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#3‐05 日就月将⑤

 アレクとルークの結婚式はゾオルで行われた。


 ルークはモモコ大王といっしょの結婚式でもいいと思ったのだが、デュドル公爵は、「一国の大王との結婚式と貴族の娘の結婚式は別にした方がいいです」とルークに助言し、当のボンガゥル公爵も「ラーシャアグロス王国の大王さまといっしょに式を挙げるなど、恐れ多いことです」と辞退したので、別の日にすることになったのだ。


 結婚式は西ディアローム帝国の大聖堂で行われることになったが、ふつうの貴族の娘の結婚式ではない。

西ディアローム帝国とルークドゥル勇者王国の二国間の関係を強化するための、政略的結婚式なのだ。

その重要性ゆえに、ドリアンスロゥプ皇帝も帝国のお歴々たちも、有力な獣人貴族たちも一人も欠けずに大聖堂に参列していた。


 祭司を務めるのはギュウギ・ゴズ大神官だ。

2メートルを超える馬族の大男だが、体の大きさに似合わない優しい語り口で女性信者に圧倒的な人気があるという。

 

 式は3メートル以上もある弦楽器をカモシカ族の楽団が奏でる中で厳かに始まった。

大聖堂の両サイドに50人ずつ並んで弦楽器を弾くのだが、パイプオルガンとはまた一風違った荘厳さがあった。

 西ディアローム帝国とルークドゥル勇者王国の関係強化、という目的のために娘を嫁がせるボンガゥル公爵の顔はいささか緊張していた。

 ルークが待つ祭壇の前まで、美しいウエディングドレスに包まれたアレクサンドラの手を引いて歩く侯爵。花嫁のアレクサンドラは、純白でウエストから裾にかけて直線的に広がるシルエットのあるウエディングドレスを着ているが、背の高い彼女にはすごくよく似合っていた。


「ほら、あのドレス、エンパイアラインって言うのよ」

「アレクちゃん、メッチャ緊張しているわね!」

「でも、とても幸せそう!」

「政略的結婚って言っても、彼女もルークさまに一目惚れしちゃっているから、あれで幸せなのよ!」

「アンジェちゃんもジョスちゃんも、それにミカちゃんもアイフィちゃんもひと目でルークさまにゾッコンだったからね!」

「ワタシもでス!」

「そうそう。テルースの世界で、最初にルークさまと正式に結婚したのはフィフィちゃんだものね!」

「パパとママがいつも言いまス。ワタシは先見の明があったのでスって」

「それは違いないわ!」



 祭壇の前にまで来ると、ボンガゥル公爵はアレクをルークに渡した。

ルークは金の刺繍がはいった白いタキシードで、頭には見事な王冠をかぶり、青いマントをつけ、左手に王杓を持っていた。

 少し強ばった顔のボンガゥル公爵は、ルークが微笑んでいるのを見るとホッとしたようだった。

アレクサンドラの手を渡すと低い声で言った。


「娘をよろしくたのみますぞ!」

「おまかせください、公爵殿。必ずや幸せにして見せます!」

アレクサンドラはルークの顔を見てパッと赤くなった。

「さあ、アレク。創造主様の前で誓おう!」

「は、はい!」



 ギュウギ・ゴズ大神官の祭司で結婚式はとどこおりなく進み、誓いの言葉を二人で述べ、マリッジリングを交換し、みんながお待ちかねの公開チューをいつもより長めにする。

ふつうなら長くても5秒くらいなのだが、“いつも通りでは面白くないな...”と考えたルークは、目をそっと閉じたアレクのプリプリの唇に自分のを合わせ、そのままずーっとチューを続ける。


ザワザワザワ......


みんなが騒がしくなる。


“ふふふ... みんな驚いているな…”


目の端で見ると、ゴズ大神官はあきれたような顔をして見ている。

アマンダたちは、魔王時代からの妻なので、もう慣れたもので静かに見ているだけだが... 

アンジェリーヌやジョスリーヌ、フィフィ、ミカエラ、アイフィ、リエルなどは目を丸くして見ている。


ザワザワザワザワ......


騒ぎがさらに大きくなる。


アレクが堪らずに目をそっと開ける。


“ル、ルークさま?...”と何か言いたげな目だ。


唇を強く押しつけるとアレクは口を少し開いた。

そこに無理やりベロを挿入する。


「ふムムムっ...?」


アレクの目が金茶色の目を大きく見開く。


.................. 

.................. 

.................. 



「おほん!おほん!」


ゴズ大神官が、“もう、よろしいでしょう”という合図に大きく咳をする。


たぶん5分はチューをしていただろう。


アレクから離れると、彼女の目はトロンとしていた。


フ――――ウ… 

招待客たちからため息が聞こえ


ゴクン ゴクン ゴクン

ヤロウどもが唾を飲みこむ音が響いた?



「え―、それでは、ここに創造主様の元、そして皆さま立ち合いのもとで、ルーク・シルバーロード王とアレクサンドラ嬢の結婚の儀式を目出度く終えることができました。これより、アレクサンドラ嬢の名前は、アレクサンドラ・マリアンヌ・ライアンスロゥプ・シルバーロード王妃となります!」


ワーワーワーワー

パチパチパチパチ…

歓声と拍手が響く。



ルークとアレクは祝福を述べに来たゴズ大神官にお礼を言い、ドリアン皇帝にもお礼を述べようとしたが―皇帝自ら立って祝福を述べに来た?


「モゴ!今日ホド メデタイ 日ハナイ... モゴ コレデ ワガ 西ディアローム帝国ト ルークドゥル勇者王国ハ 強ク 結バレルコトニナル!モゴ!」

「ムゴ!本当にようございましたわ!これでドリアンも頭を高くして眠ることができますわ。オーホホホホ!」

ジャブイ皇后の言葉が、皇帝の正直な考えを言っているのは確かだろう。


「いえいえ、私の方こそ、テルースの世界最強の国であり、もっとも信頼できる西ディアローム帝国との関係が、今日の結婚によってさらに強固になったことを大変うれしく思うと同時に、アレクサンドラとの結婚を勧めてくださったドリアン皇帝陛下とジャブイ皇后陛下に深く感謝いたします」

ルークは深々と頭を下げ、アレクもいっしょに深く下げた。


「アレクも勇者王の妻となったからには、しっかりと務めを果たすのですよ?」

「はいっ。ありがとうございます!... あの... 妻としての務めって、ルーク王さまのためにお料理を作ったり、お洗濯をすることなのでしょうか?」

まだ13歳の初々しい妻は、何と恐れ多いことか、皇后陛下に直接、()()()()()()()()()()を聞いていた!

「あら。ホッホッホ!アレクは可愛いわね?あなたの妻としての務めは、お料理やお洗濯ではありません。そんなのは城のメイドたちにやらせればいいのです。そのために何百人も召使いがいるのですから」

「はあ...」

「あなたの務めは、たくさん子どもを産むことです」

「え...ええええええ――――?!」


いかに13歳とは言え、子どもを作るために何をしなければいけないくらいかは母親から教えてもらっている。

たくさん子どもを産むと言う事は... それを想像してアレクは真っ赤になってうつむいてしまった。


ガッハッハハ

オーホホホホ

ワーッハッハッハ

ギャーッハッハッハ

あーっははははは


明るい笑いが弾け、何を笑っているのかわからない招待客たちまで追従笑いをしていた。


ともあれ、西ディアローム帝国とルークドゥル勇者王国は、さらに強い同盟関係を築いたのだった。



「次はラーシャアグロス王国でだぞ?!」

モモコ大王が、ドリアン皇帝に次は自分の結婚式だと告げる。


「モゴ。ワシ 行ク!」


「ご祝儀、宝石たくさん持って来るんだぞ?」


「モゴ?」


さすがの超大国の皇帝も汗を流すほどのモモコ大王の遠慮なしのプレゼント要求だった?




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