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#4‐13 構想と野望⑤

  ルークはドワーフ国と五国同盟を締結した際にドヴェルグ王国のドンゴ・ロス王と交渉して、ルークドゥル国の製鉄関連産業を発展させる目的で多くのドワーフ人の鍛冶職人と鉱山技師を自国へ招いた。


 鉱山業の振興と製鉄産業を強くしなければ、国の発展はなし、強力な鉄製武器も製造できない。鉄鋼業は国家の基本産業なのだ。


 ルークはドワーフヘルムという、ドワーフ人鍛冶職人と鉱山技師たちの家族のための町をルークタラス市郊外に作り、快適に住めるようにした。

ドワーフ人鍛冶職人&鉱山技師たちの団長はジンゴロというドワーフ国でも有名な職人で、彼が陣頭指揮をとってルークドゥル国に高炉を建設することになった。


 高炉で作られる銑鉄を転炉を使って鋼鉄を製造するのだ。

そして鋼鉄の製造が可能になった時点で、ルークはソントンプ研究所を総動員して大砲と銃の開発に取りくませた。

 ルークがソントンプ研究所に要求したのは、後装式施条砲と金属薬莢と銃砲用火薬の開発だった。

砲身や銃身の口から弾と火薬を詰める前装式大砲を作らずに、前装式開発のプロセスを飛ばして一気に後装式の開発をすることを命じた理由は、なにより後装式の方が発射速度も早いし、不発などのアクシデントの時も暴発による怪我のリスクが少ないことにあった。

 だが発射時の砲内腔圧に耐ええる砲身を製造することは、ソントンプ研究所の天才科学者たちにとっても一朝一夕に出来ることではなかったので、それを鋼鉄製の薬莢を使用することで砲が腔圧に耐えれるようにした。


挿絵(By みてみん)



 しかし、いくらソントンプ研究所の変人&天才科学者たちが天才であり、優秀であり、変人であっても、後装式砲や螺旋式施条(ライフリング)や鋼鉄製の薬莢をおいそれと作れるわけがなかった。

 何とかルークの()()()()()()()()()()大砲が完成したのは1年以上もたってからだった。

 それでも、これだけの短期間でテルースの世界で、誰もが夢にも想像しなかった超最先端技術の大砲を作れたのは、ルークの前世での知識のおかげと、やはりトムズークルやアマンジャク師、ユーカワ、それにキンキ、フウキ、スイキたち若手研究家の天才的頭脳のおかげといっていいだろう。


 ルークがソントンプ研究所を訪れ、後装式砲や螺旋式施条(ライフリング)、それに薬莢の概念を変人天才科学者たちに説明した時の彼らの驚きといったらなかった!


「螺旋状に溝を切ることで弾丸に回転をあたえ、弾丸の飛ぶ距離を伸ばすだけでなく、直進性も高めるってスゴイですっ!」

トムズークルは目を輝かせた。

「鉄製の薬莢で弾丸発射の時の砲身後部にかかる腔圧を減少するとは... ルーク王殿は、そのようなスゴイことをいつ考えなされたのですか?」

アマンジャク師は大きく唸りながら言った。

「先端の尖った円錐形の弾丸なんて、だれも考え出せませんよ、ルーク王さま!」

「その方が空気抵抗が少なくなる... なーるほど!理論的にも正しいと思います!」

「弾丸の太さを銃身の口径よりわずかに大きくすることで、螺旋状の溝の効果がより増すのですね!」

キンキたち若手研究家たちが、畏敬の念のこもった目でルークを見た。


 銃の開発は、ルークが単発式の後装式銃ではなく、連発式の銃の開発を要求したため、いまだに開発途上にあるが、これもあと1、2年もしたら完成するだろう。口径の大きい大砲に比べて口径の小さい銃の砲身に螺旋状の溝を斬りこむことは難しいのだ。

それに加えて、腔圧に耐える強度をもつ銃用の小さな鋼鉄製の部品を作るだけの技術をまだ習得出来てなかったのだ。

 そこでルークは連発式銃が完成するまでの過渡的な武器として単発式後装銃の生産を開始したが、これは秘密兵器としてまだどの部隊にも装備させていない。


 ルークは大砲の開発と並行して、徹甲弾の製造と榴弾の製造を命じていた。

徹甲弾は堅固な城塞を破壊するため、そして榴弾は対兵用だ。榴弾の原型は、すでに『春の大攻勢』のおりに、ルークドゥル軍がカタパルトに火薬と小石やガラス片などを詰めた(たる)を使用して、その効果のほどが実証されていた。




  …… ◇ …… ◇ ……◇ ……




 ワチオピア地方は、元は100年ほど昔に栄えたカジューマガル帝国の一部で、そのカジューマガル帝国が分裂して、ダエユーネフ共和国、テアスジム王国、ワチオピア地方に分かれた。

 ルークドゥル勇者王国軍の軍事パレードに先だって、スティルヴィッシュ伯爵はワチオピア地方の三大太守であるガリュベン太守、ナーカダル太守、アバドワル太守と順次会見をした。

そして、その時に金貨5千枚を“友好の印”として各太守に贈呈し、ルークドゥル軍の領土内通行料とした。


「なに?金貨5千枚? それは話が違うのではないか、スティルヴィッシュ伯爵殿?」

見事な宝石が飾られたドゥルバンドで包まれた頭をかしげて、ガリュベン太守が訊いた。

ガリュベン州の首都オリッソにある豪壮な太守の宮殿の豪華な部屋で会見をしていた。

「ああ、そのことについては、ルーク勇者国王殿が直々にお話をされます」

「ルーク勇者国王が?」


 スティルヴィッシュ伯爵がルークドゥル国の外交使節として、友好の印に金貨10万枚を持参して公式訪問するという内容の国書を受け取ったのが2ヵ月ほど前だった。

友好の印に金貨10万枚という、途方もない金を贈呈すると言うのだ。

断るバカはいない。すぐに太守はルークドゥル勇者王国の外交使節団の公式訪問を喜んでお受けするという返書を送って来た。


 それから一か月後、プリシル王妃と外務大臣スティルヴィッシュ伯爵、それに護衛4名と随行員20名の外交使節団一行が首都オリッソに到着した。

 王妃がたった4名の護衛しかつけなかったということに、ガリュベン太守はそれだけルーク王は自分を信用していると考えた。

 だが、実際は随行員の中にはユビィラ、クヴァシル、ヘーニル、ミーミル フロルフ、ラーン、リッグ、ナンナたちルークドゥルの魔術師が侍女のふりをして随行員として来ていた。

なので、万一の場合は即座にプリシル王妃とスティルヴィッシュ伯爵を守れるというわけだ。

 まあ、プリシルはイヴィジブルスキルをもっているで、万一の場合に危なくなるのはスティルヴィッシュ伯爵だけかも知れないが― ということで、アマンダの考えた多くの護衛をつけないで太守を安心させるという策は成功したと言えよう。



  オリッソ宮殿の迎賓室

挿絵(By みてみん)



豪華な迎賓室のドアを開けて入って来たのは、男装の無双王妃アマンダ、続いてルーク王、アンジェリーヌ、ジョスリーヌ、そしてアイフィだった。


「き、貴公はっ?!」

ルークの服装が立派で頭に王冠をかぶり、王杓をもち、マントを羽織っているのを見て太守が訊く。


「アウロング・ワンゼーブ・ガリュベン太守殿。初めまして、ルーク・シルバーロードです」

「ルーク・シルバーロード王??? ええっ! いつ、どうやって...?」

もとより、ドコデモボードでルークタラス城からガリュベン太守の宮殿の中に移動して来て、“信頼”スキルを使って、宮殿の護衛兵たちや使用人たちに警戒心を抱かせることなく会見の部屋まで来たのだ。


挿絵(By みてみん)



「単刀直入に言いましょう、ガリュベン太守殿。ルーボードタン連邦に加わっていただきたい!」

「るーぼーどたん連邦?」

それから30分ほどかけてルークはルーボードタン連邦の構想を話した。

「どうです。()()()()()ルーボードタン連邦に加盟しませせんか?」

「わかりました。()()()()()()()()()()()()殿()()()()()、ガリュベン州はルーボードタン連邦に加盟いたします!」

太守も、その会見の場にいたガリュベン州の政府要人たちも、ルーク王の言葉を信用した。

「それでは、貴州がルーボードタン連邦に加盟したことに対する“お礼の印”として金貨5千枚をお受け取りください」

「有難く頂戴いたします!」



 こうして、金貨10万枚を払うことなく、わずか5万枚でガリュベン州をルーボードタン連邦の加盟国とすることに成功した。

 同じことをナーカダル太守とアバドワル太守に行い、軍事パレードでルークドゥル勇者王国の軍事力と魔術師部隊の威力を見せつけた後で、わずか金貨5千枚ずつでナーカダル州、ついでアバドワル州もルーボードタン連邦に組み入れることに成功した。

 金貨30万枚は、前世でルークが住んでいた国の貨幣に換算すると300億円という途方もない金額なので、それを3太守合わせてわずか1万5千枚(約15億円相当)の支払いだけで、これら3州を勢力圏下に入れることが出来たのだから安い買い物になったと言えよう。




  …… ◇ …… ◇ ……◇ ……




 シレンシィユー大洋の波を蹴立てて大船団が進んでいた。


後部甲板(クォーターバック)に立って、左の水平線に見える陸地を見ていた大柄な牛族の貴族がいた。

大柄な牛族の貴族は、視線を前方にもどしてからつぶやいた。


「波は穏やか。風は順風... まるでルークドゥル勇者王国のようだな...」


元ブレストピア国の厩役であったゾロワリン伯爵だ。

ゾロワリン伯爵はルークドゥル勇者王国第二軍の司令官として、6万の大軍を率いてダエユーネフ国東部海岸を目指してルークドゥル国東北部のグラズ湾から大船団を率いて出航した。 


「ゾロワリン司令官、エルゼレン伯爵からマデンキ(魔法式遠隔伝達器)連絡です」

通信係のそばにいた将校がゾロワリン伯爵に知らせる。

「おう、わかった!」


マデンキ(魔法式遠隔伝達器)はルークドゥル軍の常備通信機となっており、画面サイズはようやく50センチほどに小さく出来たが、いまだ大量生産できる段階にないので、師団規模に1台と少ないが、今や作戦行動に欠かせない重要なものとなっていた。


「ゾロワリン司令官、ギャストン軍務大臣からの連絡では、ワチオピア地方はルーク王殿のおかげでルーボードタン連邦に加盟したそうですね」

「さすがルーク王殿だ。あの才覚は常人では真似が出来ん!」

「プリシル王妃さまとスティルヴィッシュ伯爵も、たいへん上手に交渉されましたね」

「スティルヴィッシュ伯爵の外交手腕は大したものだ。プリシル王妃さまは、あの美貌で太守たちを魅了させたのであろう!」

「違いありませんね。ふふふ...」


その時、マデンキ(魔法式遠隔伝達器)の画面が三つに分かれ、ハンノンベリ辺境伯と エンギン辺境伯の顔が映った。


「ゾロワリン司令官、もうエルゼレン伯爵とお話中でしたか?」

「司令官っ、おっ、エルゼレン伯爵殿とハンノンベリ辺境伯殿と同時通信中でしたか?」

エンギン辺境伯とハンノンベリ辺境伯が、ほぼ同時に話す。

「いやいや、エルゼレン伯爵殿が最初に通信して来たのだが、ハンノンベリ辺境伯殿はエンギン辺境伯殿とほぼ同時に、今、通信をはじめたばかりだ」


 4人は同時通信でルークタラス城の司令部からギャストン軍務大臣が連絡して来たワチオピア地方がルーボードタン連邦に加盟した件について話しはじめた。

 エルゼレン伯爵、エンギン辺境伯、それにハンノンベリ辺境伯は、ゾロワリン司令官同様、元ブレストピア国の貴族だった。


 今回の海路によるダエユーネフ国侵攻軍をアマンダは敢えて元ブレストピア国の将兵たちだけからなる軍にまかせることにした。その方が連携をとりやすいと考えたのだ。

 彼らは、元ブレストピア国のゲネンドル王一族に対するルーク王の扱いを知って感服していた。

すでにルークの“信頼”スキルでルーク王に絶対忠臣を誓ってはいたが、元王一家に対するルークの温情は元ブレストピア国の貴族である彼らのルーク王に対する信頼をさらに強めた。


 ゾロワリン伯爵の指揮するルークドゥル勇者王国第二軍の兵力は、エンギン辺境伯軍7万、ハンノンベリ辺境伯軍5万、そしてエルゼレン伯爵軍4万の計16万という大軍だ。


シレンシィユー大洋の波を蹴立てて大船団は進みゆく。


次回は12月22日の予定です。

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