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#2‐18 ルークドゥル勇者王国⑥

 すらっとした長身のヒッグス大神官の姿を見て、

ルークは主賓たちに断って席を立ち、大神官の方へ歩く。

大神官の後ろには、あの美女エルフ神教官がいた。


「勇者王殿、素晴らしい晩餐会ですね!」


大神官はニコニコ顔だ。テフ神教官はルークに頭を下げたが、なぜかその顔は真っ赤だった。

大神官は青いキャソックを着ており、テフ神教官は水色のトゥニカを着ていたがウィンプルはかぶってない。


美しい白い髪をポニーテールにしている。顔をあげた時、ルークの目と合ったが... 

さらに赤くなってうつむいてしまった?!


「おやおや... テフ神教官もルーク殿の魅力に惹かれたようですね?」


「そ、そ、そんなことは、ありませんっ!」

真っ赤になって否定するテフ神教官。



そんな神教官を見ながら、大神官に訊く。

「ヒッグス大神官殿、何かあったのですか?」


「ああ、どうも申し訳ありません。いや、この()、いえ、テフ神教官がね... 

あのトゥンシー大先生が作り出された│通りゲートとか言うところを通って、

研究室に現れたのですよ...」



 トゥンシー大先生とアンジェリーヌは、ハイラガズ山 から神の盤を使って― というか、設定を間違えて、ラーシャアグロス王国の王都ガジーマに跳んでしまった。

 アンジェリーヌが同盟国であるミタン王国の王女であることから、ゾドアンスロゥプ皇帝からは手厚くもてなされ、トゥンシー大先生がガジーマで見つけたウラシーマ、トムズークル、ユーカワなどの変人研究者や学者と神の盤の研究を始めたのだが... 


 アンジェリーヌは一日も早くルークの元に帰りたがったのだが、神の盤はアンジェリーヌの魔法なしでは作動しないことからトゥンシー大先生や変人研究者たちに引き留められて、1年近くもガジーマに留まるハメになってしまったのだ。


 アンジェリーヌは毎週のようにルークに手紙を出し、ルークも1ヶ月に1回ほど返事を出し、しばらく遠距離恋愛が続いたのだが、ようやく神の盤の正しい操作方法を解明でき、すぐにルークドゥル勇者王国に飛んで来たのだった。

 以来、ガジーマにある変人研究者たちの研究所― あれでも一応、王立研究所らしい― から勇者王国への│通りゲートは頻繁に使われるっようになった。

 そして、ある日ひょっこりテフ神教官がやって来て、ラーシャアグロス王国でも噂になっていた別の世界からやって来たという耳の短いエルフが― 征服したマビンハミアン国で5人の花嫁と結婚式を挙げると聞いて、好奇心から居ても立っても居られなくなり、│通りゲートを通って勇者王国の研究所にやって来たのだそうだ。


 そして、彼女の叔父であるヒッグス大神官が結婚式の司祭を務めると知って、

「叔父さま、お願いです。是非、私に司祭をやらせてください!」

と願い出て、そのあまりの真剣さに可愛い姪のために司祭を代行させたらしい。



「ど...どうも、ご迷惑をおかけしました...」

真っ赤な顔のままふたたび頭を下げるテフ神教官。


「いえ、謝らなくてもいいですよ、アイフィちゃん」


「ア、アイフィちゃん???」



 若くても神教官である。

誰でも、どこの国でも神教官さま、神教官殿と呼ぶが、アイフィちゃんなどと幼馴染を呼ぶように親しく呼ぶ者はいない。

びっくりしてルークの顔を見るテフ神教官の顔が、見る見るうちにまた赤くなった。


「若いのに、見事な司祭を務められたと思いますよ。招待客たちはみんな感心していましたからね」


「そうですよ。私も袖から見ていましたが、まだ若いのにとても立派な説教だと感心していましたよ!」

ヒッグス大神官も大きく頷く。


「さすがに次の法王候補と言われる大神官の姪御さんだけありますね!わずか22歳とは思えません」


「おや、ルーク殿は早耳ですね?」


「情報を制する者は世界を制する、です。テフ神教官の身元はもう調べさせていますよ」


「ふうむ... やはりルーク殿はどこか違いますね」


「そんなことはありません。ふつうに食欲もあれば、物質欲もある。欲望も溺れない程度にはありますから」


「いえいえ、そういうことではなく...」


「ああ、美女に目がないと言う事ですか?」


「まあ、それもありますが... 聖職者である私はその事に関しては何も言えませんが...」



そこまで大神官と話して、テフ神教官が興味深そうに話を聞いているのを見て訊いた。


「アイフィちゃん、よかったらルークタラス城の中にある礼拝堂の主任司祭になりませんか?」


「はぃイ?」


ルークの突然の想像もしてなかった問いに、思わずおかしなトーンの声が出てしまい、慌てて口を手で覆って真っ赤になるエルフ神教官。



「どうですか、ヒッグス大神官?」


「それはいい考えですね!ルーク殿には大聖堂の改修もしていただき、エテルナール教をこの国で再興してくださったお礼もありますし。私の方から法王さまにその事をを報告しておきましょう」


もはや、決定事項だ。

法王庁に問い合わせるでもなく、法王さまにお伺いしましょうでもなく、“事後報告”という事で決定されようとしている!



「あ、あの... 私は まだこれからガジーマにもどり...」


慌てて、テフ神教官がガジーマにおける神教官としての任務期間が終わってないことを言おうとしたが― 


「ああ、それは構いません。ガジーマのダマロ・アンリュモ大神官とは懇意ですので、ボンガゥル侯爵さまにテフ神教官が任地をルークタラスに変更したと書いた手紙を託ければ済むことです」


「え...あ...でも...」


「それとも、アイフィちゃんは私のそばで仕えるのがいやかい?」



ルークからじーっと見つめられると、テフ神教官の胸はキュン、キュン痛んだ。


「い、いえ... 大変な光栄と存じます...」


「じゃあ決まりですね」


「これで毎日礼拝堂に行くのが楽しみになりました。ちなみに、アイフィちゃんの部屋は奥にしなさい」


「はい。ありがとうござい... え?奥って?」



 その時、そこに元マビンハミアン国の貴族たちでエテルナール教の信者である者たちが数人やって来て、大神官に頭を下げ話をしたそうにしているのを見たヒッグス大神官は、テフ神教官の耳元にそっと囁いてパシンと軽く神教官のオシリを叩くと、ルークに頭を下げて貴族たちの方へ行ってしまった。



 ポツンと一人残されたテフ神教官。

どうしていいのか途方にくれているようだ。


「さあ、おいで。みんなに紹介してあげるよ、アイフィちゃん!」


ルークが差しのべる手を頬を赤めて握るエルフ神教官。


「きょ、今日からよろしくお願いいたします」


パパパ パパパパ~ パパパ パパパパ~♪


《アイフィが 仲間に加わりました!》 という声がどこからか聞こえた気がした。



賑やかかな大ホールの中を歩きながら、ルークはテフ神教官の長くかわいい耳に口を寄せて訊く。


「ところで、ヒッグス大神官は、君に何を言ったのかな?」


「きょ、今日からこのお城で泊めてもらいなさいって」


「あれ? 私といっしょに寝かせてもらいなさいじゃなくて?」


「ええええ?」


「ところで、アイフィちゃんは当然結婚してないだろうし、恋人もいないんだろう?」


「え?.........」


驚いた顔からルークはテフ神教官は独身であり、恋人もいないことを確信した。



「みんなに紹介しよう。今日からルークタラス城の礼拝堂の主任司祭になるテフ神教官です。アマンダたちも、新しく妻となったアンジェリーヌ、ジョスリーヌ、ミカエラ、それにリエルも仲良くしてやって欲しい!」


「はい。わかりました。アイフィさん、よろしくね!」

「アイフィさん、プリシルです、よろしくね」

「リリスです、よろしくね!」

「ハウェンよ。アイフィさんね?かわいいわ!」

「ソフィエッタ... フィフィって呼んでくださいでス」

アマンダたちは、もう慣れたものだ。


「え?え?え?」

「へ? 今日の司祭さん?」

「お城の礼拝堂の新司祭さん?」

「またライバル出現?!」

アンジェリーヌたちの反応は― ごくふつうだった!



 そして... 


テフ神教官は“奥”というのが


ルークの妻たちが暮らす王宮の奥の―


いわゆる後宮であることを その夜に知ったのだった!?




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