#3‐23 北西戦線ーマスティフ伯爵とマーゴイ侯爵軍の戦い②
その様子をルークタラス城内の作戦司令部となった部屋で見ているのは、ルーク王にアマンダ王妃たちとギャストン伯爵、スティルヴィッシュ伯爵たち主要閣僚たちだった。
「いよいよ『神の雷作戦』開始ですわね!」
プリシルが頬を紅潮させて言う。
「敵は必ずアルドラルビダカの魔術師たちを出して来るわ。その時には、攻撃魔法を使えるアンジェリーヌやジョスリーヌ、ミカエラ、アイフィ、それにアレクも出撃することになるわよ」
「はいっ!がんばります!」
魔力を使えないため、ただ一人城に残ったアレクサンドラが決意を込めた表情で返事をする。
「リリスもハウェンも今回は忙しくなりそうだな...」
「まかせてください、ルークさま!」
「アンジェリーヌちゃんたちは、誰一人として怪我させませんわ!」
リリスはヒーラーでハウェンは絶対防御のバリアーを張れる。
ルークのかわいい王妃たちを絶対に守って見せるという意気込みが伝わって来る。
「万一の場合は、私も出撃する」
ルークも城でただ部下たちの戦いを見ているだけではないという覚悟を口にした。
「それは困りますわ。もし、ルークさまに何かあったら、私たち全員、何をどうしたらいいのかわからなくなってしまいますわ!」
アマンダが眉を曇らせる。
「そうです、ルークさま。ルークさまあっての私たちなんですから!」
プリシルもちょっと口を尖らせる。
その様子がかわいくて、ルークはアマンダとプリシルを抱えて寝室に直行したかったが...
今は戦いの最中だし、そんなことをしている場合ではない。第一、ドコデモボードを作動するために一生懸命に魔力を送っているアンジェリーヌたち魔術師王妃たちに悪い。
衝動を懸命に堪えながらルークはアマンダたちを見て言った。
「だが、もし、靉靆の者の魔術の方がアンジェリーヌたちのより強力な場合は、私が出向いて、私の力で靉靆の者を味方にするしかない... 私は誰一人も失いたくないのだ」
ルークは前の世界に残して来た第一魔妃と息子のことを思い出していた。
「ルークさま...」
「ルークさま、それほど私たちを...」
今度はアマンダとプリシルが、“私たちを寝室へ抱えて連れて行ってください”的な目でルークを見つめた?
「あ、アンジェリーヌ王妃さまから連絡です!」
その時、マデンキの前にいた下士官が叫んだ。
あやうくアマンダとプリシルを抱えて― ついでにアレクも背負って?― 寝室に連れて行こうと椅子から立ち上がりかけたルークは、その声にふたたび腰かけた。
「マスティフ伯爵軍の移動完了とのことです!」
「わかったわ。じゃあ、アンジェリーヌ王妃にすぐにここにもどって来るように伝えてちょうだい」
「かしこまりました、アマンダ王妃さま」
「ジョスリーヌ王女さまからも、ゾロワリン伯爵軍の移動が終わったと連絡が来ました」
「じゃあ、ジョスちゃんにもすぐにもどるように伝えて!」
「はい!」
「ミカエラ王妃さまから連絡です...」
「アイフィ王妃さまから連絡が入りました」
次々と軍の移動完了の報告が入り、それに大してアマンダが彼女たちに司令部にもどるように指示を出す。
しばらくして―
アンジェリーヌ、ジョスリーヌ、ミカエラ、アイフィたちが次々と作戦司令部にもどって来た。
「アンジェリーヌちゃん、ジョスちゃん、ミカちゃん、それにアイフィちゃん、どうもご苦労さま!」
「大へんだったでしょう?」
「どうもご苦労さまです!」
アマンダたちがアンジェリーヌたちの労をねぎらい、ギャストン伯爵たちも「お疲れさまです」「ご苦労さまでした」とねぎらう。
「ルークさま、ひとまず任務完了です」
アンジェリーヌがみんなを代表してルークに報告する。
「うむ。ご苦労だった。さあ、みんなここに来なさい」
「はい!」
「はい」
「はい」
「はい!」
なぜルークの近くに呼ばれるのかわからないが、きっと褒めてくださるのだろうと期待に満ちた顔で列になってルークの座っている立派な椅子の前に行く。
「アンジェリーヌ」
「はい」
「おいで!」
「はい」
アンジェリーヌがルークのそばに行くと、ルークは立ち上がって彼女の細い腰に手を回して引っぱると― チューをした。
「フニュっ?!」
みんなが見ている中で、チューをされるとは想像もしなかったアンジェリーヌは真っ赤になったが、それでもうれしくて懸命に応えている?
「!」
「!」
「!」
「!」
作戦司令部にいた貴族たちは、みんなおどろいて見ている。
だが、ルークはそんな視線には一向に構わずに、初々しいアンジェリーヌとのチューをたっぷりと楽しんだ。
「さあ、ジョスリーヌ、今度はあなたの番だよ!」
「は、はいっ!」
シッポがあれば、ジョスリーヌがブンブンと回しているのがわかっただろうが、ジョスリーヌは獣人族ではないのであいにくシッポはない。
ジョスリーヌはアンジェリーヌより二つ年下だが、もうじき17歳になるので腰のラインもすっかり女性らしくなっている。
そのキュッと締まった腰を引き寄せて、チェリーのような色の可憐な唇にチューをする。
ジョスリーヌは幸福のあまり、気を失ってしまいそうで、全身の力が抜けてしまってルークに抱えられたまま感謝のチューをされていた。
「はい。次はカエラだな? さあ、おいで!」
「は、はい」
いつもは気の強い魔術師だが、ルークの前ではかわいい妻になってしまうミカエラ。
ビアストラボの戦いの時にジョスリーヌと魔法デュエルをして見事に負け、そのあとでルークの魅力にイチコロになり、ルークに乞われて妻になったミカエラだった。
なぜ、自分たちがチューをしてもらっているのかわからないミカエラだったが、たっぷりと愛情のこもったチューをしてもらったのだった。
「最後はアイフィか。さあ、おいで!」
「はい!」
アイフィもみんなの前でチューをするので顔を真っ赤にしながらそばに来る。だが、もうアンジェリーヌもジョスリーヌもミカエラもしてもらったのだ。
“私もルークさまの妻なのだから、少しも恥じることはないわ...”
意外とやわらかいアイフィの腰を引き寄せると、ルークは青い目を閉じた白い髪の美女にチューをした。
永遠のように感じられた1分間が過ぎ― いや、5分だったのだろうか?まあ、どっちでもいい。アイフィは身がとろけるような幸福感を感じたのだった。
「ルーク王殿っ、アマンダさまっ、わが軍の攻撃が始まりました!」
「マスティフ伯爵軍とマーゴイ侯爵軍が突撃を開始したようです!」
ギャストン伯爵が少し興奮した声をあげ、スティルヴィッシュ伯爵もうわずった声を上げた。
「ハンノンベリ辺境伯軍が敵の右側から攻撃開始、ドゥリンオン伯爵も始めました!」
「ゾロワリン伯爵軍もカタパルトで爆発樽でさかんに攻撃をしています!」
次々とマデンキによる報告がもたされる。
「よし。じゃあ、アンジェリーヌたちは一人ずつ私といっしょにおいで!」
「え?」
「寝室にだよ。決まっているじゃないか?」
「い、今ですか?」
「今すぐだ。あ、ジョスリーヌは...」
「わかっています、ルークさま」
ジョスリーヌとは、まだ婚約しただけで結婚してないので寝室に連れて行くことはできない。
なにせ、小国とは言え一国の王女さまなのだ。
「その代わり、あとでたくさん抱いて、あの、その、チューをたくさんしてください!」
「ああ。わかった約束だ。今回の戦いが終わったら結婚しよう」
「う、うれしいですっ!」




