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#3‐12 春来る②

 ルークドゥル勇者王国は、突如、北と北東、それに北西から侵略を受けた。 


 国境に配備していた部隊から、次々と伝書バトで急報がもたらされた。

北からはダエユーネフ国軍の12万、北東からはテアスジム国軍とダエユーネフ国軍の連合軍10万、そして 北西からは東ディアローム帝国軍とアジオニア王国軍の連合軍20万という大軍という情報だ。


 ラーシャアグロス王国も東ディアローム帝国軍が攻め入ったとの連絡があり、モモコ大王はセヴァラルボード(複数点移動盤)と呼ばれる簡略版ドコデモボードで急いで本国へ帰って行った。

セヴァラルボード(複数点移動盤)は、ルークタラス、ガジーマ、ゾオル、シリトヴェル、それにガラガスという5つの同盟国首都へ移動することが出来る。


 五国同盟は、そのことを知ったミタン王国も協定を結んだので六国同盟となったので、ミタンへも│通りゲートを開けれるようにセヴァラルボード(複数点移動盤)の行く先を増やさなければならないが、喫緊の問題ではないのでバーボン王からは猶予をもらっている。



「ダエユーネフ国軍は獣人族が主力、テアスジム王国軍は獣人族とエルフの混合軍、そしてアジオニア王国軍と東ディアローム帝国軍はいずれも獣人族が主力らしいわ」

アマンダが作戦指令室になった会議室で地図に敵が侵攻して来たところを赤鉛筆でマークしながら言う。

「テアスジム国軍とダエユーネフ国軍の連合軍、それに東ディアローム帝国軍とアジオニア王国軍の連合軍という組み合わせから見ると、かなり以前から計画していたようだな...」

「わが軍のヴァナグリーたちが繁殖期に入るのを待っていたのでしょう。敵もヴァナグリーの恐ろしさはよく知っているでしょうから」

スティルヴィッシュ伯爵が腕を組んで言う。


「敵もバカではありませんからな。我々の戦術などをよく調べているのでしょう。必要ならガバロス戦士団だけで第一線に急行しますが」

アーレリュンケン将軍が提案する。彼はガバロス族の族長なのだが、これまでの戦いで目覚ましい活躍を見せて来たことから、ルーク軍の将軍に昇格していた。ちなみに伯爵の称号も授かっていた。

「必要であれば、私も出陣しますぞ!」

ギャストン伯爵も出陣を申し出る。だが彼は軍務大臣なので、ルークも伯爵は司令部にいてアマンダたちと戦況を俯瞰的に見て適切な作戦を考えてほしいと思っている。



  東ディアローム連合軍侵攻図

(画像をクリックすると拡大出来ます)

挿絵(By みてみん)



「とにかく、至急、ここのマスティフ伯爵軍の3万と、このマーゴイ侯爵軍の3万軍を至急、エルゼレン伯爵軍の増援に行かせることが最優先よ!」


たしかにアマンダの言う通り、北西からの東ディアローム帝国とアジオニア王国の連合軍は大きな脅威だ。20万という兵力は、とてつもなく強力で、狼族で構成されているエルゼレン伯爵の軍はゲリラ戦に戦術を転換して必死に抵抗しているようだが、わずか4万ではいくら敏捷な狼族兵たちでも十日と持ち堪えられないだろう。 

 

 マスティフ伯爵軍とマーゴイ侯爵軍は、もっとも東ディアローム帝国軍からの侵攻の可能性が高いとアマンダが考えたルークドゥル勇者王国の西部の突出部に配置していたのだが、東ディアローム帝国とアジオニア王国の連合軍は、マスティフ伯爵軍・マーゴイ侯爵軍と戦うことを避け、エルゼレン伯爵軍の守っていた北西部から攻め込んだのだろう。


 マスティフ伯爵軍・マーゴイ侯爵軍とも、 重騎兵と重装歩兵を主力とする攻撃力の強い軍なので、敵もこれを避けたのだ。

 ナチスドイツ軍の侵攻を食い止めるためにフランスが膨大な費用と時間をかけて作ったマジノ戦線を、ドイツ軍が巧妙に迂回してフランスに侵攻したのと同じだ。東ディアローム帝国もしっかりとルーク軍のことを調べてから作戦を実施したに違いない。


「最善策は... ドコデモボードしかないわね。そうしないと、ルーク軍はガタガタになってしまい、世界を征服するどころか、反対に東ディアローム帝国とその同盟国に征服されてしまうわ!」

「...... わかった。緊急にトゥンシー大先生にたのんで、兵力投入地点用のドコデモボードを作ってもらおう」

「とりあえず、アスレーン辺境伯軍も、エルゼレン伯爵軍の援軍に向かわせて、リンジーアム伯爵軍はナエリンダン侯爵軍の支援。アードベッグ伯爵軍はエンギン辺境伯軍の支援ね。リンジーアム伯爵は念のため、ここに留めておきましょう」

アマンダがテキパキと防衛体制を構築する。

「ドコデモボードの到着点は... ここと、こことこのあたりね。トゥンシー大先生、一点移動用のドコデモボードを作るのに、どれだけ時間がかかるのかしら...」



   ルーク勇者王国軍配置図

挿絵(By みてみん)



「たしか、十日くらいかかるって言ってましたわ」

それまで黙って聞いていたアンジェリーヌが発言する。

「ダエユーネフ国軍には、 アルドラルビダカの魔術師たちがいるから、たぶん、今回は魔法(バトル)があると思うわ」

ミカエラが額にかかった黒い髪を払いながら言う。

靉靆(あいたい)の者が出てくる可能性があるわね...」

アイフィも同意する。

「アルドラルビダカの魔術師って、アルドラルビダカ・カゼル(龍の背骨)山脈にあるって言う魔術師学校のことよね?」

「はい、そうです、プリシルさま」



 ルークたちはミカエラたちから、ダエユーネフ共和国とアジオニア王国の境界にある龍の背骨―アルドラルビダカ・カゼルと呼ばれる山脈の高峰の一つ、ヴィビサーナパルヴァータ山の中腹にある魔術師学校のことを聞かされていた。

 アルドラルビダカ・カゼル(龍の背骨)山脈にあることから、その魔術師学校はアルドラルビダカの魔術学校と呼ばれ、その学校では高能力の魔術を持つ魔術師を養成することでテルースの世界でも有名なのだそうだ。

 しかし、アルドラルビダカの魔術学校の存在は極端な秘密主義に包まれており、標高3千4百メートルという高所にあることもあって、どのような魔術訓練がされているのか、どのような能力を持つ魔術師たちがいるのかがまったくわからず、人々はアルドラルビダカの魔術師たちのことを靉靆(あいたい)の者と呼んでいるとミカエラたちは教えてくれた。


靉靆(あいたい)の者たちは黒魔術を使うと恐れられています。私たちも十分に用心した方がいいでしょう」

アイフィの言葉を鉛のように重く感じたのはミカエラやアンジェリーヌたちだけでなかった。

「ともかく、例の“マデンキ”―魔法式遠隔伝達器―を早くバラキ師に作ってもらわないと、伝書バト通信がいくら早いと言っても、連絡をするのに三日も四日もかかっては対応も遅れるわね!」

ルークの魔術師たちが│靉靆あいたいの者のことで少し真剣になりすぎたと感じたアマンダが彼女らしくない大きな声で言った。


「お、おう。そうだな。じゃあ、私が...」

「ルークさまはここにおられた方がよろしいです。私がアレクといっしょに研究所へ行ってきますわ!」

「プリシルさま、私もいっしょに行きます」

ミカエラもいっしょに行くことになった。




   …… ◇ …… ◇ ……◇ ……  




 ソントンプ研究所に王室専用馬車と馬に乗ったガバロス騎士団の護衛で乗りつけたプリシルたちは、バラキ師の研究室でフリーズしたようになっていた。

 試験台の上に置かれていた“マデンキ”の試作品は幅1メートル以上もあるバカでかいものだったからだ。50型テレビくらいのサイズだから、その大きさが想像できるだろう。


「な、なんですの、この大きなハコは?」

「いや、なんですのって、“マデンキ”の試作品ですよ。原物の“マデンキ”の中には、うまく折りたたまれた魔法陣が入っていましてな。それを広げて描かれていた魔法陣を複写してとりつけたモノがこれです!」

「でも... これ、大きすぎません?」

「これから魔法陣を折りたたんだ小型のモノを作るんですよ。それに“マデンキ”は必ずしも球体でなければならないと言うことはないのでしょう?ならば、四角でも構わんのではありませんかな? ワーッハッハッハ!」

バラキ師が愉快そうに大笑いする。


「わかりました。では、この大きさの“マデンキ”でしたら、一つ作るのに何日かかりますか?」

「複写がかなり手間がかかるので、今、銅板に魔法陣を描かせていますので... そうですな、1ヶ月したら1台は出来るでしょうな!」

「そんなに待てません!お金はいくらかかってもいいですから、至急、ラーシャアグロス王国からでも、ミタン王国からでもドヴェルグ国からでもいいから、腕のいい銅板職人を緊急に呼んで1週間で完成させてくださいっ!」

「え?... 何でそれほど急がれて...」

「ルークドゥル勇者王国は、今、東ディアローム帝国軍の大軍に攻め込まれているんです。1ヶ月もかかっていたら、この国は東ディアローム帝国の獣人どもに占領され、バラキ師もドレイにされますよ!」

「ゲゲゲ!」


「プリシルさん、何か急用ですかな? おや、バラキ先生、どこか具合でも悪いのですか?」

そこへトゥンシー大先生が、ひょっこりドアから顔をのぞかせた。

プリシル王妃たちが来たと聞いてやって来たのだろうが、魔法陣の権威が青ざめているのを見て驚いている。


「あ、トゥンシー大先生、今、大先生の研究室にも行こうと思っていたところです」

「ほう。何かな? またセヴァラルボード(複数点移動盤)を作ってくれとでもルーク王がおっしゃったのかな?」

「察しがいいですね。たった今、バラキ師にもお伝えしたのですが、わが国は東ディアローム帝国とその傀儡国に攻め込まれています」

「なんと!?」

「それで緊急にセヴァラルボード(複数点移動盤)を〇個作っていただきたいのです!」

「それだけの数でしたら、一つ作るのに十日、いや、二週間ほどかかるから、〇個作るとなると... そうですな、三ヶ月はかかる計算ですじゃな!」

トゥンシー大先生は、科学者らしく指を折って数える。


「一週間で作ってください!」

「そんなに悠長にやっていたら、一か月後には東ディアローム帝国のドレイになっていますよ?!」

「ド、ドレイですじゃと?」

「そうです。ドレイになって、便所のくみ取りをさせられてもいいのですか? 一週間で完成させてください!必要な職人はいくらお金がかかっても構いませんから同盟諸国からも緊急に呼び寄せてください!」

「い、い、一週間じゃと?!」

「さあ、ミカちゃん、アレク、帰りましょう!私たちも出陣の用意をしなければなりません!」

「あ、はい!」

「はい!」


バタン!


ドアを音を立てて閉めてプリシルたちは出て行った。


「た、たいへんだ!わたしたちは獣人族のドレイになってしまう!トゥンシー大先生、早くセヴァラルボード(複数点移動盤)を使って腕利きの銅板職人を呼び寄せてください!」




靉靆あいたいの者が出て来ました。

小説家になろうで連載中の『DK世界に行ったら100倍がんばる!』にも出てくるバッド・キャラクターなんですが、この作品でも登場させる予定です。って、もう書いているので登場させるしかないわけですが…

本作品は『DK...』のパラレルワールドと言う設定になっていますので、『DK...』に出てくるキャラに似たのがかなり出て来ます。まあ、正直な話、ネーミングってかなり難しいので、再利用というのが正直なところなのですが(;^ω^)


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