#3‐07 五国同盟②
ドヴェルグ王国の首都ガラガス―
石造りの建物が特徴的なドワーフ族国の町だ。
道を歩くドワーフ市民たちは、みんな背が低い。
そしていみじくもモモコ大王が言った通り、エール樽のように横に太い。
といっても、みんながみんな太いわけではなく、若いドワーフたちは結構細いのだが。
首都ガラガスのドワーフ市民たちは、前後をドワーフ騎兵たちに守られた王室専用馬車が5台、石畳の道を走るのを驚愕した顔で見ていた。とくに隊列の中ほどを走る馬車二台は巨大なヴァナグリーが引いているので、怖い者見たさで沿道沿いはドワーフでいっぱいになった。
先頭の馬車には西ディアローム帝国の紋章がひらめいている。
だが、ドリアン皇帝は乗っておらず、代理としてジャバリュー大統領とボンガゥル公爵が、それぞれ夫人を伴って乗っていた。
二台目はラーシャアグロス王国の紋章を翻しているが、モモコ大王の姿は中に見えず、タイザン大公とエンマ大公がやはり夫人同伴で乗っていた。
三台目にルークとモモコ大王が、二人だけで新婚気分で乗っていた。
もちろん、馬車にはルークドゥル勇者王国の紋章が翻っている。四台目はアマンダたちルークの妻と子どもたちの馬車で、五台目にオルガス王とシラ・エレン王妃、それに三人の子どもたちが乗っていた。
まるで家族旅行みたいだが、長男のイシギル王子は、「イシギルは役立たずで、ルークさんの奥さんたちの胸やオシリばかり見ていますから連れて行きません」とのシラ・エレン王妃の鶴の一声で留守番となった?!
まあ、イシギル王子は20歳だが、去年同国の公爵の娘と結婚したばりだそうだから、親兄弟がいない間、新婚夫婦でしっぽりしていたいのだろう。
三人の子どもたちは、ラング王子13歳、エリゼッテ王女12歳、そして一番若いのがザリオ王子10歳だ。リゼッテは、ルークが言った通り、母親似の美少女でわずか12歳だが、すでにけっこう胸がふくらんでおり、将来男の目を釘付けにすること間違いなしの美少女だ。
やがて前方に周囲を広い堀で囲まれた石造りの大きな城が見えて来た。
ドワーフ王の居城ガラガス城だ。テルースの世界でも、その兵の強さで鬼人族とよく比較されるドワーフ族の王城だけあって、堅固な造りになっていることがひと目でわかる。
石造りの城壁にある門に続く石橋を渡り、跳ね橋を通って城の中に入る。
「おっ!もう着いたか? どうせなら、トゥンシー大先生はもう少し遠いところに│通り道を開けてくれたら、もっと楽しめたのにな!」
馬車の中でルークの上に乗っていたモモコ大王が、窓のカーテンのすき間から外を覗いて残念そうに言いながら、服を着はじめる。
「モ、モモコ... 悪いが私の上からのいてくれないか?私も服を着なければならんのだ」
「いや、まだ終わってないから、私が服を着ている間に終わらせろ!」
「無茶を言うな... さあ、早くどいてくれ!」
............
............
............
すったもんだの数分が過ぎ、ようやく満足したモモコ大王がルークの上から降りる。
ルークは少々ゲッソリしながらも、服を着はじめる。
ルークにとって幸いだったのは、城壁から城まではかなりの距離があったことだ。
「うむ。ルークは夫としては合格だな!だが、あのクスリは何だ?」
モモコ大王は、ルークが彼女とのイチャイチャの間にこっそりと飲んでいた錠剤について訊いた。
「ああ。あれはビタミンだ」
「びたみん?」
「栄養がこめられているクスリだ」
「そうか。私はまたニンニク錠剤かと思ったぞ?」
「ニンニク?」
「ああ。ニンニクはオトコに効くらしいからな!」
「......(冷や汗)」
モモコ大王は、当然、男の経験はないが、知識や好奇心は並外れているらしい。用心、用心。
ギギッ...
馬車が止まる。
コンコン!
ドアがノックされた。
「まだ着終わってない!」
モモコ大王は、アマンダたちのようなパンツルックがいいいと言って、シルクの長袖シャツを着たばかりだった。
「ルークさま、モモコ、手伝いましょうか? アマンダとプリシルとリリスとハウェンです」
「おお!早く入って着るのを手伝ってくれ!」
モモコ大王がすぐにドアのロックを外す。
「やっぱりね。こんなことだと思いましたわ!」
「モモコォ!下着も履かないでシャツだけ着て!」
「そう言うな。シンコンリョコウだろ、これは?」
「新婚旅行という名目の外交旅行です!」
「ウグっ...」
さすがのモモコ大王もプリシルにピシッと言われてだまってしまった。
アマンダとリリスがルークを手伝い、プリシルとハウェンがモモコが着るのを手伝う。
ゴシゴシ…
「イタっ、そこはデリカシーなところだから、やさしく拭くんだ!」
「何を言っているんですか?ロクに自分で拭いてないから拭いてあげているんじゃないですか?」
「ウグっ... 私は初婚だから何も知らないんだ」
さっさとパンツを履かせ、キャミソールを着せ、シャツのボタンを閉め、ベスト、ジャケット、マント、王冠...と手際よく整えていく。
一方、ルークの方も拭かれて、パンツ、シャツ、ベスト、ジャケットを着せられて、マントを付けて王冠をかぶる。
シュっシュっ
「ペッペッ!な、何だ、それは?」
「香水ですよ!ヘンな匂いが残っていたら大変でしょう?」
「私はエール樽王のひざになど飛び乗らん!ルークとドリアンのひざだけだ!」
「そのエール樽王様が近寄って来たらどうするのですか?」
「“よう!元気か?”と聞いてやる!」
「あいさつ言葉ではありません。体臭のことを言っているのですよ!」
「... ルークは、私の匂いが好きだとさっき言っていた!」
「おい、モモコちゃん、夫婦のプライベートなことを... まあ、いいか。どうせ、みんな私の妻だし!」
「ルークさまは、好きな女性には誰にでもそう言うのですよ」
「そ...そうなのか」
コンコン!
ドアがノックされた。
「今、香水とやらを吹きかけられたところだ!」
「アンジェリーヌとアイフィとミカエラです」
「もうご用意はできましたか?」
アマンダがドアを開けると、三人が入って来た。
「あらあら... シーツがグチャグチャね。ミカ、手伝ってちょうだい。丸めて洗濯物を入れる引き出しにしまっておきましょ!」
「はい」
「ルークさま... ずいぶんと張り切られたのですね」
「そう言うな。アイフィの時も同じだったじゃないか!」
「えっ、あ、あの... ド、ドワーフのみなさん、お待ちしていますわ」
自分との蜜月旅行のことを言い出されないうちに、アイフィは話題を変えたが顔が真っ赤だった。
「そうそう。アイフィちゃんの時も、すごいことになっていたわね!」
「アイフィちゃんは魔術もすごいけど、ベッドでもすごいってルークタラス城中で噂になったものね!」
「ええええええ――――――?! わ、わたくし、外で待っています!」
ピーマンのように真っ赤になったアイフィが外へ出るのと入れ替わりにフィフィとリエルが入って来た。
「ちょっと、リエルちゃんにフィフィちゃん。外で待っててくれない?」
「ええ――っ、どうしてですか――?」
「そうでス。ルークさま、アイフィさんにしたことを、私たちにもしてくださいでス!」
「あなたたち、何を勘違いしているの?」
「みんなで、この中でルークさまと楽しんでいるんでしょ?」
「そうでス!そうでス!」
「楽しんでいたのはモモコだけよ。私たちはハダカ同然だった二人を着せているの!」
「今はモモコのお化粧をしているの!」
「お化粧なんかいらん!」
「ルークさまは、きれいにお化粧をした女性が好きですよ?」
「じゃあ、念入りにやってくれ!」




