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#3‐08 五国同盟③

 謁見の間までの広い廊下には、両側にズラリとドワーフ親衛隊が並んでいた。


ルークたち一行を先に立って案内してくれているのは、ハゲ頭で白いカイゼルひげを生やしたゴンド伯爵だ。


 ズングリしたドワーフ親衛隊が謁見の間の扉を開く。

奥の一段高いところにある玉座に、エール樽じゃない、ドワーフ王が座っていた。


「おお!よう参られた。朕がドワラン・ドンゴ・ロス28世王じゃ!」

ドワーフ王は意外と気さくな王だった。


パパパ パパパパ~ パパパ パパパパ~♪


《ドワラン・ドンゴ・ロス28世王が お友だちになりました!》

という声がどこからか聞こえたが、ルークは無視する。



「お初にお目にかかります。ジャバリュー・ネンンブルーメ・キャルニボルでございます」

「おう!そちの名はジロタレーパ侯爵からよく聞いておるぞ!」

「初めてだな!私はラーシャアグロス王国の...」

「ベンケー・シュテン大王だな? 何でも、そこのルーク勇者王と結婚して、蜜月旅行にドヴェルグ国を選んでくれたとか?うれしいことだ!」

「そうか。もう知っていたか!」

「ドンゴ・ロス王は、もうすでに私たちのことをよくご存じのようですね? ルーク・シルバーロードです。よろしく!」

「うむ。いかにも女好きな顔をしておるの?」

「陛下、ルーク勇者王殿は初めての訪問ですぞ?」

ゴンド伯爵が王に忠告する。


「いえいえ、構いません。ご周知の通り、美女と金儲けが好きですから!」

「そうであろう、そうであろう!王たる者はそうでなくてはならん!」

そう言って、エール樽王はオルガス王とシラ・エレン王妃を見た。

「ドンゴ・ロス王にお会いできて光栄です。ボードニアン王国のオルガス王です!」

「同じく、王妃のシラ・エレンとラング王子、ザリオ王子、それにリゼッテ王女でございます」

王妃と三人の子どもたちが優雅に礼をする。

「おう!ルーク勇者王殿に娘を嫁がせ、ルーク軍との共同作戦でブレストピア国とマビハミアン国を征服した勇敢な王と賢い王妃か!おかげで、わが国も反攻に転ずることが出来た!朕からも礼を言うぞ!」

「はは―っ」

「ありがたきお言葉」


格では同じ王なのだが、貫録が違う。

そもそも、ボードニアン王国はルークとの協定とリエルの結婚という条件で戦いに参加したのだが、ドヴェルグ王国はラーシャアグロス王国同様、以前から東ディアローム帝国とその傀儡国と戦っていたこともあり、去年戦いに参加したオルガス王はドンゴ・ロス王に敬意を示したのだ。


「そして、そこに並んでおる美女たちがルーク勇者王殿の王妃たちか...」

ドンゴ・ロス王はそう言って目を細めた。

「たしかに美女ぞろいだな? 耳の長いエルフ、耳の短いエルフ、魔術師に神教官、それに獣人娘か?」

「はい」

「ドヴェルグ国へは、ベンケー・シュテン大王と新婚旅行に来たのなら、ついでにドワーフの美女も嫁にしてくれるといいのう?」

「は?」


ルークは一瞬、聴き間違いかと思ったが、ドンゴ・ロス王はカイゼルひげのゴンド伯爵を呼んだ。


「ゴンド!」

「はっ」


ゴンド伯爵が目で合図をすると、ドアが開けられ一人のスラリとした若い娘が入って来た。

だが、ドレスは着てなく、ドワーフ軍の軍服を着ていた。

「紹介しなさい、アガリ子爵」

「初めまして。アガリ・ラナ・ガンタレーパ・バンディ子爵です!」

青い目、ブロンドの短い髪の娘はルークを見た。


そして... 真っ赤になった!


パパパ パパパパ~ パパパ パパパパ~♪


《アガリが 仲間に加わりました!》

という声がどこからか聞こえたが... やはり無視することにした。


「おい、おい!ルーク?私との新婚旅行先で、新しい女をヨメにするのか?」

モモコ大王が目を丸くしている。

「ジロタレーパ侯爵からの報告では、そこにいる破滅拳バロネス(はめつけんおんな男爵)との称号をドリアン皇帝より授かったアレクサンドラ王妃と結婚することが、五国同盟の条件だったと聞いておるぞ?」

「陛下、ちょっと話が違います...」

ジロタレーパ侯爵が訂正しようとするが、エール(タル)王はいっこうに気にしてない。

まあ、似たような条件をドリアン皇帝は提示したのだが。


「......... わかりました。では、アガリ子爵を嫁に迎えましょう。それで五国同盟に加わっていただけるのですね?」

「男の約束だぞ?」

「わかっております」

「どっちみち、アガリ子爵を妻に迎えようが、迎えまいが、協定には参加したのじゃがな!」

「ええええっ?」

「どこまでルーク勇者王が女好きかを試したのじゃ。グワ―ッハッハッハ!」

大笑いするエール樽王だった。



 形式だけの五国同盟協定書にドンゴ・ロス王が署名をしたあとは、ドワランガム宮殿に移って晩餐会だ。

ドワランガム宮殿はガラガス城の中にある宮殿で、ドワーフ王はそこに住んでいるのだ。

山海の珍味で作られたご馳走が並び、山ほどエール樽とワイン樽が運ばれ、ドワーフ族たちの尽きることのない食欲と底なし胃袋は、どんどんと料理を食べ、酒樽を空にしていく。


 晩餐会の途中で、ゴンド伯爵からルーク勇者王とアガリ子爵の婚約が発表された。

突然の発表だったが、晩餐会に出席していたドワーフたちからは大きな拍手が巻き起こった。

さらにご馳走が運ばれ、新たな酒樽がどんどんと運ばれて来て、晩餐会は大賑わいになる。


「いやあ、これでドンゴ・ロス王陛下も安心なされたことでしょう。ウィップ!」

料理をたらふく食べ、エールをプールほど飲んで、ひと際大きくなった腹のジロタレーパ侯爵が酒臭い息を出しながらルークに上機嫌で話しはじめた。

「アガリ子爵はですな、ドンゴ・ロス王陛下の命を救われたバンディ伯爵の娘で、伯爵家の唯一の跡取りなのです。伯爵には4人の息子がいたのですが... みんな戦いで死んでしまってですな。バンディ伯爵も年老いて病気であと1年も持つかどうかと言う時に、この五国同盟の話しが舞いこんで来たわけです」

「はあ... わかりました。それで私にアガリ子爵と結婚させ、子どもを産ませ、その子に伯爵家を継がせようという考えなのですね?」

「いえいえ。国王陛下はそれまでお待ちになられないでしょう。アガリ子爵との結婚と同時に彼女を伯爵に昇格し、子どもが生まれればその子に継がせるおつもりでしょう!」




 ガラガスの滞在は十日間伸びることになった。


ドンゴ・ロス王の希望により、ルークとアガリ子爵との結婚式が行われることになったからだ。

ルークたちは、十日間もドヴェルグ国にいてもしかたないので三日間だけ滞在してルークドゥル勇者王国へいったん帰ることにした。


 その理由は―


モモコ大王がたいそうご立腹されたからだ。

そう。新婚旅行に行ったドヴェルグ国で、新しい女性と結婚することが決まったからだ。


「私はルークの国をまだ知らんからな!一応、ルークドゥル国の王を夫にしたから、夫の国も少しは知っておかねばならん!」

という名目上の言い訳をドンゴ・ロス王に言って、さっさとドコデモボードを使ってルークドゥル勇者王国にもどることになってしまった。


 モモコ大王も、ドヴェルグ王国を新婚旅行先に選んだ最大の理由は、ドンゴ・ロス王と直接会って五国同盟へ参加させることにあるということは、モモコ大王もよく知っているのだが― 理性と感情の両立はラーシャアグロス王国の大王といえど難しいらしい。

 ルークにゾッコンになったモモコ大王は、新婚旅行でほかの女性と結婚すること決めたルークに嫉妬し、ゴネたのだ。まあ、それはそれでカワイイところがあるのだが。



そういうわけで、オルガス王とシラ・エレン王妃たちはドヴェルグ王国に残ることにした。

わずか十日間なので、家族でドヴェルグ観光でもするのだそうだ。




 だが― 


エリゼッテ王女は姉のリエルといっしょにルークたちとルークタラス城にもどることになった。

「私はお姉さまの嫁がれたルーク王さまの国を見たことがないから行きたいです!」

そして、()()()()()()()()()()()()オルガス王とシラ・エレン王妃は、可愛い王女のお願いを快諾したのだった?!


“おいおい... オルガス王さんにシラ・エレン王妃さん、姉妹を俺に嫁がせるつもりなのか?!”

とは思ったものの... 


エリゼッテと初めて会った時― 


パパパ パパパパ~ パパパ パパパパ~♪


《エリゼッテが 仲間に加わりました!》

という、いつものお知らせがどこからか響いて来たので、遅かれ早かれ、エリゼッテはルークの妻になる運命なのだろう...? 



 帰りの馬車では、少々ふくれっ面のモモコ大王が「もうルークとはしばらくイチャイチャはせん!帰りはみんないっしょの馬車だ!」と言うことで、ルークと12人の妻とエリゼッテ、ルファエル、マイレィの16人でさすがの6輪の王室専用馬車もせまく感じるほどだったが、みんなワイワイとけっこう楽しく騒いでいた。


“王室専用馬車の改造が必要だな。帰ったら、早速、馬車屋を呼んで改造させよう”

ひざの上と言う特等席をずーっと確保しているモモコ大王の頭をなでながら、ルークは考えるのだった。




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