#2‐21 ガジーマで結婚式①
ベンケー・シュテン大王は執事に命じて、閻羅宮にある客室まで案内してくれた。
花嫁となるアイフィは、鬼人侍女長が別のところに連れて行く。そこで髪をセットしたり、メイクをしたり、ドレスの着付けなどをするのだろう。
執事は好々爺と言った感じの鬼人だった。
たぶん、かなり長い間ベンケー・シュテン大王に仕えているのだろう。
もしかすると先代大王のころから。
「大聖堂での結婚式のあとの祝宴までは、ちょっと時間がありますのでお部屋に軽い食事をもって来させます。どうぞ出かけられる前に召し上がってください。支度が整いましたらお知らせください。
お部屋のテーブルの上にある鈴を鳴らすと、すぐにサーバントが参りまして、馬車の場所までご案内いたします」
そう言って執事が出て行ってから5分としないうちに、鬼人のメイドたちがトレーに乗せた軽食をもって来た。
ルークたちはさっそく腹ごしらえをする。軽食は白パンに燻製ハムや魚の酢漬けなどを挟んだサンドイッチとフルーツジュースで、サンドイッチは結構おいしかった。
それから風呂にはいって体を洗って― ルークと妻たちはいっしょの部屋だったので、広いバスルームではアマンダから始まってリエルまで、長い時間かけてイチャイチャをたっぷりと楽しんでから、結婚式へ行くため着替えをした。
アマンダとプリシルは、もうすでにトレードマークみたいになった“リボンの騎士”風なジャケットにパンツだ。
だが、結婚式に参列するので、アクアマリーン色を基調としたシックな衣装で、頭にはアクアマリーンを散りばめた美しいティアラをつけている。
プリシルはスプリング・グリーン色を基調としたジャケット&パンツに、エメラルドを散りばめたティアラで髪を飾っている。リリスとハウェンはイブニングドレスだ。リリスはライトシアン色でハウェンはバイオレット色。それぞれトパーズのティアラとアメシストを散りばめたティアラ。
アンジェリーヌとジョスリーヌは、ミニスカートにブラウスとジャケットのフォーマルスーツ姿だ。ミカエラはレースがたくさんある薄いピンク色のロングのイブニングドレスと真珠のネックレス、そしてフィフィは花柄をあしらった白と赤が基調でスカートの部分がフワフワしたミニスドレスで、首には豪華な宝石のネックレス。
そして― リエルは... 何とラベンダー・ブラシ色のマイクロドレスだった!
「リエルちゃん... そのドレス、短すぎない?」
「ちょっと前かがみになったら、おしり丸見えよ?」
侍女にドレスを着せてもらっているリエルを見て、アマンダとプリシルが驚く。
「だいじょうぶです!ほら、上からオーガンジーのスカートがひざ下までありますし、パンティも履いていますから!」
「パンティ履いている、履いていない以前の問題だと思うんだけど...」
「でも... そのオーガンジー、透け透けじゃない?」
「そうなの。見えそうで見えないと言うところが、このファッションのミソなのよ!」
ルークはリリスにタイを閉めてもらいながら、姿見に映っているリエルの後姿をを半分呆れた顔で見ていた。
「ほらね!これくらいの角度まで前屈みになってもダイジョウブ...」
そう言いながら前屈みになるリエル。
バッチリとTバックの食い込んだオシリが見え、リエルの視線が鏡を見ているルークの視線と合った。
「あら、愛しいルークさま。私のオシリは少しは色っぽっくなったかしら?」
「う...む... あと4、5年ほど揉んだら、アマンダやプリシル並みになるだろう...」
「え――っ、そんなにかかるの――?!」
「ルークさま、そろそろ馬車に乗る時間ですわ」
“まったく、子どもはこれだから”と言いたげな顔でアマンダがルークをせかす。
「おう。そろそろ行こうか」
「「「「「「「「「は――い!」」」」」」」」」
鬼馬に乗った鬼人親衛隊に先導されて、ガジーマの石畳の道を大聖堂に向かって走る。
今回は結婚式なので、ルークたちもヴァナグリーに乗らずに王室専用馬車を使っているが、馬車を引いているのがブレータとギバオーなので、道沿いにいるゾオルの市民たちも怖がって道から下がったり、子どもなどは泣き出したりするしまつだ。
鬼人兵軍楽隊が賑やかに演奏をしている大聖堂に到着し、ルークは大礼拝室には入らずに外廊下を通って奥にある控室へ行く。アマンダたちは大礼拝室だ。
ザワザワと騒がしかった大礼拝室が、アマンダたちが入場したのだろう―
オオオオ――……
感嘆のどよめきに変わった。
ルークは控室にあいさつにやって来た鬼人のアンリュモ大神官としばし話していたが、大礼拝室から響いて来たどよめきで一瞬、話しが中断した。
「ほほう... ルーク王の奥さま方は、どこへ行っても注目の的ですな?」
アンリュモ大神官は、ラーシャアグロス王国におけるエテルナール教の最高権威であるが、今日の結婚式は友人でもあるオジロン・ヒッグス大神官の姪の結婚式ということで、ヒッグス大神官に司祭の役目を譲ったのだ。
「そうですね。ミタン王国の王女二人とボードニアン王国の王女一人が妻ですから、いやでも注目を浴びるのでしょう」
謙遜しながら答えるルーク。
だが、彼は美しい妻たちを9人、いや、今日のアイフィ神教官を加えると10人になるのだが― を持てることに大きな満足感を味わっていた。
「いえいえ、ほかにも前の世界からお連れされたと言う、アマンダさま、プリシルさま、リリスさま、ハウェンさま、それにドワーヴァリ族の王女ソフィエッタさまと美貌の魔術師として有名なミカエラさまもいらっしゃるではないですか?......
うらやましい限りです。おっと、聖職者である私が言うべき言葉ではありませんでしたな。
聞かなかったことにしてください。ワーッハッハッハ!」
エテルナール教の聖職者は妻帯は許されているが、大神官といえど男だ。
やはり美女は気になるのだろう。だが、ルークはアンリュモ大神官が、多心などなく、ただ単に美女を愛でているだけなのだろう。
「ルーク王さま、花嫁がそろそろ入って来ます。聖壇の前へお越しください」
若い鬼人の助祭のが知らせに来たので、ルークはもう一度服装をチェックしてから控室を出て大礼拝室にはいる。祭壇の前にいたヒッグス大神官がルークを見て微笑む。
軍楽隊の演奏がひと際大きくなったと思ったら、アイフィがメチャ緊張している父親に手を引かれて入場して来た。
オオオオオオオ―――――…!
大礼拝堂を埋め尽くした招待客たちが、一斉に入口をふり向いて嘆声をあげる。
純白の裾が大きく広がったウエディングドレスは胸から袖、裾にいたるまでビーズで装飾されたビジュードレスだった。下地は透けたオーガンジーを使っているので、お腹のところとか胸の谷間あたりは肌が透けて見えるが、決して色っぽくなく、却ってアイフィの女性らしさを強調している。
彼女の白い髪は、まるでこの日に純白のドレスを着るためにあるかのように、美しくマッチングしていた。
そしてこれも薄いロングケープが、まるで女神が降臨したかのような神々しさを醸し出している。
赤絨毯の上を静々と歩くアイフィは、しっかりと真正面にいるルークを見つめていた。
その青い目はキラキラと幸せそうに輝いていた。
ルークはアイフィの手を取ると、祭壇の前に行き、二人は頭を垂れた。
ヒッグス大神官が『旧約聖神書』の教えを読み、二人は創造主様に誓いをする。
そのあとでマリッジリングの交換が行われる。
「え――っ、おほん。ここに創造主様とご参列の皆さまの前で、ルーク・シルバーロード勇者王はアイフィ・ウィンテル・テフを正妻として迎えることが出来ました。これより花嫁の名前はアイフィ・ウィンテル・テフ・シルバーロード王妃となります!」
オオオオオオオ………
招待客たちがどよめき、その後でヒッグス大神官にせかされて、いつも通りの公開キスだ。
キャ――――!
オオオ―――!
ワオ――――!
これもいつも通りの叫び声や悲鳴が招待客たちから上がる。
「皆さま、これにてとどこおりなく結婚の儀式を終えました。結婚記念の晩餐会は、これより閻羅宮において行われます。本日はたいへんありがとうございました」
ルークとアイフィは手をつないで、まず最初にヒッグス大神官にお礼を言う。
「ヒッグス大神官殿、どうもありがとうございました!」
「ヒッグス叔父さま、ありがとうございました!」
「なんの、なんの!ところで、ルーク王殿はアイフィの花嫁ドレスをお気に召したかな?」
「いえ、驚いたのなんのって... あまり美しかったので、あのまま時間を凍結したかったくらいです!」
「まあ、ルークさま、大袈裟ですわ」
「オヘソあたりと胸の谷間あたりの肌が透けて見えるのが、とてもそそったよ!」
「そ、そんなところを注目していたのですか?」
アイフィがパッと赤くなる。
「あっはっはっは!さっそくノロケですか?」
「ナニナニ、ルークがまだ花嫁を蜜月旅行にも連れて行ってないのにノロケているだと?」
モモコ大王が祝いを言いに来て、ヒッグス大神官の言った言葉をくり返す。
「あ、ベンケー・シュテン大王!本日はどうもありがとうございます」
「シュテン大王様、本当にありがとうございます」
周りに多くの招待客がいるので、ルークもラーシャアグロス国王をモモコと呼ばずに、ふつうの呼び名でいう。
「ギャハハハハ!何を他人行儀な言葉で言っておるのだ? 次は私と結婚するのだぞ? モモコでいい、モモコでな!」
「は、はあ...」
「モモちゃんでもいいぞ? ギャーッハッハッハ!」
ひとしきり大笑いした後で、ヒッグス大神官に向かって真顔で訊く。
「ところで、大神官殿は、なんでアイフィの花嫁ドレスをルークが気にいったかを聞いていたのだ?」
「アイフィ、いえ、テフ神教官の今回の結婚については、エテルナール教総本山のアガピウス教皇聖下が大変関心をお示しでしてね。是非、ルーク勇者王殿に一度お会いしたいと手紙を頂いておるのです」
「つまり、その、なんだな。教皇さまもルークを味方につけておきたいと言うことか?」
単刀直入な鬼人国の大王だ。
「まあ、そんなところでしょうな...」
アンリュモ大神官も頷く。
「まあ、そんな政治がらみの話はあとだ!まずは宮殿へもどって祝いの宴会だ!」
モモコ大王は、右腕にルーク、左腕にアイフィと腕を絡ませて、意気揚々と大聖堂を出た。
が―
後ろの方でなんだか、騒いでいると思ってふり返って見ると―
何と、あのマイクロミニスカートを着たリエルが若い鬼人の娘たちに囲まれていた?!




