#2‐12 ブレストピア・マビンハミアン戦役④
ブレストピア・マビンハミアン戦役侵攻ルート①
ルークはガバロス騎士団5千騎、ギャストン伯爵軍2万、ペンナス子爵軍1万、ドジョーネル王指揮下のドワーヴァリ族戦士2万人とヴァナグリー2万匹、それに味方となった元マビンハミアン帝国軍のマスティフ伯爵とマーゴイ侯爵の兵力6万、元ブレストピア王国軍のエルゼレン伯爵とエンギン辺境伯の兵力7万を率いてブンドリ海峡を渡った。
海峡を渡るのには、マスティフ伯爵たちとエルゼレン伯爵とエンギン辺境伯たちが使った船を利用した。
ブレストピア国の中央南部海岸に上陸したルーク軍は、そのまま北東を進む。
ルーク軍の目的はマビンハミアン帝国占領だ。そしてギャストン伯爵軍はブレストピア国南部を制圧するためにルークたちと分かれて南東へ向かった。
ルーク軍の兵力は16万5千人プラス、ヴァナグリー2万匹という大軍だ。
向かうところ敵なしでルーク軍はマビンハミアン帝国の奥深く侵攻して行った。
もちろん、 マビンハミアン帝国のアンドゥイン皇帝も手をこまねいてルーク軍の侵攻を見ていたわけではない。しかし、三度の戦いのいずれもマビンハミアン国軍は負けてしまったのだ。
最初は、南東部の貴族たちの軍勢を向かわせたが、ロクにまとまりもない2万ほどの兵はヴァナグリーの攻撃で大きな損失を出し、雲の子を散らすように逃げてしまった。
二度目の戦いは、王都アンドゥインオストの南部地域に所領をもつ有力貴族たちの軍、8万をもって迎え撃たせたが... 何と言うことか、これらの有力貴族たちは兵もろともルーク軍に寝返ってしまったのだ!?
そして―
ルークがブンドリ海峡を渡ってから半年後。
25万を超すルーク軍はマビンハミアン国の王都にまで進撃し、アンドゥインオスト城を包囲してしまった。
もちろん、マビンハミアン国のアンドゥイン皇帝は親族であるゾドアンスロゥプ皇帝に助けを求めたが、皇帝からは『グランウォルド地方がラーシャアグロス軍によって占領された。おまえのところに兵を送っている余裕はない。隣国のダエユーネフ共和国に助けを求めるがいい』と言う、そっけない返事が来ただけだった。
ゾドアンスロゥプ皇帝も、同じ高祖父の血を引く血族であるアンドゥイン皇帝を見捨てるつもりはないのだが、グランウォルド地方を占領し、信じられないことに東ディアローム帝国寄りであった西側の蜥蜴人部族までも、どういう方法を使ったのかわからないが手なずけてしまい、東側の蜥蜴人部族と合わせると実に50万以上のリザードマン戦士たちが西ディアローム帝国側につき、東ディアローム帝国に敵対することになったのだ。
さらに、これまで常に劣勢で、東ディアローム帝国とその同盟国による攻勢で後退に次ぐ後退を続け、自国領が縮小するのを見ていた西ディアローム帝国だったが、ジャバリューが大統領に任命されてから5年間で軍を再編し、さらにトロール族国であるアングルスト帝国とベルミンジャン王国と軍事協定を結ぶことに成功し、両国合わせて40万にものぼるトロール軍を東ディアローム帝国との戦線に送り込むことに成功したのだ。
盟友国であるドワーフ族のドヴェルグ王国軍は、東ディアローム帝国軍がトロール軍の侵攻に対応するためにドヴェルグ国の侵略に送っていた20万の大軍をあわててトロール軍の進軍を阻止するために自国へ呼び戻した隙を突いて、隣国であり東ディアローム帝国の同盟国であるレウエンシア大公軍を破り、首都であるゴンドエーガに迫る勢いで、ゾドアンスロゥプ皇帝はレウエンシア大公国からも救援の依頼を受けており、とてもではないがマビンハミアン国に構っているどころではなかったのだ。
包囲が始まって1か月後、マビンハミアン帝国はルーク軍に降伏した。
東ディアローム帝国からの救援は期待できず、ダエユーネフ共和国にもルーク軍の圧倒的な強さをすでに知っており、さらにミタン城で行われたアンジェリーヌ王女とジョスリーヌ王女の婚約式の時に、オルガス王とシラ・エレン王妃がルークと交わした密約にしたがって、ボードニアン王国が“中立”という立場を捨て、西ディアローム帝国側につき、ルーク軍のマビンハミアン国侵攻と同時に8万の軍でマビンハミアン国南部から攻め入ると同時に、ブレストピア国にも東南部から攻め入った。
オルガス王とシラ・エレン王妃がルークと交わした密約とは、ルークがマビハミアン国に侵攻した時に、ボードニアン国軍も同時に攻め入るという約束で、ルーク軍がマビンハミアン国を占領した暁には、ブレストピア国の南部をボードニアン国に割譲するというもので、リエル王女をルークの妻として娶るという付加条件付きだった。
と言うのも、ミタン城での婚約式の時に、リエル王女はルークの魅力にぞっこん惚れこんでしまい、
「ルークさまと結婚できないのなら、わたし自ら命を絶ちます!」
とまで言って王と王妃に迫ったからだ。
「バーボン王の王女二人と婚約したばかりなのに、こんなことをお願いするのは心苦しいのだが... リエル王女を妻にもらってくれんだろうか?」
「今すぐは無理でしょうから、リエル王女があと2年して成人してからでも構いませんわ。もちろん、アンジェリーヌ王女とジョスリーヌ王女との結婚のあとでも結構ですのよ!」
オルガス王とシラ・エレン王妃に懇願されて、「それは出来ません」と答えるわけにはいかない。
それに、ルークの夢は前の世界で勇者だったヤツが、美女ばかりを集めて一大ハーレムを作ったのが羨ましくて、テルースの世界では自分もハーレムを作ると固く決意をしていたのだ。
ルークはしぶしぶと言った演技で交換条件を出した。
「しょうがないですね。でもリエル王女のたっての願いなら、妻にしてあげましょう。ただし、交換条件があります...」
その時の密約が、ブレストピア国とマビンハミアン国へのボードニアン軍の出兵だったのだ。
もちろん、オルガス王とて馬鹿ではない。
ルーク軍とデュドル公爵軍がブレストピア国とまともに戦うということなど想定外だったし、ましてやマビンハミアン国を占領するなど“何をたわけた事を考えておるのだ”と正直、心の中で思ったのだが...
いざ、ルークが行動を起こすと、あれよあれよと言う間にブンドリ半島に攻め入ったブレストピア・マビンハミアン軍を破り、信じられないことにこれを味方につけて、ブレストピア国に上陸し攻め入り、ブレストピア軍を片っ端から破りながらマビンハミアンに迫ったのを見て、ルークがオルガス王に約束した言葉を思い出した。
「私の盟友になっていっしょに戦ってくだされば、ブレストピア国を占領した暁には、その領土の一部を割譲して差し上げますよ」とルークは約束したのだ。
「ぐずぐずしておれん!ルーク殿との約束を果たさねば、ブレストピア国はわが国の領土とならぬ!」
至急、厩役を呼びつけ、十日以内にブレストピア国とマビンハミアン国へ出兵することを急ぎ決定したのだった。
マビンハミアン帝国の無条件降伏を受け入れたルークは、アンドゥイン皇帝に対して彼と皇族全員の命を保証し、マビンハミアン国内でアンドゥイン一族が生活を続けてもいいと約束をした。ただし、皇帝という地位からは退位することを条件として出した。
「それが気に食わないのでしたら、東ディアローム帝国へ亡命してくださっても結構です。国境まで護衛を付けて差し上げましょう!」
ルークの申し出を受け、アンドゥイン元皇帝一族は20台の馬車を連ねて東ディアローム帝国へ亡命してしまった。
ルークはアンドゥオスト城に入城して1ヶ月後― 完全にマビンハミアン国全土の制定が完了してから城の大ホールにマビンハミアン国の貴族たちを集めた。
各地の領主である貴族だけでなく、それらの貴族の家族たちにも参加させたので、さすがに広い城の大ホールも一杯になった。
もちろん、ギャストン伯爵、ペンナス子爵、マスティフ伯爵、マーゴイ侯爵、エルゼレン伯爵、エンギン辺境伯などルーク軍の貴族たちも同席しているし、アマンダ、プリシラ、ハウェン、リリス、フィフィ姫、ミカエラ、アンジェリーヌ王女とジョスリーヌ王女、それにドジョーネル王もアーレリュンケンたちも大ホールの前に並んでいる。そして、ミタン王国のバーボン王、バルバラ王妃夫妻、ボードニアン王国のオルガス王、シラ・エレン王妃夫妻とリエル王女も列席していた。
アンジェリーヌ王女は、トゥンシー大先生の元に彼の手帳を届けたことで無事にルークヘルムへ帰ることが出来、大先生はそのままルークの別邸の地下にある研究所にラーシャアグロス王国から連れて来た変人研究者4人と閉じこもって研究を続けることになったが、アンジェリーヌ王女はすぐにルークの後を追って来たのだった。
「本日より、マビンハミアン国はルークドゥル勇者王国と名前を変える!」
檀上に置かれた演説台に立ったルークは宣言した。
オオオオオオオオオ――――……!
大ホールを埋め尽くさんばかりの者たちから驚きの声が発せられた。
ルーク軍がマビンハミアン国を征服し、アンドゥイン皇帝が亡命した時点で、もはやマビンハミアン国は獣人族国マビンハミアン国ではないと言うことはみんなわかってはいたが、まさか征服者であるルークの名前を冠した国名が付けられるとは誰も想像しなかったからだ。
「私、勇者ルーク・シルバーロードは、本日よりルーク・シルバーロード勇者王を名乗る!」
「勇者王バンザ―――イ!」
「勇者王万歳!」
「勇者王バンザイ!」
「バンザイ!」
「バンザ―――イ!」
大ホールが揺れるような叫び声が上がった。
「ルークドゥル勇者王国、万歳!」
「ルークドゥル勇者王国、バンザ―――イ!」
「ルークドゥル勇者王国っ、バンザイ!」
「ルークドゥル勇者王国、バンザ―――イ!」
続いて新王国の名前が叫ばれた。
ルークは手の平を前に出して、みんなを静かにさせると言葉を続けた。
「ルークドゥル勇者王国は、軍事力も強くなければならないが、それ以上に農業でも商業でも製造業でもほかの国より抜きんでなければならない!」
農業でも商業でも製造業でも強い国という言葉に大ホールはシーンとなった。
「その第一歩として、ルークドゥル勇者王国では、すべての貴族が所有する領地は勇者王国の所有地となることを宣言する!」
寝耳に水の言葉に、元マビンハミアン国の貴族たちは驚愕した。
「ええっ?!」
「なんと?」
「我々の領地を没収する?」
「それは、どういうことだ?」
「じゃあ、我々はどうやって生きて...」
元マビンハミアン国の貴族たちが騒ぎはじめた。




