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#2‐30 ドリアンスロゥプ皇帝⑤

 ルークたちは馬車に乗ってコロシアムに乗りつけた。

昨日、刺客に狙われたので、前後左右をプレートアーマーを付けたトラ族近衛騎兵に守られての物々しい競技場入りだった。


 すでにコロシアムの中からは観衆の騒めきと熱気が伝わって来る。

体格の大きいトラ族近衛兵に囲まれながら競技場の中に入る。アマンダとプリシルは試合をするので、戦士控室へ向かうことになり、ルークやモモコ大王、それにほかの妻たちはゾドアンスロゥプ皇帝のいる特別観覧席に行くことになるとボンガゥル侯爵は説明していたが― 


「いや、私はかぶりつきで見るぞ!」

モモコ大王はそう言うと、ボンガゥル侯爵が「いえ、それは困ります。陛下が上でお待ちです!」と言うのを無視してアマンダたちの後をついて行ってしまった。

「では、私もそのかぶりつきで見ることにします。アンジェリーヌたちは皇帝のところに行きなさい」

ルークもリリスとハウェンを連れてかぶりつきに行くことにした。


「え――っ、私たちもかぶりつきに行きたいですぅ!」

「そうです。あの獣人族戦士たちがアマンダさまとプリシルさまに真っ二つに斬られたり、目を射貫かれたりするのを近くで見たいです!」

フィフィとリエルがプーっと頬をふくらませている。

「何を言っているのですか、フィフィさんにリエル?ルークさまは、もしもの時のためにリリスさんとハウェンさんを連れて行って待機されるのよ?王妃たるわたくしたちは、ルークさまの代理として皇帝といっしょに観戦するのが、ルークさまの妻としての務めです!」

アンジェリーヌがピシっと厳しく言う。

「アンジェリーヌさんが言った通りです。わがままを言っていたら、ルークさまのお相手から外しますわよ?」

アイフィも結構キビシイ。

“いや、オレの相手から外すって、おまえが勝手に決めちゃあダメだろ?”

とルークは思ったが、もちろん口にはしなかった。


 ルファエルとマイレィも侍女たちに抱かれてアンジェリーヌたちと特別観覧席に行く。

フィフィとリエルはむすーっとした顔でルークたちの方をふり返りふり返り階段を上って行った。

が― 最後にふり返った時、フィフィは手をふっていた。


 そして... リエルは... 階段でつまづいたフリをして手を前につき、思い切りピンクのパンティに包まれた白いオシリをこれ見よがしにルークに見せて消えた?!

アンジェリーヌとミカエラはひざの長さのドレスなのだが、フィフィとリエルは若いからか、アレクと同じくらいに短いスカートを履いていた。ちなみにアイフィは神教官なのでトゥニカ姿だ。


「あら、あら... フィフィちゃんもリエルちゃんも子どもねぇ...」

「でも、リエルちゃんのオシリ、色気ありましたわね」

アマンダとプリシルの感想だ。

「ねぇ、そう思いませんでしたか、ルークさま?」

「うむ」


周りにトラ族の近衛兵がいるのだ。

ルークは勇者王国の王らしい矜持を保たなければならない。

相好をくずして口の端からヨダレをたらしたりしているわけには行かないのだ。


「さあ、行きましょ!」

アマンダの声でルークたちはアレナに入った。



ワ―ワ―ワ―ワ―ワ―――――…… 

コロシアムを埋め尽くした観衆のどよめきがハンパない。


さすがのルークも圧倒されてしまった。

コロシアムには4層の観客スタンドがあり、獣人たちで満員だ。

アマンダとプリシルは、両手を上げて観客たちに挨拶をしている?

 ゾドアンスロゥプ皇帝のいる特別観覧席は1階にあった。

総大理石造りの立派な観覧席の中央には皇帝夫妻。その左側にアンジェリーヌたちやルファエル、マイレィなどがルークたちに手をふっている。右側は皇后や側近の将軍、貴族たち。後ろに寵妃たちとその他の貴族たちがずらりと並んでいる。2階は軍服姿の将校や兵たち、3階、4階は一般の獣人のようだ。


ワワワワワワワ―ワ―ワ―――――…… 

どよめきがひと際高くなった。


「どれ、私も挨拶をするか!」

そう言って、モモコ大王が5メートルのグレイブを持ってアレナに出た。


オオオオオオオオオ――――――――!

競技場全体が揺れるようなどよめきが沸き起こった。


ベンケー・シュテン大王――!ベンケー・シュテン大王――!

ベンケー・シュテン大王――!ベンケー・シュテン大王――!

モモコ大王のシュプレヒコールが一斉に起こった。


「モモコちゃんの人気、すごいわね!」

「これなら西ディアローム帝国をうまく占領できそう!」

「そうしたら、ルークさまは三国の支配者になるわね!」

アマンダとプリシルのおしゃべりの内容が恐ろしい。

「やるか... ルーク?ドリアンはここにおるし、私とおまえとアマンダ、プリシル、それにリリスとハウェンがおれば、容易く成功するぞ?」

モモコが両手を上げて観衆に応えながら、ルークの横を通ったときにさりげなく言う。

「じょ、冗談だろ?」

「ギャーッハッハッハ!ルークが真に受けている――! ギャーッハッハッハ!」


 たしかに、無双のアマンダ、百発百中のプリシルの弓、ハウェンの絶対防御、それにアンジェリーヌ、ジョスリーヌ、ミカエラの魔法があれば、ゾドアンスロゥプ皇帝を捕らえ、西ディアローム帝国を乗っ取ることも可能だ。


 だが―

そんなあこぎな事をしてまで領土を増やしたいとは思わない。

そんなことをすれば、東ディアローム帝国のゾドアン皇帝とまったく変わらないことになってしまう。

領土と富は手に入れることが出来るかも知れないが、人心は離れるだろう。

 それに、ルークはすでにダエユーネフ国攻略作戦を進めているのだ。

二兎を追う者は一兎をも得ずだ。着実に正道を進むのが遠回りのようでも確実なのだ。


「それでは、アマンダ殿とプリシル殿のほかの方は、お下がりください!」

試合のジャッジらしい大柄な豹族の軍人が声を上げる。

ルークたちは半地下式のかぶりつきに入る。


「それでは、これよりテルースの世界最強の弓使いを決定する試合を行います!」

テルースの世界は広い。西ディアローム帝国だけでなく、ラーシャアグロス王国やほかの国にも優れたアーチャーはいるだろうが、今日のイベントを盛り上げるためにジャッジは、今日、コロシアムで行われる試合でテルースの世界最強が決まると過大宣伝している?!

まあ、ほかの国にもっと優れたアーチャーがいたとしても、クレームなどは言って来ないだろうからこれでいいのだろう。


「わが西ディアローム帝国の弓使いたちが挑戦するのは... 現在、国賓として訪問中のルークドゥル勇者王国の王妃プリシル・ギオンサトゥ・シルバーロードさまです――っ!」


オオオオオオオ―――――…

コロシアムがまたどよめく。


プリシルは、紫の髪鳶色の瞳をもつ美女だ。

観衆はプリシルの美しさにおどろく。それもそうだ。プリシル、リリス、ハウェンなどは、前の世界でその美貌さゆえにルークの妻に選ばれたのだから。

プリシルはまず皇帝のいる方に向かって優雅に礼をし、ついで観衆に向かって礼をする。


「対するわが国の挑戦者は...キツネ族弓隊のカノフォック!...」

オオオ―――――…… どよめき。

「ヤギ族長弓隊のメェミュー、ウサギ族のムッフィー、犬族のゴスホンド、ネコ族のミャオロー...... 」


オオオ―――――…… 

オオオ―――――…… 

オオオ―――――…… 


名前が呼ばれ、挑戦者たちがアレナに出てくるごとに観衆がどよめく。

総勢32人の弓に自信のある獣人アーチャーが勢ぞろいした。


「最初の試合は、最初は30メートル離れた標的に10本中7本を命中させることです。次に50メートル、100メートル、150メートル、最後に200メートル離れた標的に命中させ、その合計点で勝者を決めます!」

「あら、300メートルはないの?」

「...っ!アレナの長さが200メートルなので、それ以上は無理なのです」

ジャッジがプリシルの質問にタジタジとなり、ほかのアーチャーたちが目を丸くしている。


「それでは、全員、アレナの右端に移動――っ!持ち矢は各標的に10本です―ぅ!」

ジャッジが叫ぶと、アーチャーたちからブーイングが出た。

「え――っ、たったの10本? 少なすぎるよ!」

「せめて30本はいるぞ?」

「アタシは50本ほしい!」

「不満な者、出来ないと思う者は退場してもけっこうです!」

ジャッジの言葉に、5人ほどがあきらめて出て行った。


「全員、位置につきましたね?競技相手を射ると即逮捕され厳罰に処せられます!」

ジャッジが釘を刺す。皇帝からの褒美欲しさに競争相手を撃つ不届き者が出ないとも限らないからだ。

「それでは制限時間は各標的ごとに10分間です。はじめ―――っ!」


シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ―――

ダダダダダダダダダダン!


5秒もしないうちにプリシルは10本の矢を射って全てを標的の中心部分に命中させてしまった。


「え!」

「なに?」

「早っ!」

「見ろ、全部中心に当てているぞ?」

ほかのアーチャーたちがあっけにとられている。


オオオオオオオ―――――…

コロシアムがどよめく。



15分後、50メートルの距離に置かれた標的も10発10中、次の100メートルも10発10中だった。

この時点で獣人族アーチャーたちは10人も残ってなかった。あとはみんな脱落だ。


標的が150メートルの距離に置かれたとき、7人が距離を見てから参加をあきらめた。

150メートルの標的にも10本全部を中心に当てたプリシル。


最後の200メートル離れた標的を射るのに残ったのは、キツネ族のカノフォックと ヤギ族のメェミューだけだった。


「いや、200メートルはさすがに7本当てるのはムリだな!」

「メエ!そうだわね。でも、プリシルさんほどの弓使いと最後まで競い合ったって、後々までも自慢できるわ」

二人とももうとっくにあきらめていた。

「ふふふ... カノフォックさんとメェミューさんもすごいわよ?私のはスキルだから、誰も敵いっこないのよ!」

プリシルも二人の健闘を褒める。


「それでは、最後の的宛て競技はじめ―――っ!」

ジャッジがかすれた声で叫んだ。



結果は... 


当然、プリシルの10発10中で優勝だった。

カノフォックは3本当て、メェミューは2本当てた。



オオオオオオオオオオ―――――…


コロシアムがどよめいた。




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