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#14 ドワーヴァリとの対決

 このまま、あの老エルフ学者の発明した『激辛悪臭煙』のおかげで、ヴァン湿原を無事に通過することが出来るかと思ったが―



 前方に一匹のバケモノが現れた... 


いや、バケモノという表現は、適切ではない。


なぜなら、そいつは緑の長い髪の少女だったからだ?



「かまわん、このまま突っ切れ―――っ!」


アルビオンは、その少女が()()()()()()()()ということをエルフ戦士としての本能で気づいたのだろう、馬の蹄にかけてでも走り続けるように命令した。


その少女は白い肌で緑の長い髪を持っていた。

2百メートルほどの距離からでは12、3歳くらいにしか見えない。

なんだか濃い緑っぽいもので、胸のところと腰のところだけを覆っているが、白く長い手足はモロに見せている。


パカッパカッパカッ...... 


ガラガラガラハラ ...... 



ルークたちと近衛騎兵隊と馬車が50メートルほどに迫ったとき、緑の目の少女は片手をあげてパチン!と指を鳴らした。


ザバザバザバ―――ッ 

ザバザバザバザバ―――ッ


街道の両側に広がっている沼から、数十匹のヴァナグリーに跨ったドワーヴァリたちが街道に現れ、少女を守るように彼女の前に並んだ!


ザバザバザバザバ―――ッ

ザバザバザバザバ―――ッ


隊列の両側の沼からも、数百匹のヴァナグリーが現れ、今にも隊列を襲う気配だ。


ザバザバザバ―――ッ 

ザバザバザバザバ―――ッ


そして、後ろにも数十匹のヴァナグリーに跨ったドワーヴァリたちが現れた!



沼にいるヴァナグリーの後ろには、何百というドワーヴァリたちが、矢を弓につがえ、槍をもって爛々と光る眼でルークたちを睨んでいた。

ヴァナグリーは全長が5メートルほどある大型のトカゲのようだが、頭は大きく鋭いキバがのぞいており、全身が硬そうなウロコのようなモノで覆われていて、すごく太いシッポをもっている。

こんなバケモノに襲われたらたまったものではない。



「アルビオン隊長、松明はもう必要ないようです。消すように言ってください」


「え?」


 ルークは馬からひらりと降りると、前方のドワーヴァリたちの群れに向かって歩きはじめた。

すぐあとをアマンダとプリシラが続く。

アマンダは剣の束に手をかけ、プリシルは弓に矢をつがえているが、矢は下を向けている。

 緑の髪と目の少女の前にいる1.5メートルくらいの身長のドワーヴァリたちが、「ゲコッ!」「ゲゲコッ!」と威嚇の声をあげ、槍の矛先をルークたちに向け、沼のドワーヴァリたちは矢をいつでも射れるように弓を構えている。


「おまえたちのリーダーはだれだね?」


ルークがフルフェイスのヘルメットをとって手に抱えて歩み寄りながら訊く。

近くで見ると、そのドワーヴァリのリーダーは、かなりの美少女だとわかった。

背中まである緑色の濡れた髪をもち、エメラルド色の美しい瞳でルークを見ている。

胸と腰につけているのは、どうやら水草でできたビキニみたいなモノだったが、スラリと伸びた美しい手足、けっこう出ている胸、キュッと締まったウエスト、そしてふっくらしたヒップライン。


“これはバケモノなんて呼ぶのは間違っているな。アンジェリーヌやジョスリーヌ並みの美少女じゃないか!”


しげしげと緑の髪のドワーヴァリ少女を観察しているルークの視線に気づいたのか、少女の頬が赤くなった?

ドワーヴァリたちは、さらにうなり声をあげ槍を構えてルークを遮ろうとする。


「ゲコッ!」

「ゲゲコッ!」

「グググゲッ!」


「グゲゴッ!」

緑の髪の少女が突然叫ぶと、ドワーヴァリたちが槍の矛先を下げて静かになった。

少女は前にいるドワーヴァリたちを押しのけて前に出る。


「ゲコッ... りーだ ハ ワタシ だ オマエ 耳長くない ワタシ オマエ 夫にスル!」


パパパ パパパパ~ パパパ パパパパ~♪


《ドワーヴァリ族の美少女が 仲間に加わりました!》というような声が聞こえた気がしたが、無視した。



「「「「「「「ゲゲゲゲ―――ッ???」」」」」」」


緑の目の少女の周りのドワーヴァリたちがズッコケた。


「「「「「「「「「「ゲゲゲゲ―――――――ッ???」」」」」」」」」 


「「「「「「「「「「ゲゲゲゲ―――――――ッ???」」」」」」」」」 


街道の両側の沼のドワーヴァリたちがズッコケて沼に沈んでしまった!




「コラ―――っ、何をドワーヴァリの分際でトボけたことを言っているの!」


「そうよ、そうよ!ルークさまは、私たちのダンナさまなんですからね―――っ!」


アマンダとプリシルが緑の髪の少女に向かって叫ぶ。



「あなた誰さまのつもり? 抜け駆けは許しませんわ。テルース世界でのルークさまのオヨメさん第一号は私なんですからね!」


「そうよ!あなた誰さまのつもり? テルース世界でのルークさまのオヨメさん第二号は私なんですからね!」


ルークがおどろいてふり返ると、そこには馬車から降りたアンジェリーヌ王女とジョスリーヌ王女が、目から涙を流しながら叫んでいた。



アマンダもプリシラも唖然としてふり返って二人の王女を見ている。

二人の王女が、ドワーヴァリの少女がルークを夫にすると聞いて、悲しくて泣き出したと思ったのだろう。

実際は、馬車から降りたとたんに、『激辛悪臭煙』の煙を吸って涙を流していたのだが。 


緑の目の美少女はアンジェリーヌ王女とジョスリーヌ王女に顔を向けると 


「ワタシ ドワーヴァリ族 ソフィエッタ姫 わかった ワタシ 3番目!」


ソフィエッタと名乗ったドワーヴァリ族の姫君は、腰に手をあてて、胸を張って告げた!


「ゲコッ! フィフィさまっ?!」


「ゲココッ フィフィ姫さま?」


「う、うルさいっ、フィフィっと 呼ブな!」


なんだか、ドワーヴァリ族の姫が顔をさらに赤くしてドワーヴァリたちをどなっている!




 キャラバンは止まってしまった。


ヴァン大湿原の支配者であるドワーヴァリ族の姫というソフィエッタが、ルークの息がかかるくらいのところまで近づいて、ルークを見上げている。ソフィエッタは背が1.50メートルほどしかないのだ。


そして... ソフィエッタの顔は真っ赤になっていた。


「オマエ 男マエ! ワタシ 好き ナ タいプ!」


そして、ルークのジャケットやベスト、ニッカパンツをしきりに撫でまわしはじめた。


馬車から降りたリリスとハウェンも子どもを抱えてて、おどろいた顔で見ている。

その時、右側の沼に数千と沼から頭を出していたドワーヴァリたちとヴァナグリーたちが騒然となった。



ルークたちがその騒ぎに、右の沼を見ると― 


遠目でもかなり大きいとわかる一匹のドワーヴァリがひと際大きなヴァナグリーに跨って、やはりヴァナグリーに跨った数十匹の大きい体格のドワーヴァリたちを逆V字型の隊列で引き連れて、ルークたちの方に向かって迫って来るのが見えた。


 ザバ――ッ


ヴァナグリーに跨ったまま沼から飛び出て、ルークの前に着地したヤツは、ナマズのようなヒゲを生やしていた。





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