その時だった。


「私……はァ、大丈夫……だよォ。」

「イリス!」


 イリスが目を覚ました。


「だからァ、結衣は……結衣自身……の心配を……しなよォ。」

「うん、ありがとう。」

「結衣の……やりたい事……をやるべきだよォ。」

「うん、そうするよ。」

「風紀委員の……みんなを……守るんだ……よォ。」

「うん。」


 じゃあ、と結衣は言うと立ち上がった。


「私は帰るね。目が覚めた事はみんなに伝えておくよ。」

「あり……がとォ。」


 結衣は病室を出た。

 そして、ミラン先輩に貰った石を病室の入口に置いた。


 ミラン先輩は言っていた。

 "聖人"がいれば事件を解決できると。

 幸いなことに、私には心強い"聖人"がいる。


「イリス、私が風紀委員を守るよ。

 私のやりたいことをやらせてもらうよ。」


 結衣はそう言いながら、病院を出た。

 そして、その場で詠唱を行う。


「【蓄積(チャージ)】」


 すると足元には大量の【風球(ウィンドボール)】が発生した。


「【発射(ショット)】」


 瞬間、結衣は空高く飛んでいき、ターボン学園の外へと出て行った。




――――――――――




 次の日のターボン学園男子寮。


「よく寝た!」


 "尾張の大うつけ"織田信長は、昨日のことは忘れ、今日の予定を組み立てていた。


「今日はフライの発売日だからな。まずは、それを買ってくるとして……、」


 あ、と信長は何かに気づいたように手を叩く。


「1人で出歩くのは危険を言っていたからな、まずは結衣を連れていくために、女子寮に行かなくては。」


 その時、信長の部屋の窓を誰かが勢いよく叩いた。


「誰だ、こんな朝から。」


 信長は、窓を開けた。

 するとそこには、ミラン先輩がいた。


「信長くん、緊急事態が発生した!」

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