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#03 テルースの世界

 ルークが異世界で初めてエルフに出会った感激に浸っていると― 


 いや、彼自身、前の世界ではエルフたちに酷い目にあっているので、あまりいい思い出はないのだが、この世界のエルフは彼の敵ではない。

それに、この二人は何と言っても美女だった。まあ、中年の女性の方はルークもあまり関心はないが。

 そこにアマンダたちが、みんなを連れてやって来た。どうやらみんな無事なようだ。ハウェンとリリスがルファエルとマイレィを見ていてくれたのだろう。


「助けていただいて、ありがとうございます。わたくしはアドリーヌ。ミタン王国のクレール侯爵の妻です。こちらはミタン王国のアンジェリーヌ王女殿下です」


「本当にありがとうございます。キノコ狩りに来たところをオークたちに襲われ、護衛の兵士たちが防いでくれている間に必死になってここまで逃げて来たのです」


パパパ パパパパ~ パパパ パパパパ~♪


《アンジェリーヌ王女が 仲間に加わりました!》


《アドリーヌ公爵夫人が お友だちになりました!》


というような声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。


“仲間とお友だちの差って何だろう?”とルークは考えた。



二人とも、なぜかルークの顔を見てポッと顔を赤らめている。


「どうも。私は勇者ルーク・シルバーロードです。こちらは従者で女騎士のベイアリア、プリシル、ハウェンと侍女のリリスです」



 襲われたという街道に出てみると、護衛のエルフ兵士たち10人と侍女らしいエルフ女性が2人倒れていた。


「エレン!マリア!」


アンジェリーヌ王女が叫んで駆け寄り、侍女の名前を呼ぶがすでに事切れていた。

公爵夫人もルークたちと倒れているエルフ護衛兵を見たが、全員すでに死んでいた。



 ルークはアマンダたちといっしょに、殺された護衛兵たちと侍女たちの亡骸を運んで街道の脇に置いた。

侯爵夫人が、城にもどったらすぐに亡骸を回収させに来させると言ったからだ。



 王女が乗っていた馬車に侯爵夫人とアンジェリーヌ王女、そしてリリス、ルファエ、マイレィを乗せ、ルークとベイアリア、プリシル、それにハウェンは護衛たちの乗っていた馬に乗り、馬車を護衛しながらミタン城へ向かった。乗り手のなくなった馬も引いて連れて帰ることにする。


 お城に向かう馬車の中から、アンジェリーヌ王女は恋する乙女の目で勇ましく白馬に乗って先頭を行く勇者ルークを見ていた。クレール侯爵夫人も、うっとりとした表情でルークを見ている。


 王女と侯爵夫人の熱い視線を背に感じながら勇者ルークは創造主に感謝した。


 “エタナール様、こんな素晴らしい世界を創ってくれてありがとうございます!”


 “気に入っていただいたようで何よりです。テルースの世界のラスボスに殺されないように…”


 はるか遠くから創造主さまの声が聞こえたようだった。


 “えっ、ラスボスっているのかよ?”


 しかし、答えはなかった。




 ミタン城は城塞都市だった。


 しかし、城塞で囲まれているエリアは、それほど大きくはないようで、街は城塞の外に大きく広がっている。

城門に近づくと、城壁のあちこちにそびえている塔の見張りが知らせたのだろう、ルークたちが堀にかけられた橋を渡っていると、数騎のエルフ騎士たちが城内から駆けつけて来た。あとから、エルフ兵たちが十数人走って来る。


「侯爵夫人さまーっ、何があったのですかー?」


「王女さまは、ご無事ですかーっ!」


 たぶん、突発的な脅威とか無法者などに対処するために、城門近くの控え所で待機しているのだろう。

駆けつけて来た騎士たちは、王女の馬車を護衛していたはずのエルフ騎士たちが一人も見えず、どこの誰とも知らぬ金髪の騎士- ルークのことだ- と数人の女騎士たち-アマンダとプリシルのことだ- が馬車を護衛して帰って来たのだから、異常が起こったと考えるのが普通だ。

おまけに、金髪の騎士たちは、護衛のエルフ騎士たちが乗っていたと思われる馬を引いて来ているではないか?



「アンジェリーヌ王女さま―――っ!」


城塞都市の中に入った時、3騎のエルフ騎士が勢いよく、正門のある広場に走り込んで来た。

先頭の騎士は白馬で馬車に近づくと、馬の手綱を引いて急停止させヒラリと飛び降り、馬車の窓を覗いて、中に乗っている者を確認する。


「おお、 アンジェリーヌ王女さまっ、ご無事でなによりです!」


「アルビオンさま、オークに襲撃されたところを、この騎士さまたちに助けていただきました」


あとの二人のエルフ騎士も馬から降りて、ルークたちに話しかける。

彼らは先ほど駆けつけてきた騎士たちとは違った、青と白のスマートな軍服を着ている。

おそらく近衛兵か親衛隊だろう。


「どなたか存じませんが、アンジェリーヌ王女殿下とクレール侯爵夫人さまを助けていただき、誠にありがとうございます!」


「いえいえ。ちょうど通りかかったときに、悲鳴が聞こえましたので駆けつけて、王女さまの馬車を襲っていたブタゴン... いや、オークどもを倒しただけです。あ、私はルーク・シルバーロードと申します。こちらは....と..... と..... です」


ルークが自己紹介と、アマンダたちを紹介する。


「おう、ルーク殿とおっしゃるか? 俺はアルビオン。ミタン王の近衛隊の分隊長、こちらは弟のガルビオンとアキリオンだ!」



 クレール侯爵夫人から話を聞いた騎士や兵士たちは、すぐに荷台馬車を3台もって来て、30騎ほどの騎士たちといっしょに土埃をあげて正門から勢いよく出ていった。

オークに襲われて亡くなった騎士や侍女たちの遺体を回収に行ったのだろう。



 王女と侯爵夫人の乗った馬車は、アルビオンたちに前後を護衛されて、町の中心に見えるミタン城に向かった。ミタンの城下町は城壁で囲まれているが、それほど大きなものではない。それでも町の中はやはり人通りが多い。


そして― 当然、市民はエルフばかりだった!


「ルークさま、この町ってエルフだらけなんですね...」


「かなりイケメンのエルフもいますわ!」


「ほらっ、あのエルフさん、色が褐色ですわ? 海で肌を焼いたのかしら?」


「えっ、あら、本当! え? でも、黒いエルフさんもいますわ?」


もとの世界では白い肌のエルフだけしかいなかったので、褐色や黒色の肌をもつエルフにおどろいているアマンダたちだった...


「あら、あの耳があって毛がフサフサの人... 獣人でしょう?」


「たしかに!獣人もいるのね!」


「あれはネコ族の女の人みたいだし...」


「でも... なんだか、私たちがよそ者だってことを痛感しますわ」



耳の長くない(?)ルークたちを、物珍しそうに見る街のエルフたち。


「ママ、ママ、見て!見て!耳が短いエルフがいるよ?」


「あら、本当!可哀想に劣性遺伝か突然変異なのでしょうね...」


エルフ母娘がめずらしがって、ルークたちをジロジロと見ている。

とんだ見世物になってしまった!


「ところで、ベイリ... じゃない、アマンダ」


「はい?」


「あんな剣の使い方、どこで覚えたんだ? っていうか、あの走行スピードはなんだ? 百メートル5秒くらいで走っていたじゃないか?それもプレートアーマーを付けて!」


「え? あれは、私でもわからないんです。あのオークに襲われている王女さまたちを助けようと思ったら、自分でもおどろくほどの早さで走れて、剣術の名人みたいな剣さばきで瞬く間にオークたちを倒していて...」


「...そうか。高速走行と無双がアマンダのスキルなんだな」


「え? 私のすきる?」


そう言ってルークはアマンダを見た。

群青色の長い髪を後ろでまとめた元ベイリア- 改名してアマンダになったが-は、10歳ほど若返ったようだ。髪の色も以前は茶色だったのが、群青色に変わっている。

まあ、ルークも金髪になっているので、アマンダの髪の色が変わっていても不思議ではないが。

プリシル、リリス、ハウェンは髪の色は変わってない。だが、やはり若返っているようだ。


「プリシル、おまえも弓は使えないって言っていたけど、どこで覚えたんだ? 百発百中だったじゃないか? それに、よく分からなかったが、姿が消えたってどういうことだ?」


「あの... 私もわかりません。ただ、ルークさまに“何でもいいから射ろ!”と言われて、弓をとったら自然に体が動いて、射る矢がすべてオークに当たったんです。それも全部急所に... 姿が消えたのは たぶん、あのブタゴンたちがとても恐ろしくて、“姿が見えなくなればいい”って思ったからではないでしょうか?」


「じゃあ、プリシルのスキルは“弓使い”と“インビジブル”か...」


「え? “弓使い”と“インビジブル”?」


アマンダもプリシルも「スキル」という言葉の意味がわからなくて、頭の上に「?」マークを浮かべている。


“じゃあ、残るリリスとハウェンのスキルは何だろう...”


そして、馬車の中から目をクリクリして町の様子を見ているルファエルと マイレィを見た。

二人の子どもはパパが見ていると気がついて、手をふったり、なにやら言っているようだが、馬車の車輪のガラガラ言う音がうるさくて、何を言っているのかさっぱりわからない。

たぶん、「パパ、見て、見て!エルフさんがたくさん!」とか、「バブバブバビュ!」などと言っているのだどう。


“しかし、まさかルファエルと マイレィはスキルはないだろうな...”


馬車はエルフ衛兵が守っている門から宮殿に入った。





ミタン王国。自分ではいい名前をつけたな...と思っていたら、小説を書いている過程でいろいろサーチしていたら、古代に現在のシリアあたりに同名の国があったことを知りました(-_-;)

もしかしたら、前に見ていたのかも知れませんね。それを無意識に使ったのかも。

国の名前と言えば、興国という国名を考えましたが(3年前の話です)、去年だったか中国が大興国空港という名前の空港を作ると知りました。

ネーミングって難しいですね...


                                    独瓈夢(どりいむ)

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