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#3‐01 日就月将①

 ルークとアレクサンドラの結婚式は、1ヶ月後に行われることになった。


 ボンガゥル侯爵は、勇者国王に娘を嫁がせることができたということで、公爵に昇格された。

どちらも読みはおなじコウシャクだが、公爵の方が侯爵より上位なのだ。


 侯爵が有力な領主であるのに対し、公爵は王家の親族しかなれないのだ。

もっとも、何代か前のボンガゥル侯爵が時の皇帝の娘を嫁にもらった時から公爵の資格はあったのだが、当時は獣人族国も政治的にごたごたしていて、皇帝もその側近たちもそのことに気づかなかったのだ。


 遅ればせながら、ライアンスロゥプ家―  ボンガゥル公爵の家名― は、ようやく皇帝の親族と認められたわけだ。ボンガゥル公爵は所領も増やしてもらってホクホク顔だ。

 もちろん、ルークたちは結婚式までずーっと西ディアローム帝国に留まっていたわけではない。

西ディアローム帝国の『帝国立 錬金学・自然学・魔法学研究所』-通称 帝国研究所―という長ったらしい名前の研究所と勇者王国にルークが新たに設置したトゥンシー大先生の研究所を“ドコデモボード”で繋いで、両国間を往復したのだ。


 西ディアローム帝国の研究所の所長は、ヨギュヌーマというヤギ族の物理学者、数学者だ。メーンスタッフは所長の奥さんで数学者のヨギシューコ、猩々族の錬金学者キヴィリンジー、それと魔法陣の研究学者ウータン・オランゴだ。

 すでにラーシャアグロス王国でも、ルークが“神の盤”についてモモコ大王に話したことから、同国でも大王の命令で『科学・魔法研究所』が設立され、同国の著名な錬金術学者― アマンジャク師が所長に任命され、研究所にはアマンジャクの妻ヤッセー、魔法陣研究の権威であるバラキ、数学者のアギュルック、その他の学者や研究者たちが集められた。

 当然、『科学・魔法研究所』にもドコデモボードが設置され、三国の風変わり学者たちの交流と共同研究も進み、トゥンシー大先生の“神の盤”の研究・解読も数学者が加わったことで、研究は目覚ましい進捗を見せることになり、さらにほかの分野でも研究が進められることになった。



 ルークはダエユーネフ共和国への侵攻作戦を準備しながらも、ルークドゥル勇者王国の経済基盤の強化を最優先で進めなければならなかった。戦争というものはメチャお金がかかるのだ。

 それというのも、ルークは傭兵制を軍に採用したからだ。そもそも、テルースの世界の歩兵は、基本農民主体であり、王や皇帝が戦を起こすことを決定し、その旨を貴族たちに伝えると、貴族たちはそれぞれの領地の戦いに参加できる年齢の男の農夫を召集し、それを率いて戦いに参加する― 日本の中世でもお馴染みの― 半農半兵なのだ。

 したがって、種まきの時期や収穫期などの農繁期には召集しにくい― 無理にすれば収穫減となり、貴族の収入源となるため― し、また冬に雪が多く積地方でも戦いは出来ないという問題があったのだ。

 戦いに参加する貴族への報酬としては、戦いで勝って分捕った敵の領地を分けあたえればいいが、もし、負けたりすると報酬も払えなくなる。そんなことが2、3回も続くと、いくら自国の貴族といえど戦いに参加したがりたくなるという困った問題が出てくるのだ。

 

 その問題を解決するのが傭兵制度で、これは常備兵が主体のサラリーマン兵士となる。

そして、サラリーマンはお金、つまり給料をもらわなければ働かない。金持ちの王や皇帝は、傭兵を使うだけの財力があるが、これも戦が長引けば財政は火の車となってしまうのは、いつの世も、どの世界でも同じなのだ。

 この問題を解決するために、ルークはルークドゥル勇者王国の創立直後に経済政策を優先することを宣言し、すべての貴族の土地を国有化し、効率的に農業・畜産業・林業などを経営する計画を打ち出したのだ。


 ルークが機械技術がまだ進んでいないテルースの世界で、最初に始めた産業は縫製業だった。

そう、あのバーボン王からもらった農園で始めたファッションメーカー『モンスタイル』だ。アマンダたちが前の世界で流行していたファッション― 特に若い女性向けの斬新的なファッション― は大ヒットし、注文に生産が追いつかない状況になっているが、全て手製、つまり生地をハサミで切り、それを針で縫うという手作業なので生産効率がすごく悪いのだ。

 なので、衣服の生産を増やそうとすれば、さらにドレスメーカーやお針子さんを雇わなければならなくなり、それに比例して人件費も工房のスペースも増えるということになる。

 この問題を解決できるのが裁縫機械― ミシンであり、裁断機で、ルークは何としても研究者たちにミシンを発明して欲しかった。


 ルークはテルースの世界で勇者王国が発展するには、科学技術の発展が重要不可欠だと認識しており、そのためには研究所に優秀なスタッフを多くそろえるべく、高級を払ってでも若く才能のある研究者たちを採用するようにトゥンシー大先生にたのんだ。

 トゥンシー大先生はツテをたよって占領したブレストピア国から優秀な数学者のラジョーそれに自然学者のキンキ、フウキ、スイキという優秀な若いエルフの三人兄弟の研究者をスカウトし、すでに大先生がラーシャアグロス王国から連れて来ていた遠縁の者だと言う、からくりの専門家のトムズークルと奥さんのメリッサも加わって活況を呈するになった。


 ミシン開発を受け持つことになったのは、トムズークルで、最初にミシン開発の相談をルークが話しに行った時、研究所の自室でメリッサとイチャイチャやっていた!? 

 トゥンシー大先生によれば、二人とも愛し合っていたが、トムズークルが金にならない研究ばかりしていたのでメリッサの両親が結婚を許さなかったのだという。

 それが勇者王国の研究所に雇われたということで、ようやくメリッサの両親から結婚を認められ、勇者王国に来る1週間前に結婚したばかりだという新婚さんだった。

 からくりの研究家ということで雇われたのはいいが、何もすることはないので、二人して研究室でイチャイチャしていたという訳だ。ホテルの部屋ではないので、『Don't disturb』なんてプレートもかけられてないので、ルークはコンコンと一応ノックだけしてドアを開けて入ったのだが―



「きゃっ!」

メリッサはすぐにトイレに駆けこんだ― もちろん一糸まとわぬ姿で。


だが、トムズークルの方は平然としていた?

「おっ!ルークさんか?」


そして、何もなかったかのようにハダカの上から白衣を着ると訊いた。

「何か用ですか? 今、メリッサと取り込み中だったんだけど?」

「ああ。それは見たよ」


トイレからメリッサの声が聴こえた。

「トム、わたしの服、持って来て―!」

「おう。白衣だけでいいか?」

「なに言っているの?全部よ、全部―っ!」

「面倒だなぁ」


床に散らばっていたメリッサの服をかき集めると、トイレに行ったが…

10分ほど出てこなかった!

その間、トイレからはメリッサの歌声が聞こえて来た。


「あれ?まだいたの、ルークさん?」

ようやくトイレから出て来たトムズークルの後ろには、恥ずかしそうに彼の背にかくれるようにしたメリッサがいた。

「トムったら... ルーク王さまは、話があるから来られたのでしょう?」

「え?そうなの?ボクたちの顔を見に来たのかと思ったよ!」

「うむ。二人とも元気なようだな?それを見て安心して頼めるよ!」

「頼めるって、何かボクで出来る仕事ですか?」

「君じゃなければ出来ないだろうな」



そしてルークはボードにミシンの概念を書いて説明した。


「ふ――ん... そんなからくり裁縫機械が欲しいんだ... でも、どうやって上から刺さる糸付きの針をすっぽ抜けないで生地を縫うことが出来るのかな...」

「私も詳しい仕組みはわからないが、わかっているのは、このミシンの針は先端に糸を通す穴があり、下の部分は回転するようになっているということだ」

「ええっ?針の先に穴って、おかしい針ですね?」

メリッサの反応は当然だった。


「いや、生地を縫うという仕組みからすれば、先端に穴があるというのが分かるよ!」

トムズークルはさすがに吞み込みが早い。

「問題は、どうやって上から針が通した糸を下で生地に縫いつけるかだな... よし、あの三バカ兄弟を呼んで、いっしょに考えるか!」

元ブレストピア国の若手研究家キンキ、フウキ、スイキの三兄弟も、トムズークルにかかれば“三バカ兄弟”らしい。

「研究費は惜しまないので、メリッサとイチャイチャをやるくらいの情熱と思いを注ぎこんで、一日も早く作って欲しい」

「なんだよ、そのいちゃいちゃって?」


トムズークルは口を尖らせたが、メリッサはイチャイチャという言葉は知らなかったが、その意味するところはわかったようで真っ赤になってしまった。

トムズークルは早速、やはり大した仕事もしていなかった“三バカ兄弟”を巻き込んで、ミシンの開発にかかった。 


 ルークのもう一つの課題を解決するために、薬品・薬草が専門のユーカワと錬金術師のデュリアにたのんで、前の世界から持って来た男性の能力を高めるクスリ― いわゆるセイリョク剤― を開発させることにした。前の世界でエルフの学者が作ったと言われるその錠剤の効能は驚くほどのもので、ルーク自身、魔王であった時から愛用していたものだ。


 幸いにもアマンダたちが、かなりの量を持って来てくれていたので、妻が十人を超えた今でも夫としての務めを立派に果たせてはいるが、錠剤の残りもあとわずかなので早急にジェネリックを作らせなければならない。

 同様に、アマンダたちが持って来た日焼け止めクリームとヒニン薬の開発もさせることにした。

これもエルフ学者が作ったものだと言う。“まったく、あの世界のエルフは腹立たしいほど優秀なヤツらが多かったな...”とルークはユーカワたちに依頼した時に思い返していた。

 男性用の能力増強剤だけでなく、女性にも大好評だったと聞く日焼け止めクリームとヒニン薬を作り出したのもエルフなら、魔王だったルークの軍や黒魔術師たちを殲滅したのもエルフの魔術師たちだったのだ。


 だから、テルースの世界では、ルークは誰よりも先んじてエルフ魔術師を重用し、薬品製造においてもテルースの世界市場を席巻するつもりだった。 




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