表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/183

#2‐11 ブレストピア・マビンハミアン戦役③

 ブンドリ半島を南下し、ミタン王国制圧を狙って15万という大軍を投じたブレストピア王国と マビンハミアン帝国だったが、アマンダの立てた作戦により、ブンドリ半島の南部にミタン王国が築いていた北方防塁線を超えることが出来ずに、ミタン軍との睨み合いが続いていた。


 北方防塁線には、ルークとの約束により支援に駆けつけたギャストン伯爵軍2万と、ドジョーネル王がルークの依頼に応えて送りこんだドワーヴァリ族戦士2万人とヴァナグリー2万匹、それにルークのガバロス騎士団5千人が集結した。


 ミタン軍も増援軍を加えて2万8千人にまで増えていた。

ミタン国の北部に領地を持つ貴族たちは、ミタン軍とルークの支援軍でもって、ブレストピア軍と マビンハミアン軍をブンドリ半島から追い落とすべしと煩く要求していた。


 だが、ルークは1ヶ月間に渡って兵を動かさなかった。

積極的な攻勢には出ずに、ただブレストピア軍とマビンハミアン軍に包囲されていた要塞を解放し、敵を北方防塁線の北側にまで押し戻しただけだった。


 ルークがのらりくらりと1ヶ月間ほとんど何もせずに過ごしたのは、ギャストン伯爵軍の到着を待つためとバーボン王からの手紙を待っていたからだった。

 そして待ちに待ったバーボン王からの手紙が届けられ、その中に書いてあることがミタン国の貴族たちに伝えられると彼らは驚愕し、口から泡を飛ばして議論を始めた。


 それも当然だ。なぜなら、バーボン王は、

『我輩の将来の娘婿である勇者ルーク・シルバーロード殿は、対ブレストピア・マビンハミアン軍との戦いにおいて勇者であることを立派に示した。北方領土の領主たちは、勇者ルーク・シルバーロード殿の指示および命令に従う事。

 ブレストピア国およびマビンハミアン国の領土占領の後は、占領した領土の割譲は全て勇者ルーク・シルバーロード殿の意向が最優先されること』

と明確に書いてあったからだ。


 ブンドリ半島に送り込まれて来た兵力だけでも15万という大軍であるのに、いくらドワーヴァリ族戦士2万人とヴァナグリー2万匹の戦闘力が凄まじく、またギャストン伯爵が2万の兵を連れて来たとしても、ブンドリ海峡を超えてブレストピア国に攻め入り、さらに遠いマビンハミアン国まで攻め入るとは狂気の沙汰としか言いようがない。


 しかし、ルークはミタン国貴族たちの騒ぎを無視して平然と告げたのだ。 

「私がブレストピア軍とマビンハミアン軍と交渉して、味方に引き入れます!」と。



 

 そして翌朝―


 ルークは、ガバロス騎士団5千騎とギャストン伯爵の騎兵7千騎だけを引き連れて、北方防塁線を超え、ブレストピア軍とマビンハミアン軍の将たちと話し合いに向かった。

 5百メートルほど離れてフォルメンドル辺境伯、アルジェンラント伯爵たちが手勢の騎士たちを連れてついて来ている。彼らはルークとブレストピア軍・マビンハミアン軍の将たちとの交渉を見るために要塞から出て来たのだ。

 ペンナス子爵は、「ルーク殿にお任せしよう!」と言って要塞に残った。


 ルークはアマンダ、プリシル、ハウェン、それにリムガエアール侯爵とギャストン伯爵を伴って平原の真っただ中でブレストピア軍とマビンハミアン軍の将と会見した。

 ジョスリーヌとミカエラは、50メートルほど後ろにいるガバロス騎士団とギャストン伯爵の騎士団といっしょにいる。何かあれば、すぐに魔法で攻撃できるようにスタンバイしているのだ。


 ルークたちはそれぞれブレータ 、ギバオー、ゾビン、ゾフィに乗り、リムガエアール侯爵とギャストン伯爵は馬に乗っていた。アマンダとプリシルは、万一卑怯な不意打ちを受けた場合に即座に戦うためで、ハウェンは“絶対防御”スキルでみんなを守るためだ。



 ブレストピア軍とマビンハミアン軍の将たちも、30騎ほどの騎士たちを連れて来ていた。

後方にはやはり数千の騎兵や弓兵が待機している。


「どうも。勇者ルーク・シルバーロードです。ブレストピア王国軍とマビンハミアン帝国軍の将とお見受けする!」


 明らかに女騎士とわかる三人を脇に伴い、おまけに鬼人族貴族の大男と年取ったエルフの貴族を従えているルークを見て、敵将たちはたじろいだ。

 たじろいだのは、ルークを見たからでも、アマンダたちを見たからでも、ギャストン伯爵を見たからでもなかった。ルークたちが乗っているブレータ やギバオーたちヴァナグリーの獰猛な顔つきにビビったのだ。


「儂はドスモンド・マスティフ伯爵だ。東ディアローム帝国南方軍団の指揮官だ!」

犬族の大柄な貴族が名乗る。

「アタシは ラガマ・マーゴイ侯爵。同じく、東ディアローム帝国南方軍団の副指揮官よ!」

こちらはネコ族の女貴族だ。

「ブレストピア王国軍指揮官のエルゼレン伯爵です」

「同じく、ブレストピア王国軍副指揮官のエンギン辺境伯です」


ブレストピア王国の将たちは、狼族と濃褐色エルフだった。

ブレストピア国は、北部・中央部に獣人族が多く住み、南部にエルフが住んでいるのだ。 


「率直に言いましょう。貴公らと麾下の全将兵は、私の軍に入って欲しい!」

ルークは、涼しい顔をして平然と言った。


「ウウ――ゥ!何をぬかす?」

「ニャニを言っているのダ?!」

マスティフ伯爵が唸り、マーゴイ侯爵が黄色い目を見開く。


「ルーク殿とやら、どこの田舎の勇者か知らんが、我々はまだ13万の兵を持っておるのだぞ?」

「たかだか5万か6万の兵しかないくせに、配下に下れとは冗談にしても過ぎますぞ?」

エルゼレン伯爵とエンギン辺境伯が嘲るように言う。


ルークはじーっと敵の将たちの目を覗きこんだ。

()()()()して、味方になった方が得だと思うのですが?......」


「......... わかった。()()()殿()()()()()()()!」

「アタシも勇者()()()殿()()()()()()()!」

「よろしい。ルーク殿は()()()()()()()()()()()()()!」

「わかりました。()()()()()()()()配下になりましょう!」


「な、なにっ?こ、こんなに簡単に味方に出来るとは!!」

後方で交渉を見ていたリムガエアール侯爵が、目をむいておどろく。

「うむむぅ... ちょっと信じられんが、確かにルーク殿の配下につくと言ったぞ?!」

ギャストン伯爵も目をパチクリさせ、頬をつねって「イタっ!」と叫んだ。


「それでは、これから貴公たちの軍の将兵に事の経緯を説明しに行きましょう!」

そう言うと、ルークはアマンダたちといっしょに、マスティフ伯爵たちに先導されてブレストピア軍とマビンハミアン軍の陣地に向かった。




「...... と言うわけで、勇者ルーク・シルバーロード殿は、昨日までの敵であった我々にも、西ディアローム帝国側について正義のために戦えば、全将兵が大きな利益を得ると約束してくださった!」


マスティフ伯爵が居並ぶ子爵や男爵や騎士たちを前に熱弁をふるったあとで、ルークが全員の目をじっくりと見てにこやかに話すと、貴族たちも騎士たちも()()()()()()()()()()()()()、それぞれ配下の兵たちを説得した。


「...... であるから、我等ブレストピア王国南方攻略軍は、本日から勇者ルーク・シルバーロード殿の指揮下に入ることとなった。これにより、我等は全員正義のための戦いをするのだ!」


エルゼレン伯爵がブレストピア軍の貴族たちに説明し、次いでルークが居並ぶ貴族たちの目をじーっと見つめて話し、全員が疑いなく()()()()()()()()()()()、配下の兵たちを説得した。



 リムガエアール侯爵から話を聴いたフォルメンドル辺境伯、アルジェンラント伯爵たちはビックリ仰天した。

万一の場合を考えてベリアリンド要塞に残っていたペンナス子爵もフォルメンドル辺境伯たちから話を聴いて、「信じられません!」と唖然となった。


 そして、ルークを新たな指揮官として、元ブレストピア軍とマビンハミアン軍の13万の兵とルークの親衛隊とも言えるガバロス騎士団、ペンナス子爵の1万の兵、それにドジョーネル王指揮下のドワーヴァリ族戦士2万人とヴァナグリー2万匹はブンドリ海峡を超えてブレストピア王国に上陸したのだった。


 フォルメンドル辺境伯、アルジェンラント伯爵たちは、奪還したブンドリ半島の治安と防衛のために残ったが、ペンナス子爵は「ルーク殿について戦って、父上に誇れる真の将になりたいです!」と言ってルーク軍に加わることになった。

 ドジョーネル王は、「自分の弟たちが華々しい戦いをしておるのに、ワシだけがぬくぬくとヴァン大湿原で暇を持て余しているわけにはいかん!」と言って、親衛隊を引き連れてやって来たのだ。


「パパァ?ママを置いてきちゃったのでスか――?!」

おどろいたのはフィフィだった。

「やあ、フィフィ姫、元気でやっちょるか?ほれ、おまえの好きなツルッタを持って来たやったぞ!」

「フィフィ姉っ、パパがどうしても担いで行けって言って利かないから、持って来たよ!」

「アンギューネルまで連れて来ちゃったのォ、パパ――?」

弟まで連れて来たパパを見て、開いた口が塞がらないフィフィ。


「いや、ボクはツルッタを持って来ただけだよ。パパが戦いで死んじゃったら、ボクがいないと王がなくなるってママが言ったから、これをフィフィ姉に届けたらすぐに帰るよ!」

「フィフィ姫もツルッタを食べて精をつけて、早くルーク殿との子どもを産んで、ワシやナンシーネに孫の顔を見せてくれ」

「ちょ、ちょっとパパ!ツルッタを食べたからって、子どもが出来るわけじゃないのよ?子どもは創造主さまからの授かりもので、ワタシやルークさまが望んだからって、すぐ生まれるものではないのでス!」

早く初孫の顔を見たいドジョーネル王の言葉に、しどろもどろのフィフィだった。



 そして...


 ルークは自分の国を持つための戦いをはじめた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ