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#2‐19 ベンケー・ シュテン大王①

 ルークたちの乗った馬車は、鬼人衛兵が門を守る壮大なレンガ造りの宮殿の庭に入って行った。


シュテン大王の宮殿は大きなドーム型の屋根がいくつもあり、レンガも陶器製らしく陽の光を反射して白く光っている。青いドーム屋根の色とマッチしておりとても荘厳だ。



 ベンケー・ シュテン大王。北のドヴェルグ王国、南のラーシャアグロス王国と言われる、西ディアローム帝国の存続を可能したらめていると言っても過言ではない二大同盟国だ。

 5年前にゾドアンスロゥプ皇帝によって任命されたジャバリュー大統領の外交政策で、テルースの世界の西の巨人国であるアングルスト帝国とベルミンジャン王国と同盟協定を締結することに成功した。

そしてトロール軍を東ディアローム帝国との戦いに参加させ、西ディアローム帝国とその傀儡国の攻勢を鈍らせ、その間に自国の軍を再編し立て直した。


 このジャバリュー大統領の優れた外交手腕によって、それまで西ディアローム帝国は(東ディアローム帝国)から、ドヴェルグ王国は(レウエンシア大公国)東南(東ディアローム帝国)から圧迫されていた状況を変えることに成功したのだ。


 さらに、ゾドアンスロゥプ皇帝もジャバリュー大統領も予想もしなかったことが起き、状況は一変した。

それは“勇者ルーク”と名乗る未知の貴族の軍― あっと言う間に軍を持ってしまっていた?!― とデュドル公爵軍、および西ディアローム帝国側についたダルドフェル伯爵軍やナエリンダン侯爵軍、スティルヴィッシュ伯爵軍などとの連携作戦によって、ブレストピア国とマビハミアン国が敗北し、占領されるという信じがたいことが起こったのだ。


 それまで東ディアローム帝国とその傀儡政権国から攻められる一方だった西ディアローム帝国とその同盟国は、今や反対に東ディアローム帝国を包囲するまでになってしまったのだ。

 そのルークという耳の短いエルフはマビハミアン国をルークドゥル勇者王国と改名し、勇者王と名乗り、ミタン王国の王女二人とルークのおかげで同盟国となったボードニアン王国の王女、それにドワーヴァリ族の王女とエルフ魔術師の5人と一度に結婚式を挙げたという驚くべき報告まで届いた。


 結婚式に西ディアローム帝国皇帝の代理として出席したボンガゥル侯爵からの報告によれば、《勇者王ルーク・シルバーロードは()()()()()()()()()()である。皇帝陛下も一日も早くルークに会い、友誼を結ばれた方が良いと考える。

 ただ、無類の美女好きのようで、すでに4人か5人、妻を持っていながら、さらに今回新たに5人の妻を迎え、あろうことか美貌で才女の名高いテフ神教官をも愛人にしてしまったと聞く》とボンガゥル侯爵がルークと会った時の感想とその後いろいろと聞いたことを報告していた。



 デュドル公爵はボンガゥル侯爵とともにガジーマに行き、それまでの戦いの経過、ルークドゥル勇者王国の状況などをベンケー・シュテン大王に報告した。


「ルーク・シルバーロード殿は並みのエルフではありません。大王さまも一刻も早くお会いになられた方が宜しいでしょう」


「デュドル公爵殿の言われる通りだ。儂も皇帝陛下に一日も早くルーク・シルバーロード殿に会われるように手紙で伝えておる!」


「... そうか。二人がそこまで言うエルフなら会って見るか!デュドル公爵もビアストラボの戦いで大きな借りを作っておるしな。王として一応、その礼も伝えねばならんからな!」


「ははっ。では、大王さまの予定を見ましてから...」


「いや、わたしの予定などどうでもいい。第一線で軍の指揮をとっているわけでもないので毎日ヒマだしな。ルークとやらの都合のいい日に参るよう伝えよ!」


「承知いたしました」


というような経緯があって、今、ルークたちは閻羅宮(えんらぐう)にいるのだ。

  



 ルークは、ガジーマの町はずれに近いところにある変人研究者たちの研究所から、いつも通りにブレータとギバオー、それにゾビン、ゾフィ、ロレーゾにギラたちヴァナグリーに乗ってアンジェリーヌ王妃たちが乗る王室専用馬車を先導する形で閻羅宮(えんらぐう)の広い敷地に入った。

 今回、ベンケー・シュテン大王の“国賓”としての招聘に応じて来たのは、ルーク、アマンダ、プリシル、リリス、ハウェン、アーレリュンケンと、新妻であるアンジェリーヌ、ジョスリーヌ、フィフィ、ミカエラ、リエル、それにアイフィだ。


「アイフィ、ベンケー・シュテン大王から招待されているんだけど、いっしょに行かないか?」


「い、行きません...」


アイフィはベッドの上でルークから訊かれた時、思わずそう答えてしまった。

ガジーマにおける神教官としての任務期間を途中で放り出した形になってルークタラス城に住むようになった。いや、正確にはルークタラス城の“奥”に、ルーク王の妻同様の待遇で住むようになってしまい、その事はすでにガジーマ中に知れ渡っているに違いない。


“今さら、どんな顔をしてガジーマに顔を出せと言うの?アンリュモ大神官さまに合わせる顔もないわ…”


そんな考えが頭をよぎり、ルークにそっけない返事をしてしまった。


「す、すみませんっ、ルークさま。別にルークさまといっしょに行くのがイヤでは... ムグっ!」


最後まで言わせずに、チューをされてしまった。


長いチューをしたあとでルークは優しくアイフィの髪をなでながら言った。


「アイフィの考えていることは全てわかるよ。そうだな、じゃあ、こうしよう。ガジーマの大聖堂で結婚式を挙げよう!」


「え? えええええ――――?!」



 神教官としての任務期間を中断した形で、“ルーク王の新しい愛人”になってしまったアイフィは、このままルークタラス城の礼拝堂の祭司として一生を終わるだろう... と思っていたのだが

何とルークは正式に結婚して妻にすると言ってくれたのだ!それもガジーマで!


「う、うれしいですっ!」

ヒシっとルークにしがみつく白い髪のエルフ美女神教官だった。

 



 馬車の後部座席で、アイフィは1ヶ月前の寝室での事を思い出して一人赤くなっていた。


「どう、アイフィちゃん?ルークさまとの生活は?」


そんなアイフィの考えを読んだように、前の座席に座っていたアンジェリーヌが微笑みながらふり返って訊いた。


「はい。とても幸せです」



アンジェリーヌは、ルークをもう2年半近く知っている。

彼女はルークに命を救われて、その時からルークさま一筋だと恥ずかしそうに笑いながら語ってくれた。

アマンダたちは前の世界からのルークの妻と言う事で、アンジェリーヌたち新妻も一目置いていた。

それに、魔術師であるアンジェリーヌやジョスリーヌ、それにミカエラをのぞくと、リエルもアイフィも特別な能力も才能もない。


そんな中で、アンジェリーヌは年の割に落ち着いた性格からか、身分のまったく違うミカエラやアイフィとよく話す。ジョスリーヌとは年が離れすぎているからか、ミカエラやアイフィとはあまり話が合わないが、フィフィやリエルと仲がいい。


「そう。よかったわ。あなたが一番最後で、正式に結婚もしてないから肩身の狭い思いをしているんじゃないかって、ミカエラもいっしょに心配していたんだけど... ねぇ、ミカエラ?」


「はい。そうです。そもそも神教官でしたし」


「で、どう? 寝室ではたっぷり満足させてもらっている?」


「え... それは その... よかったです」

真っ赤になってしまったアイフィだった。




 宮殿の正門を入ったルークたちは、5百メートルほど幅広い道を進む。

何とも広大な庭園だ。“正門からこれだけ入口が遠いって、ルーブルより大きんじゃないか?”などと考えながら、よく手入れされた庭園を眺めながら走る。


 芝が絨毯のように一面に飢えられ、色とりどりの花や木などが植えられていて、かなり大きな池もあり、噴水からが勢いよく水がふき出している。


 橋を通って池を渡り、馬車寄せに止まると、すぐに鬼人の従者たちがやって来たが... ヴァナグリーを見てビビっている!それもそうだろう。アーレリュンケンが従者にヴァナグリーたちを休ませるところを訊いて ― 厩舎だろうが、大王の馬がヴァナグリーを見て脳卒倒を起こすかも知れない― その場所へ向かう。


 ルークたちは出迎えてくれた鬼人族の貴族にあいさつをして、貴族に先導されて階段を上り、宮殿のエントランスホールに入る。ここでも入り口の両側に衛兵がいる。


 宮殿の中の広い廊下をしばらく歩くと謁見の間に着いた。その間、鬼人親衛隊らしいガタイの大きい兵士がずらーっと並んでいた!


 大きな扉の両横にいた親衛隊が扉を開く。ルークたちは謁見の間に入った。

謁見の間は20メートルほどの奥行きがあり、それほど大きいものではないが、やはり豪華だ。


 一番奥の高い壇の上に黄金の王座があり、そこにベンケー・シュテン大王は座っていた。

その玉座の後方の壁には、ラーシャアグロス王国の大きな紋章が描かれたタイルが張られており、その下に長さ7、8メートルはありそうなグレイブが飾られてあった。恐らく鬼人戦士の強さを示しているのだろう。


 立派な王冠を頭にかぶり、豪華とか言いようのない衣装に包まれている。

金糸を織り込んだ上衣の上に白いフサフサした毛のあるガウンを纏い、その上から鮮やかな赤い― 鬼人族国の紋章と同じ色だ― マントを羽織っていた。



 ベンケー・シュテン大王は右手には黄金王杓を持ち、足を組んでルークたちを見ている。

大王の左右には、一癖も二癖もありそうな鬼人貴族たちが控えていて、ギョロリと大きな目でルークたちを睨むように見ている。


「ヒャっ... 怖いわ!」


「わたくし帰ります!」


ジョスリーヌとリエルがビビってしまった。


「ジョスリーヌ、リエル、シュテン大王との謁見なのよ!言葉を慎みなさい!」



「どうかされましたか?!」


案内をしてくれた鬼人貴族― エンマ大公と名乗っていた― が、

ふり返ってギロリとジョスリーヌとリエルを睨んだ。


「ヒィイ――!」

「イヤ――ア!」


ジョスリーヌとリエルは回れ右をしてドアから逃げ出そうとした― 


 が... 


そこには、親衛隊の2メートルもある鬼人兵が通せんぼをするかのように立ちふさがって... 


二人を睨んでいた!!!




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