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#3‐11 春来る①

 みんなが魔法式遠隔伝達器― 通称“マデンキ”― を見ていた研究室に突然現れたモモコ大王。

目が覚めてから、シャツだけ着たらしく― それもボタンもかけないので、ピチピチした肢体とボリュームのある胸が全開だ。


「モモコ?!」

「大王さま?」

「モモちゃん?」

「モモコ大王さまっ?」


反射的に一斉にふり向いたが... 

見てはならないものを見てしまった、と気づいた研究者たちは、あわてて“マデンキ”を見たり、壁を見たりした。


「モモちゃん、ダメじゃない。大王さまが、そんな恰好で歩いていては?」

「そんなことを言っても、私は自分で服を着たことがないんだぞ?」

バッチリと見える豊かな胸を張って自慢する大王。


プリシルが着ていたジャケットをモモコ大王にかけてあげ、アマンダが椅子にかかっていた誰のだかわからない白衣でモモコ大王の前を覆う。


「ほら、お部屋にもどりましょう。お部屋で服を着せてあげますから」

「今日はやさしく拭くんだぞ?この間みたいにゴシゴシ...」

「はい、はい。わかりました。やさしくね。早く行きましょう!」


ひと騒ぎあった後で、アマンダたちに連れられてモモコ大王が出て行ったあとで、トゥンシー大先生がニヤリと笑ってルークに言った。


「ルーク殿、デュリアのクスリが完成したのなら、よりいっそう王妃さまたちを満足させることができますな?」

「あ、ああ、そうですね。でも、あれは私専用という訳ではなく、一般にも販売しようと思っています。女性用のも含めて」


ルークがデュリアに作らせたのは、一つは前の世界で彼が重用していた、()()()()を高める錠剤で、もう一つは望まない妊娠を防ぐことができるヒニン薬だ。

どちらも、前の世界でエルフ学者が作り出したというクスリだが、その効果はデュリアがユーカワに飲ませて驚いたように、スゴイものだった。

女性用のは、たしかにクスリの効果― 避妊― 出来たかどうかは、しばらく日数が経たないとわからないが、これもアマンダたちルークの妻が常用していたクスリなので、その効用も間違いないだろう。



 近代兵器のない時代では、冬になると戦をしない。

それは常識だ。防寒服を着ていては戦いなど出来ないし、零下にまで気温が下がる冬は、あまりの低温で鉄製の武器に手の皮がくっついてしまうからだ。貴族や防具に金をかけれる者は手袋などをつけるが、雑兵はそんな贅沢品はつけないし、そんな金もない。


 と言うわけで、冬の間は停戦状態が続いた。

その間に五国同盟が締結され、ルークはモモコ大王と結婚し、さらにドワーフ族のアガリ・バンディ子爵とも結婚した。アガリはルークと結婚する直前に、ドンゴ・ロス王によって伯爵に昇格し、バンディ伯爵となった。

アガリを妻に迎えたことで、ルークタラス城におけるルークの妻はついに13人となった!

いや、あのリエルの妹のエリゼッテをいれると14人になるのだが、まだエリゼッテとは何もないので14人目には数えられないのだが― 


  オルガス王もシラ・エレン王妃も、アガリ子爵との結婚式の時に、口をそろえてルークに迫ったのだった。

「ルークさん、エリゼッテもとてもあなたになついていることですし、あの()は私似の美人ですので、リエルのように15歳になったら妻にしてあげてくださいね!」

「儂の娘を二人も嫁にすれば、絶対に得をするぞ? 西ディアローム帝国の皇帝よりも、ラーシャアグロス王国の大王よりも信頼できる友人を持つことになるからな!」 


 まあ、エリゼッテ王女の両親がどう思おうと、どんな計画を考えて射ようと、すでにエリゼッテ王女はルークタラス城の“奥”を自分の居場所と決め、自分がルークと将来結婚することは確定時効だと公言して止まなかったのだが。

 ルーク王を訪問する者がいれば、「ルーク王の将来の王妃エリゼッテですの!」としゃしゃり出て自己紹介までする始末だ。




 そして、春になった。


待ちに待った戦の時期到来だ。

しかし、ルークには予想もしない事態が発生した。



 それは―


ヴァナグリーたちの繁殖期という自然の摂理だった!

そりゃ、春になって暖かくなれば、誰でも子どもを作りたくなる?

ヴァナグリーたちは、3月から5月にかけて繁殖期に入り、6ヶ月間かかって子どもを産むのだ。


 ルーク軍の切り札はガバロス騎士団とヴァナグリー軍団だ。

それが、肝心のヴァナグリーがいなくなっては、計画通りダエユーネフ共和国へ攻め込むことが出来なくなる。所有している兵力で侵攻出来ないことはない。だが、かなりの損失が出ることは確実だし、あまり死傷者が出ると士気も下がるし、軍の中で不満が高まれば兵たちが反乱を起こしかねない。

しかたがないので、繁殖期の間は内政に力を注ぐことにした。

 

 農業と漁業はゲラルド大臣が、農園での経験をベースに生産拡大を推し進めており、灌漑設備、肥料の効率的な使用とあいまって、著しい結果を見せはじめている。牛、ブタ、羊をメーンとした畜産業も順調だし、養鶏も着実に成績を示している。これらと関連して、食品加工業の振興にも力を入れている。

 農産物にしろ、林業、鉱業、漁業などの第一次産業の原材料を販売するよりも、それらの原材料を加工して製品化する方が付加価値も増し、利益も増えるのだ。それを自国内でやって輸出すれば、貿易黒字も増加するというわけだ。


 工業製品に不可欠なのはエネルギーで、ルークドゥル国でもほかの国同様、水力がメーンだ。

水力はクリーンなエネルギーだが、河川のあるところでしか使えないと言う問題がある。この問題を解決出来るのは、石炭や石油をエネルギー源とする動力で、中でも技術的にもっとも構造が簡単なのが石炭を燃料とする蒸気機関なのだ。


 それをトムズークルとキンキ、フウキ、スイキたち三兄弟をメーンスタッフとする研究チームに開発させているのだ。蒸気機関は簡単な構造だが、高圧蒸気に耐えれるだけのシリンダーが必要で、そのためには(はがね)が不可欠だ。そして、「(はがね)を作るにゃあ“骸炭”というヤツがいるんでさあ!」とジンゴロが言ったように、ここでも石炭が重要になる。





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