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#4‐17 ダエユーネフ戦役①

 ルークドゥル勇者王国第3軍は、ダエユーネフ国の首都ナスガアルを目指して進軍をはじめた。

ルークタラス城の司令部からは、すでにルークドゥル勇者王国第1軍が、ガルンロム要塞とオドグタール要塞から二手に分かれてダエユーネフ国南部へ侵攻を開始したことがマデンキ(魔法式遠隔伝達器)で伝えられて来ている。


「ルークドゥル軍、北部に現る」

という報告は、ナスガアルを恐慌に陥れた。


「どういうことだ? ルークドゥル軍はどこから湧き出たのだ?」

「ワチオピアのナーカダル州との境界に送ったブレスタンネス伯爵からは何の連絡もないぞ?」

「まさか、一兵も残さずに全滅したのか?」

「ブレスタンネス伯爵の軍は8万ですぞ?」

ナスガアル城の一角にある大統領官邸は蜂の巣をつついたよういなった。


「諸君、落ち着いてくれたまえ!」

ディアマトマム大統領の声に、口から泡を飛ばしていた貴族たちが大統領を見た。

「ルークドゥル軍の兵力はわかりますか?」

「たぶん、ワチオピア地方で威嚇行進をした兵力、20万でしょう」

ギルレウム伯爵が答える。

「ナスガアルにいる兵力は...」

「5万です」

クルフォルム侯爵がブスッとした顔で答える。

侯爵は首都の防衛用に5万を留め置いたのだ。


「昨日の夜にルークドゥル軍は、どこから来たのかわかりませんが、Y村の近くに突然現れたようです。森にキノコ狩りに行っていたY村の娘二人が夕方に村に帰ろうとして、村がルークドゥル軍に占領されているのを見て、隣りのX村まで走って知らせ、X村の村長が急使をナスガアルに送って知らせに来ました」

ギルレウム伯爵が興奮気味の顔で言う。


「しかし、ルークドゥル軍は村人たちは捕虜にしたが、略奪も婦女子に対する暴行もしていないという報告も受けていますのでY村の住民は安全でしょう」

「ふむ。ルークドゥル軍の将兵は厳しい規律があると聞いておる。ブンドリ半島の戦いでも、ブレストピア・マビンハミアン戦役でも、彼らが悪行をしたという話は一切聞いていない」

「略奪や婦女暴行をした兵は厳罰に処されるそうです」とカルヤム子爵。

「とにかく、クルフォルム侯爵殿、至急、兵を率いて敵軍のナスガアルへの接近を防いで欲しい。それと、ほかの者は、出来るだけ近くにいる兵を緊急にナスガアルにまで集結するように手配していただきたい」

ディアマトマム大統領の指示で、貴族たちは会議室から急ぎ足で出て行く。



  …… ◇ …… ◇ ……◇ ……



 クルフォルム侯爵は、騎兵4千、重装歩兵1万5千、軽装歩兵3万と120門の大砲を率いてナスガアルをから北へ向かった。ナスガアルには6千の兵を残した。


1時間半ほど進軍を続けると、偵察隊から前方10キロをルークドゥル軍の大軍がこちらに向かって進軍中との報告をもたらした。


「陣を敷け!砲隊は前列に!」

ただちに侯爵は防衛陣の構築を命じる。


2頭立ての馬車に牽かれていた大砲が、陣地の前に並列される。

クルフォルム侯爵は120門の大砲という最新兵器を、自分が誰にも先駆けて実戦で使うという誇りと高揚感でいっぱいだった。


ルークドゥル軍、何するものぞ!この大砲で20万の大軍を木っ端みじんにしてくれる!

砲兵たちが、バラバラっと大砲にとりついて、砲撃の準備をしているのを見ながら、侯爵は思った。


「侯爵殿、ルークドゥル軍は前方2キロのところで4部隊に分かれました。主力軍と思われる部隊は陣を敷き、ほかの部隊はナスガアルを包囲するようです!」

偵察隊からの報告が届く。

「むっ... 包囲か。当然であろうな。しかしナスガアル城は難攻不落の城だ。簡単には落されん!」


   ナスガアル城

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)



 クルフォルム侯爵の自信は誇張ではない。

ナスガアル城は、標高150メートル岩山の上に建っている。

城の南西は岩の多い険しい崖であり、城への唯一のアクセスは、尾根がより緩やかに傾く東にしかない。

 そして、東側は第一城門に達する前に幅10メートル、深さ30メートルの空堀があり、通常は跳ね橋を下ろして通行しているが、戦いとなれば跳ね橋を上げ、誰も通れなくなる。


 敵が橋をかけて城門に達したとしても、城門の上と左右にある狭間(さま)から雨のように矢を射かけられるし、さらに城門への通路の天井にある石落としや落とし格子がある。

 運よく、第一城門を破ることが出来たとしても、さらに第二、第三城門があるのだ。

東側の通路は大軍は通れない。したがって、6千の兵でも十分に守り切ることができる。 



「ふむ... 敵はナスガアル城を包囲するつもりだな...」

ナスガアル城の高い塔の上からルークドゥル軍の動きを見ているのはギルレウム伯爵。

「ファルモン伯爵の軍も、アングレム侯爵の軍も、これでは近づけませんね...」

伯爵といっしょに見ていたカルヤム子爵が、ナスガアルの救援のために向かって来ているであろう増援軍についてふれる。

「少しでも敵軍の戦力の分散が出来ればいい。東部からも救援が来るはずだ」


 その時、ナスガアル城の東の通路を一騎の騎士が馬に乗って城門に向かって駆けて来るのが見えた。


「む... あれは伝令だ!」

「何か急報でしょう。降りて行って見ましょう!」


二人は急いで階段に向かった。

ギルレウム伯爵もカルヤム子爵も悪い予感がした。



 予感は的中した。


騎士はダエユーネフ艦隊がルークドゥル艦隊との海戦で全滅し、ルークドゥル軍の大軍がボットランド海に面したイシルレン湾の南部から上陸したというものだった。

 ルークドゥル軍はイシルレン湾にあった港を占領し、主力軍はそのまま西進しナスガアルを目指しているとイシルレン領のオルハル子爵からの手紙に書かれてあった。

そして、最後にオルハル子爵と彼の兵たちは《全員、捕虜になった》と書かれてあった。


「ぜ、全員捕虜になった?」

ディアマトマム大統領がのけぞった。





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