#3‐03 日就月将③
「今度はアレクの番よ!」
「え... 私もやるのですか?」
「そのために来たんでしょ?」
「私は、ただ見学に...」
「やりなさい!」
「ハイっ!」
ジョスリーヌの厳しい声に飛び上がるライオン族少女。
「ただ、的も何もない空中を狙ってもしかたないから、少し斜め下を狙ってやるのよ!」
「ハ、ハイ!」
右腕を後ろに引くと―
「エ―――イ!」
力を込めて突き出した。
ズドドドド…
地面が震え、土埃で何も見えなくなった。
埃がおさまった時、みんなが見たのは、アレクの10メートルほど先から地面に幅1メートルほどの溝が出来、それが次第に広がって50メートル先では5メートルほどの幅になっていた。
深さは、最初はほんの10センチほどだが、最後の方は50センチほどになっていた。
「ふうん... まあまあの破壊力じゃない?」
ミカエラが手で髪や服についた土埃を払いながら言う。
「アレク...」
「は、はいっ」
「あなた、本気でやったの?」
「はい。私なりに力を込めてやりました、ジョスリーヌさま!」
「このどこが、“力を込めてやった”って言えるの!」
「ひぃ!」
「あなたね、本当の戦いになったら、こんなヤワな攻撃じゃあ、何十人もの敵が突進して来たら、食い止められないし... そうなったら、あなたは捕虜にされ... きれいだから、身代金と交換される前にヤロウどもにたっぷりと凌辱されるわよっ?!」
「リョウジョク?」
「好きでもない男にたっぷりと可愛がられることよ!」
「え?好きでもない男にたっぷりと可愛がられる?...」
「あなたの意思に反して〇〇〇をされるってことよ!」
ウブでその方の知識のあまりないアレクにミカエラが教えてあげる。
「そ、そんなのイヤですっ!私の操は、ルークさまだけのものですっ!」
“なに、この娘?操って、いつの時代の言葉よ?”
古臭い時代の言葉を聞いて、一瞬、あきれた顔でわずか13歳というライオン娘を見た。
「なら、死に物狂いでやって見なさい!」
「ひぇ―ッ やります、やりますっ。だから、誰にも〇〇〇されないようにしてくださいっ!」
「ごたごた言ってないでやりなさい!」
「アレクちゃん。私たちがついていればだいじょうぶですわ」
アンジェリーヌが、アレクが可哀想になってやさしく肩を抱いてやる。
「私 やります... 〇〇〇されなくないし、ルークさまのオヨメさんに相応しいと言うことを証明します!」
スゥ―――……
アレクは目を瞑ると、深く深呼吸した。
右足を一歩、後ろに引き、力をこめて右腕を後ろに引く。
見る見るうちに上腕に力こぶがもり上がる。
「!」
「力こぶハンパないわね」
「やはりライオン族って、力あるのね...」
アマンダたちがそっと言う。
「ガオオオオオオオオ――――――!」
鼓膜が破れるのではないかと思うような咆哮とともに、目にも止まらない速さでくり出された右こぶし。
ドドドドドドドドド―――――――――ン
「キャっ!」
「ひゃあ、土砂が落ちて来たわっ!」
「何が起こったの?」
「敵の魔術師の攻撃っ?」
ザラザラザラザラとひっきりなしに落ちて来る土と砂誇り。
濛々と立ち込めた埃が薄れるまでに5分以上かかった。
「なに、コレ?私の服が土埃だらけなんですけど?」
「ジョスちゃん、髪の毛が真っ黄色よ?」
「そういうミカだって顔が黄色だよ!」
みんな土埃で真っ黄色になっていた!
「みんな... アレクの破滅拳見て...」
全身、真っ黄色のアイフィが、信じられないといった顔で前を見ている。
そこには、アレクの前方10メートルあたりから、左右45度ほどの角度で焼野原が深く削られていた。
それも、最初の方は深さが5メートルくらいだが、100メートルほど先は... 30メートルの深さはあるだろう。
「あの... これでほかの男に〇〇〇されずに、ルークさまにもよろこんでもらえるでしょうか?」
あまりにやり過ぎたと思ったのか、ライオン娘が恐るおそるジョスリーヌに訊く。
「十分よ。さすが破滅拳バロネスと言われるだけあるわね!」
「アレクちゃんの攻撃能力はズバ抜けているわね!」
アマンダとプリシルが褒める。
「い、いいんじゃない」
「いいんじゃない、じゃないでしょう、ジョス。褒めてあげなさいよ?」
「アレク。私もあなたを仲間と認めるわ!」
「ありがとうございます... ウ ウ ウエ――――ン...」
何と、感激のあまり、ライオンっ娘は泣き出してしまった。
「あ、いや、その、あなたは立派な仲間よ!あなたにイジワルする者がいたら、私が氷にしたやるわ!」
「ウエ――――ン... ありがとうございますぅ、ジョスリーヌさま――」
ジョスリーヌもしかたなしに、アレクの肩を抱いて、茶褐色の髪をなでてあげている。
「さあ、じゃあ今度は神教官さまね?」
「ええ? アンジェリーヌさん、わたくしは魔法の素質も何もないのですけど?」
「あら、忘れたの? 誰でもマイレィちゃんに“ツン!”をしてもらった娘は、魔法能力を顕すのよ?」
「アンジェリーヌの言う通りよ。誰でしたっけ、マイレィちゃんにツンをされた後で、三日間熱を出して寝込んでいたのは?」
「あ、あれは風邪です」
「咳も何もない風邪?そんなのありませんわ!」
「とにかく、やって見てごらんなさいよ、アイフィさん!」
「そんなこと言われても、何をどうやったらいいのか...」
「まずは想像でしょうか。たとえば空を飛ぶとか」
「アンジェリーヌ、なに言っているの?空を飛ぶなんて...」
アイフィの体が浮かんだ。
「え?」
「浮かんだ?!」
「すごい!」
「どんな魔法使っているの?」
アマンダたちまでが大騒ぎだ。
「空を飛べたらいいな... って思ったら... 浮かんでいました。どうしたら降りれるんですか?」
アイフィが情けない声を出している。
「降りるなんて、もったいない!そのままス――っと飛んでみてごらんなさい!」
「念じるのよ、飛びたい方向と速さを!」
アンジェリーヌとミカエラがアドバイスする。
ス――…
見る見るうちにアイフィの姿が遠ざかる。
慌ててターンをしてもどって来た。スーッと降りる。
「と、飛べました!」
頬を紅潮させている神教官。
「すごいわね!私たちも飛べるようにならないと!」
「アイフィさんが飛べるなら、私たちも飛べるかもね!」
「でも、アイフィさん、次回は服装変えた方がいいわよ?」
「え?なぜですか。これは神教官の正式な衣装なんですけど?」
「あなたね、飛んでいる時にパンティが丸見えだったわよ」
「えええ――っ!」
慌ててトゥニカの前を抑える神教官だったが、もう、しっかりとみんなに見られていた。
「あら、アイフィさんもドロワーズをやめてパンティにしたのね?」
「そ、それは、ルークさまが、おパンティの方が脱がす時に色っぽ、いえ、魅力的だと...」
「それはそうよ!せっかくの魅力的なオシリなんだから、思いっきりお見せしなきゃね!」
「えええ――っ!」
さらに真っ赤になる青い目の神教官さまだった。




